小学一年生-7
次の日、放課後の将棋クラブ見学への期待に、朝からそわそわしつつ、自分の席でいつも通り本を読んでいたところ、珍しいことにクラスの女子に話しかけられた。
「岩瀧さん、おはよう」
「……おはようございます」
話しかけられて、驚きつつも挨拶を返したけど、目の前の女子の名前が思い出せない。
勝気な雰囲気の可愛い子で、誕生日も身長も近いから、体育とかで一緒の組になったりしてたけど……。
そりゃぼっちになるよね、と少し落ち込みつつも会話は続いて、
「何の本を読んでいるの?」
「動物の本だよ。世界の珍獣とか載っていて面白いよ」
気が付いたら、長々と本の内容と、レッサーパンダがお勧めという事を熱く語ってしまった……。
話し終えたところで我に返り、絶対引かれたと落ち込んだところ、「岩瀧さんは面白いね」との反応だったので驚いた。
そして、目の前の女子は「気を悪くしたらごめんね」と言いつつ、
「岩瀧さんはいつも真面目な顔してるし、全然喋らないから、今のは驚いたよ」
「私、そんなだった?」
ううむ、この無表情顔が悪いのだろうか、と頬を引っ張っていると、
「それに、いつも本を読んでいるから、話しかけ辛かったし」
……うん、それは反省だね。友達が欲しいのに、完全ガード状態だったらしい。
でも話しかけてみると、普通に話せるし、今の話は面白かったよ、と続けて、
「それじゃ、私達、お友達だね」
「お友達?」
「そう、お友達」
……友達ってこんな簡単で良いの? 今度こそ友達が出来た? と、今日も混乱しつつ、ぼっちを脱出できそうで嬉しくなった。
「ありがとう。嬉しい」
「私は千代田美春だよ。よろしくね、澄花ちゃん」
「うん。よろしくね、美春ちゃー……え?」
あれ? 千代田って……。
「千代田夏希は、私のお姉ちゃんだよ」
と、してやったりの笑顔で美春ちゃんが返してきた。
どうやら、私は夏希お姉さんに足を向けて寝られないらしいです。