漫才「宇宙人」
漫才二作目です。よろしくお願いします。
友人同士の会話。
「宇宙人と会ったことあるか?」
「ないよ。いるわけないじゃん」
「いたんだよ、それが」
「ないないない」
「決めつけるのはよくないと思うよ」
「だっておまえ、うそつきじゃん」
「そうだけどさあ、今回だけは本当なんだってば」
「俺は信じません」
「まあまあ。聞くだけでも聞いてくれよ」
腕を掴んで、
「聞いてくれないならキスするぞ」
「聞きます。聞くから離してくれ」
「ありがとう」
「そのかわり、つまらなかったら承知しないからな」
「先週バッタを取りにいった時の話なんだけどさ」
「ああ」
「鎮守の森、知っているよね」
「知ってる」
「行って早々、バッタを見つけてさ」
「いっぱいいるもんな」
「僕はすぐさま網を振り下ろした」
「うん」
「その網の中に、バッタといっしょに宇宙人が入っていたんだよ」
「ずいぶん小さいんだな」
「そうなんだよ。こんなものかな」
両の掌で説明する。
「珍しい種類のバッタだったんだろ」
「違う、宇宙人に間違いない」
「なんでそう思ったんだ?」
「銀色の全身タイツを着ていた」
「銀色のバッタだったんだろ」
「そんなの聞いたことないぞ」
「宇宙人よりかはいそうだよ」
「とにかく、宇宙人なの」
「捕まえたって言ったよな。見せてみろ」
「ここには居ない」
「やっぱりうそなんだ」
帰ろうとする。
「まてよ、続きを聞いてくれ」
後ろから抱き付く。
「キスするぞ」
「わかった、わかったから離してくれ」
「かわいそうだから網から逃がしてあげたんだけど、僕のことを追いかけてくるんだよね」
「ぴょんぴょんと跳ねていただけだろ」
「何かしゃべりかけてくるんだよ。でもそれがちんぷんかんぷんでさあ」
「通訳も一緒に捕まえればよかったのに、ははは」
「警察に相談しに連れて行ったんだ」
「相手にしてくれなかっただろ」
「迷惑をかけているのでなければ警察では預かれないって」
「体よく追っ払われたんだよ」
「外国人みたいなものだから、外務省に相談してみろって言われてさ」
「外務省まで登場させるか?」
「それで外務省に行ってみたんだけど、こんどは大使館を通してくれときた」
「追い返されたんだよ」
「大使館なんてあるわけないだろ。もう途方に暮れてしまってさ」
「万策尽きたか」
「宇宙人は泣き出すし」
「ありゃま」
「お腹をさすっているから、腹が減ったんだろうと思ってさ」
「ほう」
「でも、何を食べるのかわからないだろ。動物園に行って聞いてみたんだよ」
「まあ動物には違いないわな」
「うちに宇宙人は居ないから解らないって言われてね。隣が大学だから、聞いてみちゃどうかってアドバイスを貰ってさ」
「たらいまわしか」
「大学に行って尋ねてみたら、インスタントのカップ焼きそばなら食べるんじゃないかって言われてさ」
「おいおい、それって安直すぎないか? 学者がそんなこと言う?」
「美味しそうに食べてくれたよ」
「おっとお」
「でもすぐまた泣き出してしまって」
「お代わりをくれってか?」
「上を指さしていたから、おそらく自分の星に帰りたいって訴えているんだろうと思ってさ」
「ふむふむ」
「羽田空港に行ってみたんだよ」
「空港? 行ってどうなるものでもないだろうに」
「カウンターで、宇宙行きはありますかって尋ねてみたんだよ」
「恥ずかしいこと聞いたなあ」
「わらにもすがりたい気持ちだったからね」
「もちろんだめだったろ」
「今日の便はもう出てしまったと言われてさ」
「あったのかよ」
「その晩は空港に泊まって、翌日の便で帰って行ったよ」
「宇宙行きの定期便?」
「うん」
「あるの?」
「余り知られていない路線なので、まだまだ利用者は少ないって言っていたな」
「お前も乗って行けばよかったのに」
「今日君と会う約束があったから、やめておいたんだ。夏休みになったら一緒に行こうよ」
「ああ。それまでお前と友達だったらな」
読んでいただき、どうもありがとうございました。