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マジカル★エクスプローラー エロゲの友人キャラに転生したけど、ゲーム知識使って自由に生きる  作者: 入栖
■2章 マジエロ★シンフォニー -美少女遊戯(エロゲ)学園の劣等生-
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89 学園ダンジョン⑦



 

 三十一層から三十三層までを抜け、ある程度分かったことは。

「敵が見えたら、近づかない」

 不用意に近づくと、戦闘が始まってしまう。逆に近づかなければ、相手も近づいてこないことが多い。

 

 残念なのは、その敵が多いことだけだ。

 

「いやぁ、マジできっついなぁ……」

 一対一での戦いならば良い。時間はまあかかるものの、勝つことはできる。しかし複数となると、クラリスさん達を相手にするほどでは無いにしろ、つらい。

 今はテンションを保っていられているが、さらにキツくなってきたら、どうなるか分からない。

 

 また想像以上に時間がかかっている事も、俺にのしかかってきている。温かい日差しがこちらを照らしているが、ここはダンジョンである。時計を確認するに、もう夕方と言っても差し支えなく、後数時間したら夕飯の時間だ。予定ではこの時点で三十五層まで行っているはずだった。

 今日は三十三層を攻略したら、休んだ方が良いだろう。予定より遅れてしまうが、元々一日多く見積もってスケジュールを立てていたから、まだ大丈夫だ。もし余らせていた一日を使うなら、多分ここだとも思っていたし。

 

 また、自分の精神に負担をかけているのは、それだけでは無い。想定以上にアイテムを消費していることもそうだ。余裕を持ってアイテムを買いそろえたつもりだった。しかしこれから先を考えると余裕はほぼ無いに等しいというか、最悪四十層前に尽きるかもしれない。

 でも消費しないと逃げ切れないこともあるから、それは使わざるを得ない。しかし場合によっては逃げるのにも手こずる。


 そして三十三層から登場するコイツによって、さらに消費が加速していくのは目に見えている。

 

 前方に現れたのは、バサ、バサと自分の体ぐらいはありそうな腕の羽根をはためかせ、こちらを見下ろすグラマラスボディの女性型モンスター『ハルピュイア』。

 ハルピュイアは三十一層から四十層で一番会いたくないモンスターである。その理由の一つはインプと同じだ。

 インプが小さくて可愛いなら、ハルピュイアは大きくて可愛いである。その顔立ちはどこか幼くもあるから、童顔で体は発育の良い大人みたいな感じと言えば良いか。

 

 多分ハルピュイアが飲み屋に行ったら、身分証を提示するよう言われる事もあるだろう。インプ、ノッカー、お前らは誰がどう見てもアウトだ。

 

 さて、ハルピュイアとの戦闘で注意しなければならないのは、いくつかある。まずは服とかいう煩わしいものから開放されたその大きい胸の挙動と、それを支える栗色のブラ…………ではなくて、いやなきにしもあらずなのだが…………。

 注意しなければならないのは、鳥のような足から伸びる鋭い爪であろう。

 

 資料や先輩から聞いた情報によれば、その足の爪をこちらに向け、急降下してくるらしい。時たま風の魔法も使うとか。

 

 ハルピュイアの対策はもちろん。

「もちろん逃げなんだよな……」

 しかし問題もある。魔石だ。ハルピュイアには火の陣刻魔石と音の陣刻魔石が有用であるはずだが、ハルピュイアの出現階層が三十三から四十層までと、かなり長い。

 単独で出現した際に、魔石を消費して良いのだろうか?


 ただでさえ馬とか蛇とかで消費が急増しているというのに、単独に対して使用して良いのだろうか。まあコイツの能力を考えれば、結論が『単独でも使わざるを得ない』になりそうだ。

 

 今回の場合は本当に陣刻魔石が効果的か調べるために、使ってしまうのだが。実験をするなら単独が一番だ。何が起るか分からないのだから、なるべく安全を確保してから、だ。

 

 下級の陣刻魔石を手に取ると、ハルピュイアに向って発動させる。

 まずは火。中級を見たからだろう、その火球は小さく頼りない。しかしハルピュイアにとっては嫌らしく、すぐさま回避を行った。

 

 速い。

 

 ハルピュイアは今まで出会ってきたモンスターの中で、一番機動力があるかもしれない。回避を行った後は、すぐさま鋭い爪をこちらに向け、下降してくる。

 まるで風を斬るように進む彼女は、さながら大きな矢だった。

 加速して凄まじい速さでこちらに来る彼女ではあったが、あまりに直線的すぎる。回避は楽そうに見えたが、ここはあえて受けることにした。

 

 第三の手を支えに、第四の手で彼女を受け止める。ガキン、と金属と金属がぶつかる音がして、からだ中に衝撃が走る。しかし、それだけだった。

 クラムボンに比べたら、コイツの攻撃は弱い。しかし別の意味で厄介だ。

 

「やっぱり、速い」

 ハルピュイアは第四の手を踏み台にして、また空へ飛び上がる。そして、今度は口を大きく開き、大声で鳴いた。

 

 思わず、舌打ちをする。まだ色々な実験が終わっていないが、すぐさまここから逃げ出した方が良いだろう、いや、もう逃げるのが遅れてしまったか。

 

 横から飛んできた矢を弾き、その方向に視線を向ける。そこに居たのはケンタウロスだった。


 ハルピュイアの一番厄介な点は仲間を呼ぶことである。もしここにパーティで魔素集めに来たのなら、それはいたって有効であっただろう。しかし俺はソロで、空に浮かぶモンスターに対して役立たずみたいなものだ。

 

 ドス、と俺の足下に矢が刺さる。魔法で作られていたのであろう、その突き刺さっていた矢は、まるで何も無かったかのように消え、土に穴だけを残した。

 先ほどから放たれる矢は、的確に俺の体を狙っている。しかしケンタウロスに気を取られれば、ハルピュイアが俺に攻撃してくるであろう。

 または追加で仲間を呼ぶかもしれない。


 戦うには明らかに不利だ。しかし、逃げ切れるだろうか?

 倒すにしてもまずハルピュイアをなんとかしなければならない。しかし空を悠々と飛ぶ彼女に、俺は原始的な投石攻撃か、消費アイテムを使うしかない。


 逃げるしか無いか。

 

 

 しかし、彼女らから逃げ出せたのは、それから三十分ほど経過してからだった。

 

 

「ハルピュイアが厄介すぎる」

 夕食を食べ終わり、淹れたてのコーヒーを飲みながら、物思いにふける。

 本来だったら三十五層を攻略し終えている予定だった。しかしどうだろうか? 今いるのは三十四層であり、そこから一歩も進んでいないというのに、就寝準備を終えている。

 

 このままではまずい。ハルピュイアに対する対策が早急に必要だ。

 分かったことは、彼女らは非常に警戒心が強い。飛んでいる彼女らを打ち落とすのは難しい。一匹だけなら余裕。そして何より厄介なのが。

 

「仲間呼びがどうにかならないか……」

 

 ゲームだったら移動しなくても経験値を呼び出してくれる、有益モンスターであるのだが、逃げることを考えると最悪のモンスターかもしれない。

 それに同族だけでは無く、機動力のあるケンタウロスを呼び出すのもまたウザったい。幸い三十七層でケンタウロスは出現しなくなるが、まだまだ先だ。それに他の階層で厄介なヤツが出てくるからプラマイゼロだし、むしろそいつらの出現が重なった階層が、非常に辛いだろう。

 

 ……逃げるのなら簡単だと思っていたのが間違いだった。

 戦闘とかほとんどしないし、逃げるだけなら余裕だろう。確かに三十層まではそうだった。

 広大なマップになるけれど、基本逃げだから二日あてとけばいいだろうなんて思ってしまった。

 

 とはいえ、それを見越してもっと早く来る事は難しかったかもしれない。それは休憩を減らし走り続けることに他ならない。ギリギリまで切り詰めれば1、2時間か……いや1、2時間は大きいか?

 

 対処として一番いいのは、音の陣刻魔石だろう。直撃させるのが大変なハルピュイアに直撃させなくても効果があるから発動した時に隙を作れる。残念な事に。

 

「残り僅かと……」

 他の魔石を交換してくれるんだったら、是非交換して欲しい。

 火以外の属性が少しずつ余っている。それらを買わずに音の陣刻魔石にすれば良かったか?

 いや、無理だな。試走できないのに、アイテムを極限まで効率化させるのは無理だ。逆に試走なしでよくここまで用意できたと思うべきだ。

 音の陣刻魔石が比較的安いからと言って少し過剰に使いすぎたか?

 

 うん、とりあえず寝よう。これ以上は明日に響く。

 

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