Ⅸ:本命と彼女
輸入品を扱うKさんは、百貨店や物産展など、全国を点々と飛び回り、海外にも買い付けに行くやり手なサラリーマンだ。
Kさんは、なかなかのイケメンでやせ形、話も上手ときてる。
飲み会でも、女性男性問わず楽しい時間を過ごしてくれたことに感謝しお開きになったときには、会計を黙って終わらせる。
モテないはずがないのだ。
催事にいる数週間で、百貨店の女性から告白されることはよくある。
更に、彼は彼女がいるからと片っ端から断る姿は、更に彼の株を上げていた。
先輩が某百貨店の催事でKさんと知り合いになり、どうしても付き合いたいから、まずは食事にいきたい。
だけど、2人きりは何でもないにしろ出掛けるのは、彼女に悪いからと断っているらしい噂があるので、催事仲間で最終日にお疲れ様会をするという名目で誘うから、そこに来てと。
なぜ私がと思いながらごちそうしてくれると言う話につられ、その会に参加した。
Kさんは噂通りイケメンで話も面白かったし、豪快でもある。
たった2.3週間の催事で告白されるのも納得だと思っていたところへ、先輩の目配せとわざと咳き込む合図が。
「Kさん、私手相を見るのが特技なんです!」
若干大根役者のようだが、事前に先輩から頼まれていた指示通り言ってみると
じゃ、折角だからと手を出された。
…これは微妙だ。火遊びはしないが、付き合っている彼女は2番で本命が常にいる。
本命には、心で繋がり、男女の関係もない。今の2番の彼女とは来年結婚する。
忘れられない人がいるケースはあっても、忘れられない人とは会えない。会えないから、忘れられない人となる。
でも彼にとっては、年に何度か会い、電話は頻繁にする、会える忘れられない人。
こういうケースは希だ。
核心に触れられず、来年結婚があることをさらりとふり、先輩の失恋決定でその会は終了した。
Kさんは、お手洗いに行くと言い、その会の支払いを済ませていた。(これが、女性の心を掴むんだろうな)
私もお手洗いに行き、偶然Kさんの電話を耳にした。
「今、仕事の人達と飲んでるよ。もうすぐ、お開き」
彼女に電話をかけていると思った、その時
「明日会いに行っていいか」
ん?本命がこの地にいるんだ!とわかってしまった。
だから、この地の催事に来てるのか。
ある意味よそ見もしないマジメといえばマジメだが、2人いる時点で、もうマジメじゃないのか。体の関係がなければいいのか?
来年結婚するKさんの彼女のことを考えると、なんとも複雑。
人は見た目ではわからない。
その後、彼女とは結婚するも3年持たずに離婚した。
本命さんとは、今も変わらずの関係のようだ。
そんなに想いがあるなら、本命さんと結婚すればいいのにと思うが、そうはしないようだ。
人ってなぞだ…そのなぞは私にもわからない。神のみぞ知るではなく、Kさんのみが知るということかな。つづく