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小学五年生-3

 その後、遂に開始時間を迎え、小学生名人戦の決勝大会が始まる。

 まずは、4人の出場者に対して、インタビューが行われた。


 早速私の出番になったけど、コミュ障気味な私としては、正直困った。

 将棋に関する事だけならまだ良いのだけど、好きな教科とか聞かれても……。(まあ、体育以外は全然問題ないのだけれど。)

 それでも、つっかえながらも何とか答え、最後に今大会の目標に対し、


「女子で優勝した人がまだいないそうなので、最初の優勝者になりたいです」


 と答えてインタビューを終える事ができた。

 その後、赤穂君は闘志を秘めて、金城さんは飄々としてという具合に、意外と各人の特徴が出た受け答えになっていたのが印象的だった。


 そして、全員のインタビューを終えた後、4人の出場者でくじの代わりに扇子を引き合う。将棋大会らしい遊び心で、ちょっと面白い。


 その結果、私の準決勝の相手は赤穂君に決まった。

 ここまで来たら、誰もが世代トップクラスの実力者だから、私としても全力を尽くすだけだ。


「岩瀧さん。早速だけど、2年前の借りは今返させて貰う」

「いいえ。私も負けられませんし、今度は指運じゃなく、実力で勝ちます」


 そしてお互いに挨拶を交わし、準決勝が始まった。

 先手の私はいつもの通り三間飛車に振る。それに対し、赤穂君は居飛車穴熊を目指すけど、右銀を前線に繰り出すそぶりを見せ、石田流を牽制する。


 私は少考の後、手順を工夫して石田流に組むように進める。赤穂君としては、前回の対局を考えて石田流を嫌ったようだけど、だからこそ組み切れれば心理的にリードを図れるとみた。


 それでも右銀を繰り出してくる赤穂君に対し、私も石田流を目指して細かく手順を尽くす。まだ序盤ではあるけど、既に戦いは始まりかけているから、中盤の入り口に近いのかもしれない。


 その後も細かい折衝が続いたけど、何とか私は石田流を完成させる目途を付けた。尚も、赤穂君は石田流の妨害を続けるけど、少々足らない状況だ。


 結果として、私は赤穂君の銀を手にしつつ浮き飛車に構える事に成功し、一方の赤穂君は香を取りながら馬を作る。

 まず最初の分かれとしては、駒得をしながら好形を得た私がリードした形となった。


 この後、私は赤穂君の馬を封殺しながら駒を捌きにかかり、赤穂君は私の捌きを抑えながら穴熊を固め、チャンスを伺う。

 第二次の序盤とも言える細かい手順の中、私は強引に飛車交換を迫り、優位な状況のまま局面を進展させる。


 それに対し、赤穂君も意表の自陣飛車を放ち、自陣を引き締めながら細かく手を繋いでくる。

 私の優位はまだ動かないけど、赤穂君の指し回しは巧妙で、私はしばらく受けに回る展開が続いていた。


 それでも、私は優位を維持し続け、待望の手番を得て飛車を敵陣に打ち下ろす。

 そして、桂を拾って急所に打ち、赤穂君の穴熊攻略が見えてきた。


 だけど、勝ちが見えて来たところで、今度は赤穂君の勝負手が飛び出す。

 私の角を歩で近付けて受けると見せつつ、同時に王手龍取りのラインを用意する。

 それに対し、私も的確に寄せに行ったつもりだったけど、最善を逃してしまい、形勢が接近する。

 そして、駒を蓄えた赤穂君の反撃が厳しく、局面は一気に振り出しに戻りつつあった。


 前回の対局を彷彿とさせる流れだけど、私はここで一旦腰を据え、赤穂君の反撃を確実に受け止めにかかる。

 赤穂君の穴熊も、もう金銀が残っていないから、受け切れれば勝ちになる。


 それに対し、赤穂君が秒に読まれて間違えた。寄せを読み切れず、遊んでいる桂を取った手が緩手だった。

 私は赤穂君の玉に王手を掛けて、要の馬を強引に奪いつつ、赤穂君の玉を穴熊から引き摺り出す。

 そして受け一方だった角を王手で飛び出し、自玉の逃げ道を確保しつつ、赤穂君に受け駒を一枚使わせる。


 赤穂君も食い下がってくるけど、私は手順に玉を上部に逃がして、捕まらないように赤穂君の攻めを躱していく。

 最後に、自玉の安全を確保しつつ、二枚の角を切って寄せ形を作った。


 赤穂君はギリギリまで最善を尽くし、粘りを見せるけど、私も自玉の脅威を無くしつつ、赤穂君の玉を確実に寄せていく。

 最後は、粘る赤穂君を振り切って、勝利を手繰り寄せた。


「負けました」

「ありがとうございました」


 何とか赤穂君に勝ち切る事ができたので、集中力を解く。

 赤穂君はリベンジならず、やはりとても悔しそうだった。


 本局は、赤穂君の工夫の序盤から始まり、その後も手の広い局面、細かい手順が続く、非常に難しい将棋だったと思う。


 実際に、この後TV放映用にインタビューされて、プロの先生が一局を総括してくれたのだけど、私が優位な局面が多かったものの、最終盤で玉が上部に逃げるまでは難しかったらしい。

 そして、プロの先生からは、赤穂君は中終盤での綾の付け方を、私は堅実に序盤をまとめたところと、終盤に赤穂君を振り切った寄せを褒められた。


 これで何とか決勝進出。あと一つで女子最初の小学生名人になれるから、気合を新たに臨もうと思った。

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