掴めない男 -10-11-
港に行くと既に船は到着し、船から人がおり始めていた。結構人混みがすごく近寄れない。
前の方では5、6番隊が道を開いている。
『アンリさん』
『どうしたの?カナデちゃん。今ちょっと余裕ないんだけど』
『いえ、入ってもいいかだけの確認がとりたいんですけど』
『シズネに会いに行くのね。もちろんいいよ』
これで問題なし。ちょうど姉が下りてきたところなのでそこへ転移する。
視界内の場所にも行けるらしいが、目算を誤ったら面倒なことになるのであまり使っていなかったのだが、慣れれば便利かもしれない。ちょっと練習しておこう。
「姉さん」
「あ、カナデ!元気だった?」
「いやこっちのセリフなんだけど……とにかく無事でよかった」
「そんな大げさな……オトハは?」
「さっき本部の辺で忙しそうにしてるの見たけど」
「これだけ規制されてるのにどうやって入ったの?」
「普通に転移してきたけど」
「そうだった……」
姉妹で語らっていると後ろから声がかかった。
「カナデさん闘技場の方は?」
今朝よりさらにやつれたハルトだった。ホントに大丈夫だろうかこの人。
「結界が弱かったのでキクロさんが今直してます」
「ああ、さっきの爆音はそれか」
「ハルトさんマジで死にますよ?ポーションでも飲みますか?」
ブラックポーションを手渡す。
「これは飲めるの?」
「おいしいですよ」
意を決して一気に瓶を開けるハルト。
「ホントだおいしかった。桃?」
「ティーモルの森になってるカリゴの実です。体調はどうですか?」
「なんかかなり良くなったかもしれない」
意外にも効いたようだ。
「おい、ハルト。首相が待ってるぞ……ってカナデか久しぶりだな」
「一週間もたってないよエイダイ」
「なんか現代生活から離れすぎて軽くボケてるわ、今」
「すぐ仕事だけどね。この後門の横にある詰所に行ってね」
「マジかよ」
エイダイとハルトが去って行った。
「じゃあ私も首相の警護があるから」
「首相ってどんな人?」
「よくわからない人。普通なら使節からすぐにその国へ行こうなんて思う?何考えてるか全くわからない……」
「……頑張ってね。わたしもステラの警護に戻るね」
『シオン。今どこにいる?』
『カナデさん。お仕事終わったんですか?今ちょうど寮に戻ったところです』
『わかったすぐ合流するから』
港からだと大した距離でもないのですぐに合流する。
寮の中に入る前に合流できてよかった。
「カナデか。どうかしたのか?」
「いや、ちょっとこの場で渡しとかないといけないものがあって」
エルバートさんがいるこのときに。
「試合のチケットなんだけど当日来賓用の指定席になってるからこのチケット持ってて」
「ヴェラとヘルガの分もいいのか?」
「お客さんには変わりないですから」
ステラに四枚のチケットを手渡す。
「全試合それで見れるからなくさないようにお願いしますね」
「わかった」
4人を挟むようにして座る2人・アスカとイーリスにチケットを渡し、先に部屋に向かわせる。
残りの8人を集め全員にチケットを渡していく。
「え!?いいんですか!?」
ミサキが困惑している。
「ステラの後ろの席だから警護もかねてだけど。前から2番目だから楽しめると思うよ」
「そんないい席どうやって……」
「シェリーに頼んだの」
「で、代金は2000Gでしたか?」
ツバサが律儀に払おうとする。
「いいって別に。それよりチケット4枚余ってるんだけど誰か欲しい?」
「欲しいです!」
モエが挙手する。友達でも誘うんだろうか。
「じゃああげる。私もシオンも選手席だから」
「応援してますカナデさん!」「頑張ってください!」
「ありがと、カイト、リゼット。でもオトハと姉さんには勝てる気しないんだよね」
「初戦からいきなりアンリさんでしたしね」
「そういえばそうだった……どこまで行けるかなぁ……」




