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非日常へ

初回の投稿から評価や感想頂きまして嬉しい限りにございます。

そして気づいたのですが、英語でルビ振りすると読みにくいのでは……?

どっちがいいよー、とかございましたら感想もしくはメッセージまでお気軽にどうぞ。


今回は試験的に英語でのルビ振りを解除しています。


ではでは、どうぞ!

──ああ、どうしてこんなにも私はついていないのだろうか。


路地裏を駆け抜けながら、思わず舌打ちをする。


「仲間を探すために町へ繰り出してみれば、かつての仲間に襲撃されるなんて、なんて皮肉!」


飛来する『魔術』を無効化しながら人目につかない場所を探して走り続ける。


(アイツ、一般人への被害も気にしないでバカスカ撃って……! 常識ってものがないのかしら!?)


周囲を気にせず襲撃を仕掛けてきた相手にイライラしながら、【人除け】を張った場所へと誘導が完了する。


「──『世界指数想定、仮想制定。私は世界に虚を見出みいだす』」


詠唱を紡ぐ。

それは世界の表から異なる地を観測し、重ね合わせ、移動させる為の言葉。


「『虚数世界観測。世界は流転し、虚構に沈む。【虚数侵界《Imaginary Around》】!」


世界の色が反転する。


世界の境界が歪む。


捻じれ、狂い、流転し、転回する。




虚の境界を超えて、世界が沈む。


まるでヴェールに覆われたかのように、されど確実に一線を超えた。


「全く、【魔王】討伐に参加したのはアンタの意思で、負けたのは実力不足でしょう!」

「ふざけるな! これで終わりだ──【崩撃ショック・ダウン】!」


私が周囲への危害を気にして【魔術】を行使した時から構築していたでろう【魔術】が放たれる。


(──術式構成は衝撃、振動、増幅、崩壊。互いに上手く構築されている、反証術式は間に合わない、か)

「『偽証、代替、悲劇の代償。対象は左腕。平穏のために犠牲を払う』」


咄嗟に判断して、術式を構築。

内容は、人類文学たる『悲劇』を基にした、何かを犠牲にすることで得られる平穏──この場合は左腕にダメージを肩代わりさせる術式だ。


(この際だから左腕はくれてやるわ。【原初悲劇《Toragoidia》】に平行して攻勢術式を構築──)


その時だった。

後方から地面を蹴る音がして視線を向ける。


「どうしてこの場所に……! ダメ、一色君!!」

(【原初悲劇《Toragoidia》】を破棄。攻勢術式の構築を最優先──)


焦る思考とは裏腹に、『魔術師』としての思考は冷淡に術式を組み始める。


「『生成、回転、衝撃。飛来するは鈍色の死』【死弾《Lead Reaper》】!」


手は銃を模り、衝撃音が重なる。

一つはカナデが指から撃ちだした鉛弾の音。

もう一つは彩人が相手の魔術を受けた音であった。


「ぐ、【人理神話《System Mythologia》】アアア!」

「黙れ。お前は人の理で神話を紡ぐに値しない」


崩れ落ちる彩人を抱きとめながら、空いた片手は銃を模り弾丸を放つ。

『鈍色の死』の詠い文句の通りに頭を撃ち抜き、死を与える。


「一色君!」


脱力したままの彩人に声をかける。


(意識はないけど呼吸はある。なら──)

「『探査、精査』」

(あら、結構いい身体──じゃなくて、肉体の損傷はそこまでひどくはない。恐らく、『魔術師』じゃないのが幸いして術式回路がはじけ飛んだりしなかったから。それでも振動と衝撃で脳震盪を起こしている。命に別状はなさそうだけど、現場を見られたってこともあるし、家に連れ帰るか)


そう言って彼女は携帯を取り出して番号を押し、首を傾げる。


「あ、あれ? つながらない……いや、ええっと。確か、虚数空間だとつながらないのよね! 知ってるわっ! だから、ええっと……」


あたふたしながらも数分経ち、虚数領域を閉じて電話を掛ける。


「もしもし、私よ。襲撃を受けて撃退。その際に一般人が巻き込まれて意識不明。車を回して。ええ、死体も回収して『組合』経由で送りつけてやるわ。ええ、念のために家の医学者も連れてきて。場所は送るわ」


そう言って電話を切って携帯をいじる。


「えっと、『じーぴーえす』? ってどうやって送るんだっけ?」


彼女は【人理神話《System Mythology》】の名を冠する『魔術師』。


偉大な異名を持つ魔術師だが、彼女は現代機器に滅法弱いのである。






「──朝、か」


小鳥のさえずりを聞きながら目を覚ます。

身体を起こし、少しの倦怠感を感じながら首を傾げる。


「ここは何処だ?」


知らない部屋で目覚めたことに疑問を覚える。


「これが噂に聞く朝チュン……?」

「人が心配して見に来てみれば……?何馬鹿なこと言ってんのよ」

古登ことの?」

「あんた、昨日の夜のこと憶えてないの?」

「確か、夕飯前にランニングに行って……」

「道端に倒れてたのよ。憶えてないの?」

「ああ、そうか。またやったのか……」


予め考えていた文句であったのだが、まさかの答えに驚く。


「え、アンタひょっとしていつも倒れてるの?」

「昔、何回かやったことがあるだけだよ。限界の見定めに失敗して、走りすぎて倒れたことが何回か」

「あれ、部活とか入ってたっけ?」

「ただの趣味だよ。筋トレとかランニングとかね」

(へえ、だからいい身体してたのね)

「?」

「な、なんでもないわ。それより、お腹すいてるでしょう? 朝ご飯を用意したのよ!」


手をぱんっ! と叩くと扉から食事をのせたカートが運ばれてくる。


「……メイド?」

「そうよ、うちの使用人だけど……おかしいの?」

「いや、うちにも家政婦はいるし何もおかしくはないけど……メイド服、メイド服か」

「因みに服装は彼女の趣味よ。そうよね、メイドくらいおかしくないわよね! 昔、友達を家に招いたときに変な顔をされたのはあんたがメイド服なんて着てるからだったのよ!」


勝ち誇ったようにメイドに言い放つカナデだが、もちろん服装だけが理由ではない。

普通の家庭にメイドや家政婦はいないのだが、両者ともに特殊な家庭環境を持つために、認識に齟齬が生じているのだ。


「あ、そう言えばスマホ借りたわよ。一応あなたの家にも連絡を、って」

「ああ、ありがとう。何か言ってた?」

「心配してたわよ。とりあえず無事だって伝えたけど……」

「そっか。リリさんには帰ったら謝らないと」


そう言って立ち上がり、置いてあったスマホをポケットに入れる。


「あら、帰るの? もう少し休んでからでも良いのよ?」

「お誘いは有り難いけど、迷惑もかけられないしね。今回はありがとう、助かったよ。このお礼はまた今度するよ」


見送られながら、彩人は彼女の家を後にし帰路に着く。


「ありがとう、って、本当は私が言うべきなんだけどね」

「言えば宜しいのでは?」

「分かってて言ってるでしょ。私は『魔術師』で、彼は一般人。文字通り、住んでいる世界が違う。それに、もう記憶処理は終わっているわ」

「……カナデ様。ひとつだけお聞きしますが、彼は本当に『一般人』なのですよね?」


どこか消沈したカナデにメイドは問いかける。


「それ、どういう意味?」

「人間であるのは治療を施す時に確認しました。魔力回路もカナデ様の言うようにありませんでした。ですが……」

「何か気になることが?」

「私の人間でない部分・・・・・・・が、何か感じているようなのです」

「……わかったわ。念の為調べてみる」

「ですが……」

「良いのよ。もし神秘や異能に関わる家系だったりすれば仲間に誘えるしね。ほら、私たちだけじゃあ魔王討伐大変でしょ?」


楽しそうに言うカナデに、従者であるメイドも小さく笑う。


「ええ、身を呈してカナデ様を護るお方です。さぞかし頼もしいでしょう」



彼女たちは知らない。

これから先、彼との避けられない運命が待っている事を──






「ただいま」

「お帰りなさい」


そして彼は知らない。

自分が【魔王】であることを──

主人公が本格的に神秘と関わっていくのは次以降ですかね。

主人公の異常性はもう少し先で露顕し始めます。


どこかで魔術の詳細を語りたいのですが、神話題材はあんまり語ると怒られるかな? 現実とは無関係ですって書けば大丈夫かしら?

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