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気づき、感じ、猛り、狂う

作中で出てきた魔術はあとがきで開設を描いてみようと思います。

なかなかお話の中で一つ一つ解説するわけにもいかないので……(なお、自分がどういう魔術か忘れないためでもある)。

浦設定とかめちゃくちゃ考えるタイプです。ぜひぜひ深読みしてください。

よければ読んでくださいな。

「堕ちなかったのが4人。予想より多かったわね」


空を見上げながら女は瞼を閉じる。


「『魔術師』と『異能者』はまだ分かる。あの不良の男も神秘武術の呼吸法で抵抗したみたいだし、理解出来る。だけど、私の憑依体にトドメを刺したあの男は?」


神秘を行使した気配は無かった。

異能を発現した気配も無かった。


それなのに術を防いだどころか、能力を底上げした憑依体にトドメすら刺して見せたのだ。


「とは言え、危険度は依然変わらず。【人理神話】に『異能者』。次いであの不良、最後に一般人かしらね」


あくまでスタンスは変えずに瞼を閉じる。


「『神の愛は星を動かし、世界を動かす。ゆえに、世界に生きる我らは愛の奴隷』」









「数が多い……!」


学校の自分以外全てが敵に回る。

そんな異常を前にして、彼らは立ち向かっていた。


「さすがにこいつァ、厳しいぞ! 【人理神話】だっけか? なんか打開策ねェのか!?」

「私の魔術は一度見られると対策が取られやすいのよ! だから最小限で行きたかったんだけど……仕方ない!」


懐から取り出したのは、細かな金属片。


「『人は神の怒りへさえも手を伸ばし、明かさんとする。所詮猿真似、されど神の真似。権能に届かずとも、我らはそれを類似な便利品として手中に納めた』!」


それを、ばら撒く。


「伏せなさい! 『故に神話に劣れども、怒りの一端を担わせん!』【人雷怒】」


弾け飛んだのは、廊下にあった電源。

そこから電気がスパークし、空中の金属片を伝って拡散。


「「「ギャアアアアア!!」」」


咄嗟に伏せた彼らと異なり、操られていた者たちは反応できず、電撃が直撃する。


「ぎゃああああ!?」


あと、何故かついでに彩人にも少し当たった。


「ふぅ、すっきりしたわね」

「なんか、一色君にも当たってるけど……」

「だ、だいじょうぶだ。すこし、痺れているだけ……」

「おかしいわね。原型は『ケラウノス』だから、私が敵と判断した相手にしか向かわないはずなんだけど」


ここにいる人間には何故彼に攻撃が当たってしまったのかは理解できない。

何せ、ここには彼が【魔王】であると知っている者はいないのだから……



「なんにせよ、この魔術はここでは使わないから安心して。というか、多分使えないけどね」

「あ? なんでだよ」

「別に、俺のことは気にしないでいいよ?」

「いや、そうじゃなくてね。私の魔術は対策が取られやすいから使いたくても使えないのよ。それより、今のうちに駆け抜けるわよ!」


死屍累々の廊下を走る。


「それにしても、魔術って言うのはすごいな」

「だよなぁ。俺が喧嘩するならどうするか……金属片も持ち歩くようにするか?」

「あのさ、敵陣の中で私の魔術の対策考えるのやめてくれる!? 気が気でないんだけど!?」

「あんた達余裕ね」


ひと段落着いて、心に余裕が生まれたのだろう。

先ほど初めて目にした魔術に高揚しながら話す男勢と怒るカナデ。

園実が注意を促すように、ここを敵が狙わない理由がない。



──瞬間、彩人が飛んだ。



「は?」

「へ!?」


殆ど予備動作も無しに飛んだ彩人は近くにあった教室のドアを倒しながら飛び込んだ。


「あなた、一体何して──っ!?」


その下敷きになっていたのは一人の生徒。


「この術式痕……【憑依】だわ。『隠蔽』の要素も混じってるから、園実の『眼』でも見えなかったのね」

「でもそんなのを、どうして一色が……?」


その疑問も最もだ。

神秘に属する彼女たちが気が付けなかったのに対し、彩人だけが感知して動いたのだから。


しかしその疑問に物申すものがいた。



「いや、俺も気づいたぞ? 彩人の方が早かったみたいだから動かなかっただけで……」

「へ? なんであなたがわかるのよ?」

「勘。というか、気配っつうのか? そういうあれだよ」

「気配って、魔術の気配は隠蔽されてたけど?」

「ちげぇよ。生き物だったら持ってる気配の方だっつーの!」

「ああ、もう! これだから武闘派は!」

「うるせぇ! 頭動かしてりゃあ偉いってんのか!?」


感覚派である嶺二と頭脳派であるカナデでは何かと馬が合わないのか、すぐに言い合いを始める。


「あの二人、仲がいいな」

「アンタ眼ついてるの? で、実際どうなのよ?」

「なにが?」

「二人の言ってることよ。何か感じたから動いたんでしょう?」

「うーん、多分嶺二の方が近いだろうな。ただ、あそこにいたような憑依体、だったか? あれの気配しかわからなくてな」


どうしてか、嶺二の言っていることも少し違う気がして首を傾げる。


「もしかしたら、特定の術式に対して感知できるのかもしれないわね」

「そんなことがあるのかい?」

「ええ、自分の根源に近い魔術だと稀にあるのよ」

「根源……自分の根幹を成すもの、か。ああ、そういう事か・・・・・・


何かに気づいた様子で彩人が納得した。

操られている生徒に対して、どうしてクルものが無かったのかも理解した。


「そりゃあそうだよな。中身の無い人形劇に沸き立つものがある筈もない」

「オイ、彩人?」


何故か笑みを浮かべた彩人に問いかける嶺二。


「なぁ、嶺二。お前に愛する人はいるか?」

「なんだ突然? まァ、恋人っつーのはイネェが、家族は大事だぜ?」

「じゃあ、嫌いな奴はいるか?」

「まあ、こんなナリだし、それなりにな」


質問の意図が見えなくて首を傾げる各人だが、彩人は続けて「他の人は?」と問いかける。


「恨みくらいあるわ。『魔術師』なんてそんなものよ?」

「アタシも昔、『異能』関係で気に入らない事もあるし、基本人間はキライよ。人間なんてそんなものじゃない?」


各々が好き嫌いについて語る中、彩人は眉根を顰めて告げる。


「なら、俺たちは相手のこの魔術を絶対に受けてはいけない。例え一撃であろうと、受けたら全滅する可能性があることを忘れないでくれ」


何処までも真剣な表情で紡がれた言葉は有無を言わせないチカラがあった。






「──逃げなかったことだけは褒めてあげるわ」


中庭への扉を開き、開口一番そう告げた。


「それはこっちのセリフよ、【人理神話】。【色欲の魔王】の時みたいに、ケツまくって逃げ出すと思ってたわ」


そう返したのは、中庭に座る派手な装いの少女。


「隠れて操った手駒に戦わせる程度の術者相手に、私が逃げるわけないでしょ? おツム足りてないんじゃない?」

「ハンっ、お前みたいな浅い神秘を行使するやつに言われたくわないね。それよりも、だ」


ゆっくりと視線を巡らせて、一人一人眺める。


「『魔術師』や『異能者』が抵抗できるのはわかる。『神秘武術』の使い手ならわからなくもない。問題はお前だ」


ピッ、と指を向けて首を傾げる。

その目には憎悪にも似た焔が燻っていて──


「どうして私の【傀儡】が効かない? 見た限り野良の神秘傾倒者とも思えない。なのに、どうしてどうして私の【憑依体】がわかる?」

「なるほど。途中から襲撃をやめて、少し離れたところから憑依体で見ていたのは観察していたのか」



ふと、ここに来る直前の、カナデとの会話を思い出す。


(『魔術師』にとって未知は行使するチカラでありながら『敵』でもある。だから、あなたは奥の手になり得る。そしてそれは、同時にあなたが狙われやすい事を意味してる)


「俺が、怖いか?」


彩人にとってはただの問いかけに過ぎない。


「──、怖い? オマエが? 有り得ない……くだらない、笑わせないで」


しかし、彼女にとってその言葉は侮辱である。


「オマエ如きが、この、私に……! 怖れるわけがっ、無いだろうが……!!」


溢れる激情に感化され、魔力が渦巻く。


「来るわよ! 構えて!」

「『ラグナロク』が一員、【魅了傀儡】『イブ』が告げる。一人残らず叩き潰せッ!!」


相対した神秘が猛威を振るう──!

魔術名【人雷怒】


今回『古登 カナデ』が使用した電撃の範囲魔術。

媒介として金属片を使い、範囲を指定して放つことが可能。

作中でも語っているように、『雷霆』《ケラウノス》が原型なので、自分が敵と認定したものに対象を限定することも可能。

この魔術には先があり、今後も再登場の予定あり。

【人雷怒】は真名があり、この名称は偽装。

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