7/1Side:彦星
「なあ……なあ、牽牛。そろそろ、準備をしなくても良いのか?」
「準備って、何のことだ?」
「だってあれだろ。お前、そろそろあの時期だろ……?」
「あの時期って……ああ、七夕のことか。確かにもう、そんな時期だな……」
「ああ……って、どうしたんだよ! 昔はあんなにも、楽しみにしていただろう! ここ数十年のお前は、変だぞ!?」
「と、言われてもなあ……だって考えても見ろよ。確かに俺は織女を愛してる。だけど一年に一度だけ、たった数時間だけ会えるって言われても、ただそれだけだろう? どれだけ待ち焦がれても、手を取り合うことすら叶わない。日が昇ったら、また別れを告げなければならない。苦しい別れが決まっているのなら、最初から合わない方がと、何度考えたことか!」
「それは……確かにそうかもしれないが。だが、だったらむしろ、なんで毎年律儀に会うことにしているんだ?」
「だって……俺がその場に現れないと、あいつは苦しんで悲しんで傷ついてしまう。逆の立場を想像したら、それだけで胸が締め付けられる。待てども待てども現れない。ついに俺は見限られたのかと。そんなことになれば、俺は……俺はどうすれば良いんだ……毎年この時期になると、それが恐ろしくて……だけどどこかで、俺はその終わりを望んでいるのかもしれない。いっそ織女が俺を見捨ててくれたのならば、俺は自由になれるのかもしれないな」
「そんな悲しいことを言うなよ」
「冗談だ。でも、そうか……もうそんな時期か。あいつは、元気にしているかな。元気にしていると良いな……」
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