過ぎ去りし日々 7
人の思惑にかかわらず、日は淡々と過ぎますね。
「一人寝の淋しさ」
田舎の母のところに子供を置いてきたときに
ああ、私は何をやっているのだろうかと
悔しい涙が流れて止まらなかった
胸がじんとしてきても
もうお乳があげられないんだと
子供がいくら泣いても、騒いでも
ギュッと抱きしめることが出来ないんだと
思えば思うほど電車の窓の外は
涙に濡れて見えなかった
そうしているうちにも
電車はどんどんと進んで
これから私が働く街に近づいていく
そして、母のもとにいる子供からは
引きはがされるように離れていく
いくら、近くだからすぐに会いに来られるとしても
この離別がほんのひと時の物だと思い込もうとしても
どうしても、どうしても
今のこの離別が悲しくて、悔しくて
今の自分を許すことが出来なかった
なぜもっと早くに病気のことを気づくことが出来なかったか
気づいて治療に掛かれたらこんなことにはならなかったのに
同じ考えがぐるぐる頭の中を駆け巡り
こんな結果を出した原因が何処にあったのか
唇を噛みながら考えても、私には解るわけもなかった
街の駅前からどこをどう歩いたのか
気がついたら、勤め先から宛がわれた
アパートの前に立っていた
私は覚悟を決めなければならない
あの時の決心は嘘ではなかったのだから・・・
溜息の中で今日もまた、うなされていた自分に気が付いて
両手で顔を覆って息を整える
全身に嫌な汗が噴き出ているのを感じて
のろのろとベッドから下りてシャワーに向かって歩く
幾度こんなことが繰り返されるのか
子供が私の両腕の中にいないのが胸に刺さり
繰り返し、繰り返し、絶え間なく
淋しさが、波のように心に迫るのだ
そして、私を糾弾し
責め続ける
「やさしさに包まれて」
いつの頃からだろうか
その男が来るようになったのは
まだ若い?
私より二つくらい年下?
いや、もっと下?
私が働くここは、若い人が
易々と来られる所じゃないから
誰かにくっついてきてるのかと見回しても
そんな風でもなさそうで
いつもニコニコ微笑みながら話してる
気が付くと、話したそうに視線が絡むことがある
私の方はお仕事で、さらさらと話すばかりで
お相手は、おじいちゃんやら、おじさまで
自慢話のお相手とご機嫌伺いするばかり
もっぱら聞き役がお仕事で
話すのはほんのちょっぴり、煽てるだけ・・・
特に変わった話をするわけでもなくて
話し上手なわけでもなかった
熱い視線を向けられても、そんな気持ちになるわけもなく
その男もいつまで続くかと思う程度だった
お店に入ればお金がかかる
いつかその男は出待ちをするようになって
その相手が私なのが驚きだったのだけど
お店のガードに追い払われてもやってくる
なぜそれほどに執着するのか聞いてみたかったけれど
面倒なことになるからと、お店の皆にも言われていたし
そのままそっとしておくことにした
こんな方法ではダメなのに気が付いたのか
しばらくした或る日、その男は正装して花束を携えてやってきた
お店の皆があきれるなかで
真っ赤な顔をしながら花束を差し出された私は
あなた何やってるのよ、いい加減に目を覚ましなさいって
言ってやるのが精いっぱいだった
真剣な目つきで話だけでも聞いてくれって・・・
もういったい何なのよ
なんだかなー、考えが漫画ですよね。だから効果的かも?