闇の魔術師と雷の剣士 -11-01-
ここからしばらく淡々と同じような展開になりますので
興味ない人は12章あたりまで飛ばしてください。
『さあ、始まりました春興祭のメインイベントでもある隊長たちによる1VS1!実況は組合放送部門のスズネがお送りします』
『勝手に新しい部門を増設しないでね?アピールしても予算は下りないから』
『あ、解説はハルトさんです。皆さん一応拍手』
『人の話聞く気あるの?』
『それでは本日のスケジュールですが、1回戦の第1試合~第3試合までを午前に残りを午後に行います』
『えらくざっくりしたスケジュールだね』
『文句はシェリーさんに言ってください。私は知りません。ではハルトさん第1試合の情報をお願いします』
『えーと……4番隊副隊長タロウと2番隊副隊長カケルだね。タロウの方は魔法と武器を両用する戦い方になるけど、カケルの方は武器一辺倒だね』
『1回戦にふさわしくない地味な絵面ですね』
うるせーよ!という声が双方の選手席の方から飛ぶ。
『それではただいま閉め切りました“賭け”の倍率を発表します。1-1タロウ1.58倍、1-1カケル2.70倍です』
『勝者予想ではかなりタロウが優勢だね』
『それではハルトさんがサイコロでフィールドを決定します』
モニターにハルトの手元が映し出され、容器の中で白と黒の賽子が回る。
『フィールド1-5“古城”展開します!』
魔法陣が広がり、闘技場の中央に中世ヨーロッパを思わせる城が建ちあがった。
『フィールド内からは観客席を見ることはできません。またプレイヤーが建造物の内部に入った場合でもカメラが追いかけますのでモニターでご覧に慣れます。それでは選手は位置についてくださーい』
『ちなみに結界内は空間が圧縮されてるので見た目よりかなり広いからね』
『では試合開始でーす』
古城を挟むように配置された2人はスタートと同時に動く。
タロウは扉を破り、城の内部へ。カケルは屋根の上に上がる。
『二人ともドアの使い方知ってる?』
『あ、カケルさん何かするようですが』
カケルは腰に下げた剣を抜き、屋根を突き破る。
「うおっ!?」
「やっと見つけたタロー!」
「……まさか上から来るとはなぁ」
タロウに向かい剣を振るうカケルだが、
「剣を振るうにはこの廊下は狭いよな」
「だから中に入ったのか!」
「というかオレが先に入って何もしてないと思ったか?」
「何!?」
廊下の壁や床一面に闇魔法の魔法陣が展開される。
「多重起動なんてどうやって!?」
「キクロに頼んで作ってもらったんだ、魔法陣シール」
「マジっすか……」
「食らえ!シャドウスパイク×50」
影の槍がカケルへと一斉に襲い掛かる。
『これはかなりダメージでかいですねー』
『いやそうでもないみたいだけど?』
『え?』
「いたたた……」
カケルの体力を示すHPバーは3割ほど削れている。
「やっぱりこの程度じゃ無理か……」
「……剣を振るえる空間がないなら作ればいいんだ」
「……マジか」
タロウの魔法でボロボロになった廊下。これなら簡単に破壊できるだろう。
カケルは左手に魔法陣を出現させる。
「サンダーボルト……」
雷魔法の魔法陣をそのまま剣へと移す。
「ちっ……魔法剣か」
タロウは距離を取るためカケルとは逆方向の廊下へと走る。
「魔法剣Ⅲ……mode:Lightning!」
雷を纏った横薙ぎの一閃は周囲の壁を破壊しながらタロウを追う。
「さすが雷系統……速いっ」
『直撃ですかね?』
『いや』
カケルの放った雷の一閃はタロウへの直撃の直前に闇に呑まれた。
「は?」
「これこそ闇系統最強の呪文冥府の門!」
空間を裂いたような闇へと周囲が崩れ、朽ち、吸い込まれていく。
「ちょっ……それは反則だろ!」
吸い込まれないように柱の残骸に掴まるカケル。
「あ、その辺にもう一つ魔法陣しかけてあるぞ」
氷の魔法陣が発動し、カケルの体を凍てつかせていく。
「お前……これ……」
「誰が闇しか使えないって言ったよ」
完全に凍りついたカケルは闇へと呑まれていく。
『えっと……この場合は……』
『冥府の門は即死技みたいなもんだからタロウの勝ちで』
『え、じゃあ、試合終了!!第1試合の勝者は4番隊副隊長タロウ!』




