過ぎ去りし日々 11
三人目の子供のお話。
「次男を出産」
長男が生まれてまた二年が過ぎた頃
三人目の子供に当たる妊娠が確認される
三回目ともなれば
帝王切開後の妊娠の注意は頭に入っている
まずまず順調に時を重ねる
新しい母子健康手帳に健診の時のデーターを書き込んで
体重の増加に気を付ける
必要以上の増加は体の故障に繋がるし
帝王切開後の傷に無理が掛かり
子宮破裂の危険性があるからだ
油断が出来ない
ちょっと前には、妊婦が子供を育てるために
たくさん食べなければならないと言われていたけど
今は昔のように食糧事情が悪くないために
多くは食べ過ぎが故障の原因になっている
超巨大児や巨大児が原因で切開出産が増えている
甘いものの食べ過ぎも、諸悪に原因になるという
子供のアレルギーの素因を作ると疑われている
っとまあ、いろいろとたくさんの
気を付けないといけないことがあるけれど
小さく生んで、大きく育てるって
一部、真理に思えることを目指して
今回も無事に産みたいと
切実に思う
心掛けがどうであろうと時間は過ぎる
事務の手伝いもしながら
まだ小さい長男の世話をする
長女にはまだまだ手が掛かるけれど
一時ほどではなくなった
お蔭なのか二人の子供は順調に育っているし
感謝の日々だ
そうして予定日が過ぎて、今回も
順調に切開出産を迎えた
たぶんこれが最後の子供になると
覚悟を決めての出産だった
麻酔が覚めて生まれた我が子を抱く時
何はともあれよかったと、子供の無事と
自分の無事をご先祖様に感謝する
初めてのお乳を与えている時に
遠くの方から、高い声でどこ?、どこ?
と話しながら近づく家族の声が聞こえてきた
そしてドアの向こうからのぞく顔が
パッと輝いて、弟を喜ぶ顔が出る
二人目の男の子を得て
これで私の義務は果たしたと安心する
わたしはたぶん優しい顔をしているに違いない
「新事業」
時は移り、日は流れる
日々子供の世話と、家事の忙しさに流されて
疲れ果てて早々と休むときもある
一年、二年と過ぎ行くうちに
長女は学校に通うようになり
長男も幼稚園で喧嘩をして帰る
次男も少しづつ手が掛からなくなり
やれやれ、これで少しは時間が取れるかと
思う頃には、次の難題が持ち上がる
なにも時の流れは
我が家だけのことではなくて
世の中全般、流れは早い
流れの中で先々に目を向けないでいると
あっという間に置いていかれることになる
輸出品の梱包の仕方にしても
今までは全面板張りにして、外側を補強するのが主流だった
今では段ボールでできた梱包資材でくるまれて
コンテナの中にぎっしり詰め込まれるのが主流になった
ちょうどその中間で、段ボール箱に入れられて
クレーンで吊れるように補強する形に変わっていた
それが徐々にコンテナに詰める形に切り替わるために
需要が減り始めていたわけだ
このままでは、いずれ仕事がなくなることが見えているし
仕事がなくなって路頭に迷うわけにはいかない
こんな理由が重なって、事業を替えることになったようだ
今ならまだ両方立てて徐々に切り替えられる
そんな思いが切り替えを促した
世はまさに、高度成長時代に差し掛かったところあたりで
どんな事業を始めても大きな損失が起きることはない
逆に、人手も、資本も、やる気があればなんとかなりそうな
足りない、不足しているという人手の需要を埋める形で
建設業を始める様子、建設資材の供給充てには困らない
何とか波に乗れるのか
已むに已まれぬ転換だった。
新事業の行方は?




