小学一年生-5
「「ただいま」」
「あら、お帰りなさい」
家に帰った私達を、お祖母ちゃんが出迎えてくれた。
岩瀧家は、お父さんがお婿さんで、私達は母方のお祖母ちゃんと一緒に暮らしている。
両親が共働きなので、お祖母ちゃんはこの家の主婦だ。
買ったばかりの盤と駒、そして三冊の本を並べ、これからの計画を立ててみる。
将棋を鍛える方法は色々あるけれど、棋力によって有力な手段は変わってくる。
私は初心者だから、まずは三冊の本を読んで、将棋を覚えるところから始めないといけない。
他に必要な事は、将棋を指す機会の確保だろう。
私一人での外出はまだ駄目と言われているから、将棋道場に通うことは出来ない。
一応、お父さんは将棋が指せるらしく、時間があるときは相手をしてくれるみたい。
そして、インターネットで将棋が出来るらしいので、PCが使えるようにお願いしてみよう。
後は、もうすぐ誕生日だし、プレゼントは将棋ソフトをお願いしようと思う。
将棋ソフトは、定跡も入っているし、一局の中の好手・悪手も教えてくれるらしい。
(お勧めのネット対戦アプリやソフトは、本屋さんで眼鏡男子に教えて貰った。)
……前世と比べ、技術の進歩は目覚ましいようだった。
まとめると、まずは本で勉強、終盤力は詰将棋を毎日解く、練習対局はネットとソフトで、という具合に鍛えていこうと思う。
他にも対人戦の機会も確保したいから、それは今後の課題かな。
気を付ける事としては、夢中になり過ぎない事だろうか?
相手をしないでいると亜季が拗ねるかもだし、お祖母ちゃんはこういうところは厳しい。
特に、学校の宿題や家のお手伝いを疎かにしてしまうと、将棋を取り上げられる可能性が高い。
なので、TVゲームみたいな扱いになるけど、将棋の時間を決めておくのも良いかもしれない。
「お姉ちゃん、入学式の準備は大丈夫?」
「んー、明後日だし、多分大丈夫だよー」
振り返ると、亜季は今回のプレゼントを荷解きしつつ、もう小学校の入学式の準備を始めていた。
どうやら亜季が買って貰ったのは、小学校にも持って行ける可愛い系の小物らしい。
結構ボーイッシュなところもあるけど、こういう部分は私よりもずっと女子だと思う。
一応、私もぬいぐるみは好きだけど、リアル寄りなので、女子らしさは微妙かも……と、レッサーパンダのぬいぐるみを抱きしめつつ、亜季を見習うべきかと観察してみる。
「どうしたの……って、お姉ちゃん、それ好きだよね」
「んー、亜季を見習った方が良いか考えていました」
「それなら、お姉ちゃんも入学式の準備をしよっか」
しまった藪蛇、と気付いたけど妹には勝てず、私も一緒に小学校の準備をする事になった。