表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

1000回目の転生が成り代わりだった件

キキーッ!ドンッ!…。

あぁ、また私は転生する羽目になるのか。

遠のく意識の中で、私に涙目で呼びかける今の夫に愛してると告げて、目を閉じた。

通算999回目のあっけない人生の幕引きだ。


初めまして、私は田中輪廻。

輪廻と書いて、りんねという名前。

何故過去形かというと、私はたった今さっき死んでしまったから。

今回はなかなか幸せな人生だったんですけどもね。冷静に割り切らないとやっていけない。

はい、私は転生を繰り返しているので酸いも甘いも噛み分けている。いい加減天国なり地獄なりに永久就職したいものだわ。

そうこう言っているうちに、生まれ変わったようです‥。

「ん‥?」

目を開けた瞬間に私をのぞき込んでいた老人が飛び上がり、部屋を出て叫んで走って行ってしまった。

「陛下!陛下ー!ロザリンド様がぁぁぁ!」

うわ、うるさいなぁまだ聞こえてくるよ。え、あの人って喉にメガホンでも入ってんの?鼓膜破けそうだわ。

そう呟きながら、私はゆっくりと体を起こした。

そして気づいた。

自らの胸のデカさに、重たい。

あー、これあれだわ。かなり前にもあったぞーこれはホントにやだな。あれでしょ?魂が入れ替わるとかいうあれ。

そうそう!成り代わり!

よりにもよって、記念すべき?1000回目が厄介な転生だよちくしょう。

そしてすぐさまふっかふかのベッドから起きて視界に入った、めちゃめちゃ高そうなアクセサリーが並ぶドレッサーの前に立つ。

典型的な日本人顔ではなくて、雪のように白い肌。深い若葉色の眼、そして小麦畑かのような、金色の髪。そして控えめな角。

転生オプションは魔物属性かなぁ。

え?なんで冷静か?ハッハッハ…慣れだよ。

やっぱり魔法とか使えるかな?と、試しに水が欲しいと念じると、立派な器が現れた。中には水が注がれている。

「あぁ、空間から出せるならたくさん魔力がありそうね…」

「な、何している!?寝てないとだめだろう!」

「ほえ?」

勢い良くドアが開いたかと思うと、めちゃめちゃカッコいいイケメンが入ってきた。

角凄いな。あ、この人ここの屋敷?の持ち主?かな。

「ご、ごめんなさ…」

イケメンに謝ろうとしたらドバドバーっと記憶が流れてきた。

その内容の濃さにキャパオーバーした私は、倒れ込んだ。


次に起きたとき、べっそべそに泣きはらした先ほどのイケメンが私の片手を握っていた。いてててて力強いな。

私が成り代わったのは、没落令嬢のロザリンド・フューネ。なんとあのカッコいいイケメンは魔王様らしく、彼に見初められてやって来たこの屋敷にて、彼の元婚約者に陥れられて一時は冷遇されたもののことが露見。

結果として一族郎党は女性も子供も含めて血縁があれば皆処刑。そして晴れてロザリンドが王妃となると決まったものの、彼女は人を信じられなくなるほど絶望し気を病んでいたため、死の呪いを自分に掛けて死んだ。…が私が成り代わったわけね。昔読んだ悪役令嬢ものみたいね。ハッピーエンドにはならなかったみたいだけど。

にしてもこいつめちゃめちゃ泣くじゃないの。5歳児か。

「ロ、ロザリ〜よがっだぁ。」

は?ハチャメチャにイケボじゃないの。

「へ、陛下」

ほらあのメガホンお祖父さん引いてるから泣きやんで。

「ロザリー、良かった!すまなかった!あのジャニス家の者達を信じてしまったばかりに…」

誰なのジャニス家って。

あぁ、ロザリンドをいじめてた元婚約者の家ね。

「良いんですよ」

夫とは真逆のタイプだなこのイケメン。なんていうか…残念。

「ロザリンド様!」

部屋に飛び込んできたのは…。

「あなた…??!」 

夫だった…いえ語弊か。輪廻だったときの夫。

「僕は貴方の護衛のジャックですよ」

「そ、そうよね気が動転してたわ」

ロザリンドが唯一心を許していた幼なじみでもあるジャックよね。にしても顔が似てるし、声も似てる。

「ジャック、下がれ」

いかにも不機嫌ですという顔のイケメンは私がジャックと会話するのが面白くないらしい。

「はい、陛下…」

ジャック、睨んでるわよねそれ。

イケメンから見えないようにしてるみたいだけど、こちらから見たらばっちり敵意見えるわよ???

ジャックが出た後、イケメンは私をまじまじと見つつ言った。

「我の名を覚えているか?」

…いいえと即答してもいいだろうか。

何故かロザリンドさん、イケメンの名前をすっかり忘れて死んだようだ。記憶を掻き分けても掻き分けても、それらしき名前が出てこない。ちなみに、メガホンお祖父さんはファルフォーンという名前らしい。

長い沈黙の後、私は首を横に振った。

途端にまたイケメンが泣き出した。

「やはり忘れたのか…?」

忘れたのかっていわれましても…。

「申し訳ありま「オーレイジャスだ。我はオーレイジャス」…オーレイジャス?」

「そうだ」

ムスッとしたまま私に食い気味に言うと部屋を出ていった。ファルフォーンさんも一緒に出て行ってしまった。

え?放置なの???

はぁぁぁぁ???

…まぁいいか。



彼女が息を吹き返してくれた

今度こそ

今度は離してなるものか

彼女だけを愛し通してみせる

永遠にな

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ