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霜月11日
その人、見た目は町にいる普通の男の子と変わらなかったけど、ホントに私にしか見えてなかったみたい。
話を聞いたら、なんでも「悪魔に騙されて、誰にも気づかれない悲しい運命を背負うことに……」だって。
ずっと何も食べないでおなかはすかなかったのか聞いてみたら「このお城の周辺までしか居られないんだ」って言うんです。
まったく関係ありません。
もう一度聞いてみたら「お腹もすかず、未来永劫、城とその周辺をさまようことに……」だって。
まるでユーレイです。見たこと無いけど、ユーレイ。
悪魔を懲らしめればいいんじゃないか、って提案してみたけど、悪魔はこのお城から遠く離れた場所にいるんだって。
お城から出られない私じゃどうしようもありません。
最後に名前を聞いてからお別れにしようとしたんですけど、ビックリ。
その人、王子様だったんです。
同じ名前の人じゃなくって、本人でした。
きっと今は国中大騒ぎのはずです。
兄さんたち、無事かなあ。