表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/44

第7話 告白

ゴーレムに打ちのめされ意識を失ったアールとグレイ。

ボルターとコルトは二人を連れてどこかへと向かう。

アールは朧気に覚醒し、自身が最悪の状況に置かれている事を知ってしまう。

 中層 未探索領域


「もうこれで充分だろう! これ以上痛めつける必要はない!」

「どうせ食わせるのに何を偽善者ぶってやがる! やるならとことんだろうが!」


 誰かの声が、耳に入ってくる。

 まだ頭がはっきりしないままに、微かに意識が戻る。

 腕も足も動かない、いや動かせない……縛られている?

 目を開くが、光は入ってこない。

 何も見えない……暗い所にいるのか?


「全身が全て食われるとは限らないだろう! 食い残しに人の手による傷が残っていたらどうする!? 私はここに残るのだ、あくまで私の保身だ!」

「ッチィ。……起きたようだな。んじゃ猿轡を噛ましておくぞ、これで終いだな」


 口に何かを入れられる、布……?

 何か仕込んである、変な臭いと味だ。


「……ちゃんと染み込ませてるだろうな?」

「やってるっての。こいつなら獣が布もロープも食ってくれるさ、証拠は残らん」


 証拠……?

 嫌でも口から入ってくる異臭に吐き気がする。

 だが吐き気で、頭がはっきりとしてきた。

 状況が嫌でも解った、俺は嵌められたのか……。

 必死の抵抗をするが、腕は後ろ手に、足は腿と足首で縛られている。


「ン゛ン゛! ン゛ン゛ン゛ー!!」

「ッチ、暴れんなっての。……さっさと行こうや、もうこいつに用はねえ」

「その前に、作った地図を見せたまえ。……なるほど。これなら大丈夫だな」

「壁の加工もしてない天然物だ、安心したか? おらさっさと行くぞ、まだ終わってねえんだ」

「……先に行っていたまえ。君はここを離れるのだろう? どうせそれの換金に時間も掛かる。例の場所で落ち合おう」


 ここで、地下で、拘束して置いていかれる?

 俺はどうなるんだ?

 疑問は、朦朧としていた時に耳に入ってきた言葉から、冷酷に答えを探り出した。

『食われる』『食い残し』『食ってくれる』

 最悪の未来が頭を過ぎる、僅かな想像でさえも怖気が走る。


「……やっぱ偽善者じゃねえかよ。遅れたらこいつの取り分は無えからな」


 足音が声が1人分遠ざかっていく。

 コルトは、先にどこかへ行った様だ。


「……謝罪はしない。私は、自分が外道だと認識している。君は私を呪う権利がある」


 ボルターが淡々と言葉を吐く。

 アールは既に、暴れるのを止めていた。

 暴れても無意味だと、悟ってしまった。


「……君の最後の言葉を、私は聞く義務があると思う。……慈悲ではない、義務だと思うのだ」


 ボルターはアールの猿轡を外す。

 何を言えば?

 もはや何を言っても助けてはくれまい。

 ならばこそ、何を言うべきか?


「一言だけだ。それでもう一度猿轡をする。それで終わりだ」

「……あなたは、なぜ、こんな事を?」


 アールは動機が解らなかった。

 ボルターは真面目に金を貯めていたディガーだ、詐欺師ではない。

 アールとも面識は無く、私怨ではない。

 こんな贖罪じみた事をやっていて、悪人という事もないだろう。


「なぜ? か。……私はねアール君。……君を妬んだのだ。ちっぽけで悪辣な男だ」


 妬み……。アールは自身に問いかける。

 心当たりが無い訳でもなかった。

 幸運にもこの若さで鎧を手に入れた、只のモグラ。

 それも自力ではない、妬まれるのも当然かとも思えた。


「私は君を蹴落として、自分の利益を優先した。罪だとは思うが、恥でも愚かだとも思わない」


 誰しも少なからず、意図せずとも他人を蹴落とす。

 それくらいはアールにも少しは解っている。

 だがそれを率先して行う人間は稀である。

 誰もが持っている倫理観というものが、ブレーキをするものだ。


「昔の私はこれができずに、失敗した。……私は昔の私と決別する。……話しは、これで終わりだ」


 ボルターは再びアールに猿轡を噛ませる。

 抵抗するが、それも無意味だった。

 猿轡をしっかり確認したボルターは去っていった。

 無感情に機械の様に。


 静寂と闇のみが、アールを包み込む。

 ボルターに言われた事を考えるが、アールの倫理観では肯定したくなかった。

 利益と他者の命を天秤に乗せる事など、アールには仮定でも躊躇われた。


 時折ロープをどうにかしたり、猿轡を噛み切ろうとするが、とても無理であった。

 ロープと布が、身に食い込む痛みだけが残った。


 どれだけの時間が経ったか、まるで解らない。

 何も見えず何も聞こえない、眠る事など恐ろしくてできるわけもない。

 いつ落ちてくるかは判らないが、いつか絶対に落ちてくる断頭台に固定されているようだ。

 狂ってしまいそうな、いっそ狂ってしまいたい、その方がマシなんじゃ?

 頭の中がグチャグチャになる。

 それでも必死に正気にしがみ続け、現実逃避の甘い囁きを振り払う。


 不意に、耳が微かな音を捉える。

 死神の気配に、身が凍りつく。

 思いとは裏腹に、恐怖が聴覚を研ぎ澄まさせる。


「ガリ……ガリ、ガッカ……ガッ」


 壁か地面を削っている様な音。

 怯えて身を震わす事しかできない。

 歯はガタガタと震え、全身の血の気が引いていく。

 耳は無慈悲にも、音を拾い続ける。

 いっそ鼓膜を破ってくれと自身を呪う。


「ガカ……ブシュー……ガッカ、ブシュー」


 妙な音が混じっている。

 途端に頭が正気に戻ると共にフル回転する。

 気体の排出音、余分な水蒸気を出す音。

 蒸気機関だ!

 ()()()()()


「ン゛ン゛ン゛ー! ン゛ン゛! ン゛ン゛ーン゛ー!」


 猿轡をされていては声では無理だ。

 見つけられるのを期待するしかないのか?

 何かやれる事はないかと、アールは必死に拘束された全身を探る。

 この後もチャンスがあるとは限らない。

 尻に違和感がある……後ろポケットに何か硬いものがある。


 後ろ手に縛られた手で、痛みに構わずにポケットから『思い出の品』を取り出す。

 必死に地面に打ち鳴らして、こちらの存在を報せる。

 地獄で蜘蛛の糸に縋るように、それしかもはや頭にはない。


「喧しい。……なんだ? 誰かそこにいるのか? というかここは。……通れるのか、紛らわしいもんだ」


 愚痴を言いながら誰かがやってくる、もはや誰でも良い。

 アールの精神力も体力も限界だった。

 気付いてくれた誰かを待つこともできずに、アールは意識を失った。


「……なんだこりゃ? おいサチェット! こっちに来い。……これをどう見る?」

「直ぐに解放しましょう。……一体誰がこんな事を?」

「知らん。……はああ。私の探索ライフを邪魔しおって、糞面倒な」


 見つけてくれた命の恩人は、愚痴を言いながらもアールの命を救う。

 アールが中層の片隅に放置されてから、約半日程立ってからの事だった。

ここまで御覧頂き、まことにありがとうございます。


※こちらからは《メタ話、顔文字、ゆるい話等》となっております

※また、後書きは推敲を行っておりません、悪しからず










前回は内容がアレでしたんで後書きは自重させて頂きました、今回はまあ良いかな?と復活です

というわけでアール君は愚痴られつつも救出されます、一体だれなんでしょうねえこのディガーは?

ボルターとコルトの会話は幾らか仕込みがされてるので、そこにご注目頂ければ幸いです

救出されたアール君はこの後どうなるのか?ボルター達の企みはこれによってどうなるのか?

次回も是非ともご覧下さいませ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ