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星神様  作者: 空花
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序幕 「双子の神様」

これは地元の賞に投稿しようと思って書いたものですが、色々あって落選決定なのは明白なので載せちゃいました!

この話はある神様と女の子の話です。


昔々、太東山と太西山に双子の神様が住んでいました。


 太東山には兄が住み、太西山には弟が住んでおり、兄神様は空色の髪と瞳を持ち、弟神様は橙色の髪と瞳を持っていました。それはとてもとても美しい青年でした。


 二人の神様は二つの山の間にある星洋村に住む人々を守ってくれる守り神でした。星を詠む力で未来を予言し、危機が迫れば村人たちに教えてくれては助けてくれました。


 ある日、弟神様の住む太西山に余所者がやってきました。余所者達は山をいくつもいくつも超えた先にある国の迫害から逃れるためにここまで逃げてきたといいます。


 弟神様は言いました。

「嗚呼、可哀想に。我らの村に迎え入れて差し上げましょう」


 余所者の娘は言いました。

「嗚呼、山神様。あなたに感謝いたします。このお礼は、いつか必ず」


 その時、娘は顔に巻いていた布を外して顔を見せました。それはとてもとても美しい娘でした。一目見た瞬間、弟神様は恋に落ちました。


 弟神様は、兄神様に相談しました。

「嗚呼、何なのだろう。この胸が焼けるような気持ちは。兄上、我は病気なのだろうか?」


 兄神様は言いました。

「嗚呼、弟よ。それは恋というものだ。お前はその娘に恋をしたのだ」


 恋。恋をしてから、自分が自由に動ける日没から夜明けまでの間は常に娘を見ていました。

 自由に動ける間はもう暗いので、娘は常に家にいる。だが、家族とともに笑っている姿を見ていると、弟神様は自らもうれしくなりました。


 ある日の夕方、弟神様の祠に娘がやってきた。

「嗚呼、山神様。いつぞやのお礼を申しに参りました。私は空姫と申します」


 弟神様は言いました。

「嗚呼、空姫。我は山神ではない。ただこの山に住む星を司る神だ。お礼など言う必要はない。ただ、我の願いを訊いてはくれないだろうか」


 弟神様の願いは一つ、恋人になってはくれないだろうかという願いでした。


 空姫は言いました。

「嗚呼、星神様。私は貴方を一目見たときから、恋に落ちてしまいました。その申し出、ありがたく頂戴しようと思います」


 こうして、弟神様の恋は実りました。弟の恋の成就を、兄神様は快く祝福しました。ですが、空姫の両親には伝えませんでした。八百万の神と人間の恋、周りが認めるはずがありません。弟神様も夕方からでないと祠から外に出ることはできません。そこで、兄神様は言いました。


「嗚呼、悲しきかな。弟よ、我の朝の力を少しばかり分け与えよう。そうすれば午の刻から未の刻までの二時間、お前は外に出られる。だが、山の間にある谷に行ってはならぬぞ。そこには力を狙う物の怪がいるからな」


 弟神様は約束を守ると誓いました。そして午の刻からの二時間、大切に大切に空姫との時間を過ごしました。


 ある日、空姫は父に尋ねられました。

「空姫、いつもいつもお前は何をしに太西山へ行くのだ?」


「何でもありませんわ、父上。ただ山の動物たちと戯れているだけですわ」

 空姫は答えました。


「星神という名の獣とであろう?」


 なんと、空姫の父はすべてを知っていました。毎日山へ何をしに行くのかついて行ってみれば、なんとあの時の男神と戯れている姿を見てしまったのでした。


「あの者は神などではない。お前を誑かす物の怪だ。早急に滅さねばなるまい」


 空姫の父は陰陽師。なんと、弟神様を殺そうと考えているのでした。


「父上、それはなりませぬ。私はあの方と強く愛し合っています」


「そんなことは関係ない。お前は奴を滅すまで外に出てはならぬぞ」


 そして夜、空姫は家を抜け出して星神様のもとへ会いに行きました。


「嗚呼、空姫どうしたのだ。もう日はとっくに沈んでいる。帰らねば親が心配するぞ。」


「嗚呼、星神様。急いで逃げてください。貴方との関係がばれてしまいました。父が貴方を殺しに参ります。私は貴方が殺されるのも、別れるのもいやです!!」


大粒の涙を流しながら空姫は弟神様の胸の中でそう訴えました。


「それならば、あなたと駆け落ちしよう。まず兄上に助けを求めるのだ。谷へ向かおう」


 弟神様は空姫を抱いて走り出しました。走る、走る、走って走り続け、谷までつくことができました。


「この谷を越えれば、太東山までもうすぐです。急ぎましょう」


「待て、そこの物の怪め。わが娘を離すのだ!」


 なんと空姫の父に先回りされていました。刀を抜き、こちらに走ってきました。


「ぬがっ! 我が右目を抉るとは……」


「思い知ったか物の怪が!」


 弟神様は父君に左目を斬られ、父君の手には、橙色の眼が握られていました。その様子を見て、空姫は泣き出してしまいました。そんな姫の様子にかまわず、父君は刀を弟神様の腹に突き刺し、谷底へと落してしまいました。


「いくらなんでも、ここから落ちてしまえば死ぬであろう。姫のために別の地へ身を移さねば」


 その時、谷底から巨大な鬼が出てきました。


「むむ、物の怪め。本性を現しおったな」


刀で切りかかろうとした父君はがしりと巨大な手に掴まれ、


「あなや」


 そのまま鬼に飲み込まれてしまいました。


 空姫はその光景を見て恐ろしくなり、声を上げることも、逃げることもできませんでした。このまま自分も喰べられてしまうのかと頭の中でぐるぐると廻っていました。


だけど鬼は空姫を巨大な紅い目で睨むばかりで何もしてきません。その時、鬼の紅い目が弟神様と同じ橙色に変わりました。


「嗚呼、空姫。我は兄上との約束を破ってしまった。来てはならぬと言われた谷へ落ち、わが体は邪鬼に乗っ取られてしまった。空姫よ、急いでこの山から逃げるのだ。我が貴女を殺してしまう前に」


「嗚呼、星神様。私にとって鬼であろうと貴方は星神様に違いありません。それならば私はここで命を貴方に差し上げましょう」


 その時、騒ぎを聞きつけた兄神様が何事かと思い、谷へやってきました。


「嗚呼、弟よ。だから来てはならぬといったのに。なぜ言いつけを守らなかったのだ」


 そう兄神様が訊いた瞬間、鬼はこの世のものとは思えぬ声で叫び声をあげました。


「嗚呼、哀れな空姫。我が山の外へと案内します。あれはもう弟ではない。危険な邪神だ」


「嗚呼、兄神様。私はあの方と離れたくないのです。父が亡くなった今私にはあの方しかいないのです」


「嗚呼、空姫。だからこそ逃げるのだ。弟は貴女が死ぬことを望んではいないのだ。我が足止めをしている間に山をまっすぐ突っ切ってお逃げなさい」


 空姫は動かない足を無理やり動かし走り出しました。振り返らず、無我夢中で走り続けました。そして兄神様は山に入って見えなくなったのを見届けると、己の刀を抜き、鬼へと変わった弟に斬りかかっていきました。




 その後、兄神様がどうなったかは、誰にもわかりません。


 空姫が逃げた後、鬼が村に襲い掛かってくるので、きっと殺されてしまったのでしょう。


 鬼は村人を喰い、畑を荒らし、村人達は困り果てました。ですが、鬼は満足したのか、谷の底に帰っていきました。


鬼は村人達に様々な予言をしました。予言は次々と当り、村人達は谷に祠を建て、「鬼神様」をそこに祀りました。


しかし鬼神様は災いを予言するたびに等価交換を求めてきます。


 それは鬼神様が望んだものを献上すれば村は平和でした。


 今この村は鬼神様のおかげで暮らしていけるのです。


 




最後に一つ、空姫がどうなったかのか……これも誰にもわかりません。






もしかしたら、






いつか――
























この作品はほとんど出来上がっているので週1で続きを載せられると思います。うまく書けたかはわかりませんが楽しんでいただけたら幸いです。

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