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魔王なオカンと勇者なオヤジ  作者: 雨ニモマケズ
Prologue
2/6

異世界転生 1

気がつくと、俺を転生させてくれた女神アフロディーテがいた真っ白な空間ではなく、真っ暗な水中にいた。


(え?え?ここどこ?なんか声出ないし、水中っぽいし、転生早々溺死しちゃ…わないな。なんか呼吸はしてないけど、特に苦しくもない。一旦落ち着こう。取り敢えず、ここはどこだ?スライムに飲み込まれた?いやいや、そんな転生早々ゲームオーバーなんてことは… ん?なんだこの紐。俺のへそに繋がって… そうか、これはへその緒か。ってことは、ここは子宮の中!?)


『ゔゔぅぅ、んー、ゔー、がー、ぅうゔ』


(なんだ、この声?いや、ここが子宮ってことは、多分陣痛のうめき声だろう。そうか、ちょっと暴れすぎたのかもな。すまん、俺の新しい母さん、これからは大人しくするよ …じゃなくて、なんで胎児スタートなんだよ。普通こういう異世界転生は出産後スタートかある程度育ってから転生したことを思い出してとかだろ。どうなってるんだよ、女神様)


『ひぃ、ひぃ、ふぅー、ひぃ、ひぃ、ふぅー』


(あっ、なんか呼吸がラマーズ法になってる。ってか、異世界でもラマーズ法ってあるんだな。そろそろ出産か?)


『んー、んー、んーーッ』


(うおっ、水圧が上がった、そろそろか。んぐぐ、頭が潰れそう。産道ってこんなに狭いの?ぐおぉぉ…… ゲホッ、ゲホッ。やっと出てこれたか。にしても俺に視線集まってやがる。この状況は… 泣いた方がいいのか?)


「あら?この子全然泣かないわね、どこか悪いのかしら?」


(うん、泣き声をあげておこう。産まれて来た赤ちゃんは元気な方が嬉しいだろうし)


「ぅえーん、えーん、えぇぇん」

「良かったー、元気な男の子ですよ、魔王様」

「はじめましてー、ママですよー」


(想定外のイベントだったが、無事に出産が終わったな。それにしても、出産から始まる異世界生活なんて聞いたことないぞ。俺の第二の人生は大丈夫なんだろうか…)


テンプレ通りではない異世界転生に若干の不安を覚えつつ、現在の状況把握を試みる。筋肉がまだ発達してないからか、思うように体が動かない。出来る範囲で情報収集をしよう。


まず、今俺を抱いているのが、俺を産んだ母親で間違いないだろう。ぱっと見であるが、かなり若い。透き通るような白銀の髪に蒼い瞳で皆が口を揃えて美女だと認める風貌である。俺を転生させた美の女神アフロディーテに負けず劣らずの美女ではなかろうか。ジャ○アンの母ちゃんみたいな前世の母さんとは大違いだ。


それから、メイドが数人いるな、ニコニコ笑顔の。素直に出産を喜んでいるからだろうが、みんなが笑顔で自分を見ているというのは気味が悪い。『見せモンじゃねーぞ』と言ってやりたいが、まだ喋れないからどうしようもない。もう一回泣いとくか。


今のところ分かる情報はこれくらいだな。なんにせよ、体の自由がきかないというのはかなり不便だ。まともに体が動かせるようになるまで、成長を待つか…


――――――――――


まともに体が動かせるようになるまで、大体1年半くらい掛かった。最近、歩けるようになり、離乳食を卒業した。五十音はちゃんと発音できるようになったが、鼻音や巻き舌などはまだうまく発音できない。成長が遅い気がしないでもないが、気のせいだろう。


体の自由がなくても、頭は常にフル稼働できるので、この世界に関する基本的な情報を頭に叩き込んできた。といっても、ほとんどが読み聞かせの内容で、要約すると、歴代魔王スゲーっていう武勇伝だった。どこまでが事実なのかは知らないが、武勇伝に生活の基礎知識を混ぜ込んであるのは、よくできていると思う。


さて、最近歩けるようになったことで、やっと鏡の前で自分の容姿を確認できた。


(これが俺か…)


顔はまだ丸みを帯びていて幼さが残るが、亜麻色の髪に蒼い瞳で、概ね美少年といっても差し支えない程に整っている。確かに母親の血を受け継いでいることがわかる。いやー、遺伝って怖い。整形なしでこの顔か。


異世界テンプレよろしく、ステータス画面を開こうと色々やってみたが、ステータス画面が現れることはなかった。マジックアイテムかなんかで確認するパターンかもしれない。もしかしたら、前世のようにステータスというものがないのかもしれない。自分のステータスを確認する方法はないか、しばらく探してみよう。


「アルディア様、お食事の時間でございます。どうぞ、こちらへ」


もうそんな時間か。といってもこの世界には時計がないため、太陽や月を基準に動いてるようだ。ショートボブのメイドに連れられて食堂へ行く。食堂と言っても調理場に近い広間にテーブルを並べただけだが、高級レストランだと言われても納得する程度には整っている。王宮にしては随分と質素な感じがするが、どうやら魔王様のご意向らしい。曰く、『ご飯はみんなで食べるもんやろ』とのこと。


「アルちゃん、よう来たなぁ。お腹いっぱい食べていきや。ジュリーも席に着いて」


「では、失礼します」


あのショートボブのメイドはジュリーって名前なのか。失礼な話だが、正直に言って今まで気にしたことがなかった。使用人達の名前もぼちぼち覚えていかないとな。


さて、このエセ関西弁のべっぴんさんが俺の母さんである。魔王としての公務で忙しいらしく、食事の時くらいしか一緒にいられない。普段、俺のお世話をしてくれるのはメイドたちだ。


父親である勇者の姿が見えないが、まあ、いつものことだ。俺もまだちゃんと姿を見れていない。俺が寝ている時にこっそり寝顔を覗きに来ていたりするらしいのだが、俺に見られるのは恥ずかしいらしく、潜伏スキルをフル活用して、俺の視界から外れているそうだ。なんというスキルの無駄遣いだろうか。


ーアルディアって誰かって?


…今更ではあるが、自己紹介をしようか。名前はアルディア・ヴァン・グリフィス、魔王と勇者の子だ。人族と魔族の血を引いているが、見た目は普通の人間と変わらない。というか、純魔族の母さんでさえ、人間と変わらない姿をしている。魔族ってツノが生えているイメージがあるんだが、前世の想像の産物なんだろうか。今のところチート能力を持ってる感覚はない。


とある女神様から世界の抑止力になってくれと頼まれたが、抑止力ってどういうことだろう。前世の話をすれば、核兵器とかか。殺戮兵器になれと?いや、多分違う。抑止力っていうのは「お前たちなんてどうにでもできるから大人しくしろよ?」っていう一種の脅しだ。


なんだ、世界の抑止力って難しく考えていたが、要は、異世界テンプレのエピローグ状態にしてくれってことか。それならば、話は簡単だ。さっさと俺TUEEE状態になって、ラスボス倒して、スローライフを手に入れればいい。


でも確か、ノブレス・オブリージュとか言ってたな。魔王と勇者の子供という立場に起因する義務か… 考えてもよくわからん。魔族と人族の仲を取り持て、とかか?


「アルちゃん、どないしたん?冷めへんうちに食べよ」


いつの間にか手が止まっていたようだ。料理を目の前にするとつい忘れそうになるが、俺は1歳半で、まだ前歯しか生えていない。それゆえ、どうしても食事風景はハムスターのようになってしまう。魔王様、というか母さんはそれを楽しんでいるようだが、奥歯がないのは不便だ。親知らずのような奥すぎる歯はかえって悩みのタネだが、早く奥歯が生えてきてほしいものだ。


久しぶりに読み返してみたらおかしなところがあったので改稿しました。ついでに設定もちょっと変えました。

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