表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/75

小学一年生-4

 そんなこんなで、ドタバタした父実家への帰省も終わり、お家に帰る事になった。


 あの後、頭がパンクした私を見かねて、お兄ちゃんが将棋入門書を持ってきた。

 「もう使わないからあげる」というので、今は帰りの電車の中で読んでいる。

 昨日は躓いてしまったけど、駒の動きとルールを覚えないと何も始まらないし……。



 そして、帰宅の途中で、ターミナル駅で一旦降りて、買い物をする事になった。

 どうやら、私と亜季の小学校の入学祝いに、何か欲しいものを買って貰えるみたい。


 私と亜季は双子じゃないけど、同学年の姉妹のため、小学校にも一緒に入学する事になる。


 同学年で私の方が約一歳年上だからか、亜季が小さい頃は、かなり私にべったりだった。

 今はちょっと落ち着いたし、身長が追いつかれた事もあるのか、姉妹逆に見られることもあるけど……。


 亜季はいつも通り、ぬいぐるみか可愛い系のものかな……と考えたところで、意識を戻す。

 と言っても、今の私が欲しいものは決まっているので、お父さんを引っ張って行くだけだ。……意外と将棋の盤駒は安かったです。


 そして、盤駒だけだと亜季の分とつり合いが取れないから、もう少しだけプレゼントを追加して貰える事になった。

 だとすると、将棋の本が良いだろうか?

 それなら、前世の記憶の中にヒントがあるかも、という事で思い返してみた。


 ……うん。中盤の手筋と、詰将棋の一番簡単なものと、一冊ずつが良いと思う。

 駒の名前すら忘れている割に、今回はあっさりと必要な知識を見つける事が出来た。


 というのも、前世の私は、後輩を鍛えるにあたり、かなり後悔していたらしい。

 後輩を即戦力にすべく、序盤戦術を徹底的に覚えさせた結果、確かにすぐに戦力になった。

 しかしその後、彼は序盤力に頼り過ぎてしまい、中終盤の力が身に付かず、結局伸び悩んでしまった……。


 将棋で最も重要な力は終盤力だ。

 相手玉を詰ませられなければ、どんなに優勢でも勝つ事は出来ない。

 その一方で、不利な状況であっても、終盤力次第では相手に決め手を与えず、逆に相手が隙を見せた瞬間に討ち取る事も出来る。


 そして、終盤力を鍛えるに当たっては、詰将棋(特に短手数・実戦形式のもの)による、詰みのパターン学習が最適だと思う。(前世の知識によると、受験数学(今の私には分からないけど……)に近いらしい。)


 それに対し、中盤は重要な以上に一番難しい。

 序盤は定跡があるし、終盤もある程度パターンを覚える事で鍛えることは容易だ。

 しかし中盤は、将棋の中で最も手が広い場面であり、鍛えるのも容易でない。

 但し、初心者が中盤の指針を学ぶ手段としてなら、手筋の学習が有効だと思う。


 序盤も重要だけど、初心者には意味不明な部分も多いし、そもそも将棋の展開が本の通りにならない。


 以上から、終盤用に詰将棋、中盤用に手筋の本が良いと判断したのだが……。


「何を選べば良いのか、分かりません」


 よくよく考えると、小学一年生でも読める将棋の本ってあるんだろうか?

 一人困って、本屋さんの将棋コーナーをうろうろしていると、私よりちょっと年上の男子を発見した。

 なんとなく、将棋を指しそうなオーラを醸し出しているので、質問してみよう。


「すみません、教えてください」

「……、僕ですか?」

「はい。一番簡単な詰将棋の本と手筋の本が分かれば、知りたいです」


 その眼鏡をした男子は、ちょっと驚いた顔をしつつも、本探しを手伝ってくれるようだ。


「将棋はどの位指せますか?」

「覚えたてです。盤と駒と入門書は持ってます」

「でしたら、これとこれでどうでしょうか」


 薦められた本は、一手詰・三手詰が中心の詰将棋入門と、中盤の入門書だった。

 そのまま2冊とも買うことにして、眼鏡男子にお礼を言って別れる。


 その頃には亜季の買い物も終わっていたので、将棋指しは意外と面倒見が良いよね、と思いつつ帰路についた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ