エピローグ
雪月12日
今日は、私が日記を書き始めてからちょうど2月目です。
そして、この日記を記す最後の日です。
なぜなら――――最後のページになってしまったから。
この日記帳は置いていくことにします。
次に見るのは何年後になるか分からないけれど。
もしかしたら、もう見ることもないかもしれないけれど。
もしかしたら、私以外の誰かが見るかもしれない。
だから、そのときの私か、あなたへ――――。
「ふう」
私は羽ペンを置いて、息をつきます。
目の前には、薄っぺらい日記帳。
薄っぺらではあるけれど、確かに私が歩んできた日々の記録。
私はインクが乾くのを待ってから、本を閉じ、本棚に並べる。
何の変哲もない普通の背表紙は、詩集戯曲などのうるさどころの本の中では明らかに浮いています。
「姫様ー。行きますよー」
窓の外、門の手前では、もう先生が準備を終えて待っていました。
昨日も思いましたが、その準備の素早さときたら、明らかにはしゃいでる子供のようです。
だから、私より楽しみにしてるんじゃないかな? とか思ってしまうのです。
私は昨日準備していた鞄を持ち、外で待っている先生の方へ、魔法で飛んでいくことにしました。
「遅いですよ姫。淑女たるもの、紳士を待たせてはいけません!」
無事着地できた私に飛んできたのは、お迎えの言葉でもなく、先生のおしかりの言葉でした。
「まあまあ、先生。そんなに怒らなくても」
「そ、そうでしたね。そこまで怒るほどのものでもありませんでしたね」
王子様になだめられて落ち着きを取り戻したようです。
「それじゃ、全員そろったところで――――開門!」
兄さんの号令で、城門が開かれていきます。
ゆっくりと、ゆっくりと。
私はふと、自分が小さいころ、お父さんにぶつけた疑問を思い出しました。
――――お城の外には何があるの?――――
ルミエールの日記帳はこれで完結となります。
半年ちょっとの間でしたが、ご愛読していただいた方には感謝の気持ちでいっぱいです。
どうもありがとうございました!
また別の作品でお会いできることを楽しみにしております。