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魔法の小瓶①

あまくてR15な前編

「……わー、まだこれあったんだ」


 呆然と呟く私の手の中には、可愛らしいデザインの小瓶が。

 ちょっと捜し物をしていてクローゼットの中を漁っていると、なんか妙に見覚えのある瓶を見つけたのだ。これなんだっけ、と手にとってラベルを読み――思わず遠い眼差しになってしまった。


 しっかり蓋をしているというのにほんのりと甘い香りの漂う小瓶――これは、サイネリアから結婚の祝いにもらった夫婦仲円満のお薬、つまるところ媚薬であーる。

 これを使ったのはほんの数回で、しかもこれをいざエドウィンに抱かれる際に使ったことは一度もない。ちょっと雰囲気を盛り上げるためには何度か使ってみたけれど、それくらい。


 キティ曰く、「量によってかなり効果の差が出る」とのことだ。ラベルには使用期限が書かれているけれど、そこにキティの字で開封日がメモされていた。

 えーっと……使用期限までは、まだまだ時間がありそうだ。


「……これ、どうしよう」


 気になってしまうと、捜し物もできなくなってしまう。

 私は近くにあった椅子に座り、日光にかざして瓶を見つめてみる。


 液の残りは、半分以上。ラベルをよく見ると、「たくさん使えば使うほど、カレはケダモノに大変身! 甘くてとろける時間に浸ってみませんか?」と煽り文句が。

 カレがケダモノに……エドウィンはそもそも肉食獣っぽいけど、どっちかというと属性は犬だよね。犬は総じて雑食だけど……エドウィンがケダモノに、ねぇ。


 クソ神の呪いを解き、彼と身も心も結ばれて一ヶ月。私たちはしばしば、情熱的な夜を過ごしていた。

 頻度にして、五日に一回くらい。お互い仕事があるし、私以上にエドウィンは多忙で不規則な生活だ。彼が帰宅する頃には私はもう寝ていたり、私が起きる頃にはもう出勤していたりと、あまりリズムが合わない。だから必然的に、夜を一緒に過ごすのもそれくらいの感覚になる。


 それとなくサイネリアから情報を仕入れたのだけれど、「新婚で、しかも体力に満ちた若い騎士が夫にしては、頻度が少ないかも」だそうだ。騎士の奥方に聞いてみたところ、聞いているこっちが恥ずかしくなるようなことを教えてもらった。

 ちなみに私は顔真っ赤っかだというのに、赤裸々な事情を話している奥方たちは案外けろっとしていて、「そういえば……」と私の恥じらいにとどめを刺してくるような話を真顔でしてきた。これがベテランと初心者の差なのか……?


 とにかく、お互いの事情もあって一緒に寝るのは数日に一度。いざとなってもエドウィンはどこまでも優しく、私が本気で「無理」とか「嫌」って言うと絶対にそれ以上進めない。そして私が疲れてぐったりしている間にかいがいしく世話を焼いて、「今夜も付き合ってくれてありがとうございました。さあ、寝ましょう」とぎゅっと抱きしめて一緒に眠るのだ。


 ……それが普通だと思っていたけれど、先輩たちの話を聞いていると「あれ?」と思うことがある。

 まあつまり……うちの夫、淡泊なのかな? と。


 確かにちょっと意地悪になったり少々の無理を押してくることはあるけれど、先輩奥様たちに聞くような展開になったことはない。もうちょっとデータを集めたい気持ちはやまやまだけど、サイネリアもキティも独身だし、まさか女王陛下にそんなこと聞けるわけないし……。


 ……もしかしたら他の騎士たちが「普通」で、エドウィンがちょっと違うんだろうか?

 彼は私に対して絶対に酷いことをしないし基本的に遠慮がちだから、我慢させているのかも?

「待て」ができる、みたいなことは言っていたけれど、今はもう彼に「待て」してもらう必要はない。それなのにエドウィンが不満を抱えているのなら――それは一大事だ。


 だとしたら、この薬を使ってみる価値はあるんじゃないだろうか。

 カレがケダモノに、ってのがどの程度なのかは分からないけれど、いつも我慢させているエドウィンが少しでも気持ちがすっきりするのなら、私だって嬉しい。あの優しい笑顔でたくさん無理を言わせてしまったんだな、と思うと罪悪感が半端ない。


 そういうことだし、近いうちにこれを使ってみよう。いつもエドウィンの方から夜のお誘いをしてくれるから、たまには私の方から誘ってもいいかもしれない。うん、きっとエドウィンも喜んでくれる……はず!


 ――決心した私は、忘れていた。

 以前サイネリアが例の媚薬について、「使用期限は長いけれど、一度開けるとだんだん水分が飛んで濃度が高くなる」と言っていたことを。

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