表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Fate Mechanical  作者: 有裏 杉
第一章
2/3

追憶

 眩しい。

 扉が開くと、知らない男の人が僕を抱きしめてきた。

 涙を流しながら喋りかけてくる。

 どうしたのだろう。

 どこか痛いのだろうか。

 この人は、なぜ僕を知っているのだろうか。

 そもそも・・。


「・・・あなたは、誰?」


 そんな言葉が口からこぼれる。

 その時の男の人の表情を忘れる事はなかった。

 とても笑顔で溢れていた顔が、たちまち無に変わったのだから。

 ・・なぜだろう。

 その表情を見て、何かが痛かった。

 身体のどこかに不調があったのだろうか。

 僕の身体は、おかしいのだろうか。

 原因が分からない、身体を調べないといけない。

 僕の・・。

 また、疑問が浮かぶ。

 僕は、誰?

 ・・分からない。

 思い出そうとしても何かが邪魔をする。

 痛い。

 頭痛。

 少し、眠い。

 視界がぼんやりする。

 男の人が喋りかけてくるが耐えきれない。

 しばらくして、ゆっくりと瞼を閉じてしまった。


 ・・・。

 ワン・・・。

 なさい、ワン・・・。


 声が聞こえる。

 僕を呼ぶ声。

 この声は・・お父さん?


「起きなさい、ワン。」

「・・おはようございます、お父さん。」


 目が覚めた。

 夢を見ていた様だ。

 傍にお父さんがいた。


「おはよう、ワン。いつもより少し長く寝ていたな。」

「ごめんなさい、夢を見ていました。」

「夢か・・アンドロイドは本来であれば夢など見ないはずだが。」

「本当です。お父さんと初めて会った時の光景を見ていました。」

「そうか・・あれから一年経つのか。」


 一瞬ではあったが、お父さんは悲しい顔をしていた。


「・・ワン、今日は大事な日だ。準備をして研究室に来なさい。」

命令(オーダー)。分かりました。」


 そう言うと、お父さんは部屋から出て行った。

 今日は大事な日。

 僕、ワンが生まれた日であり、この身体の持ち主である佐久間霧人(きりひと)の記憶を蘇らせる始まりの日。

 僕は、アンドロイドでありながら人間(霧人)の身体を保っている。 

 正しく言うと、身体の半分が機械で、もう半分は人間としての肉体。

 人類の世界では、アンドロイドは当然の様に存在しているが、僕という存在はイレギュラーである。

 仕事、日常生活、様々な場面でアンドロイドは人間を助けている。

 そんなアンドロイドを開発した天才科学者が、お父さんである佐久間(とおる)だ。

 そして、お父さんの実の息子である佐久間霧人。

 彼は、交通事故で亡くなっている。

 過去のデータから、身体構造の半分を損傷する事故であった様だ。

 その身体をお父さんが機械と魔術を使用して蘇らせた結果、生まれたのが僕だ。

 霧人としての記憶が欠落していた何者でもない僕。


「お前の名前は、ワン。霧人とは違う、私のもう一人の息子だ。」

「・・僕の名前は、ワン・・息子。」

「そうだ。これから、人としての生き方を教えていく。手伝いもしてもらうぞ。いいな?」

「命令。はい、お父さん。」


 その言葉を受けてから、僕はあの人をお父さんと呼ぶ事にした。

 それから一年の間に、様々な命令を受けてきた。

 家事、勉強、その他にも色々。

 命令がないとアンドロイドは行動できない。

 お父さんの簡単な命令も無ければ動けない機械だ。

 故に、先程の発言も命令。

 準備をして研究室に向かう。

 命令に従い、お父さんが用意してくれた服装に着替える。

 肌触りが良く動きやすい。

 顔を洗い、目を覚まして研究室に向かう。


「ワン、到着しました。」


 研究室には、以前と変わらず巨大な蘇生装置が佇んでいた。

 変わった事と言えば、装置の側には大きな()()()が書かれていた。

 装置は、お父さんが長い年月をかけて開発したと言う。

 魔術師、科学者としても天才と呼ばれた者の集大成。

 だが、これだけでは足りない様で、特別な術式が込められた魔法陣を描いた様だ。


「来たか、ワン。」

「お父さん、遂に始まるんですね。」

「ああ・・霧人を蘇らせるために必要な準備が全て整った。」

「おめでとうございます、お父さん。」

「まだ祝うのは早い。本当に祝う時は、その身体に根源から記憶が戻ってきた時だ。」

「きっと、上手くいきます。この蘇生装置は、天才であるお父さんが作ったのですから。」


 お父さんの表情は、いつもより明るく見える。

 無表情で冷たい感情が、今日は期待と興奮で柔らかくなっている。


「早速始めますか?」

「・・・。」

「お父さん?」


 こちらを見つめて沈黙している。

 こういう事は、たまにあったが未だに何を考えているのか分からない。


「ワン・・お前は・・。いや、何でもない。」


 何かを言いたげそうではあったが止めた様だ。


「・・始めよう。装置に入ってくれ。」

「命令。分かりました。」


 装置の扉を開ける。

 僕が生まれた時と同じ状態のままだ。

 ゆっくりと中に入る。

 ひんやりとした冷たさが足元から身体全体に伝わる。


「ワン。これから、お前は眠りにつき霧人の記憶を取り戻す事になる。」


(・・はい、お父さん。)


「お前の記憶は霧人の記憶に塗り替わる・・怖いか?」


 怖い?

 分からない。

 否定をするために首を横に振る。


「そうか・・では、別れの時だ。」


(ああ、もうそんな時間なのか。)


「・・さらばだ、息子よ。」


(待って、お父さん。)


 徹は、装置起動のボタンを押す。

 ワンの意識は遠のいていった。

お読みいただき、ありがとうございました!

果たして記憶は蘇るのか・・?

面白いと思ったら評価・ブックマーク・コメントで応援いただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ