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マジカル★エクスプローラー エロゲの友人キャラに転生したけど、ゲーム知識使って自由に生きる  作者: 入栖
■2章 マジエロ★シンフォニー -美少女遊戯(エロゲ)学園の劣等生-
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88 学園ダンジョン⑥

 三十一層に来て思ったことは、今までの洞窟とか遺跡はなんだったのか? である。まあ以前にも同じような現象を体感していたから、そこまで大きな驚きではない。


「暖かい陽射しに、心地良い風、透き通る空、陽射しを反射する清流。ここはどこだろう?」


 問うまでもなかった。ここはダンジョンである。レジャーシートを敷いて、皆で木陰に座りサンドイッチを食べる場所ではない。……サンドイッチ? なんだか心の中がざわついているような気がするが、多分気のせいだろう。

 さて三十一層から新たに登場するモンスターで厄介なのは……。


「想定では全部だな!」


 鳥系も馬系も羊系も蛇系も、どれが出てこられても面倒きわまりない。

 一応この三十一から四十層を攻略できるぐらいの力をつけたと思っている。しかしそれはパーティを組んでいること前提での強さだ。


 一応、対一での勝負ならまず負けることは無いであろう。

 しかし敵が増えれば? 連戦になれば? 回復アイテムが無くなれば? 劣勢になることは間違いない。

 もし俺のほかにリュディ、ななみのどちらかが居れば、消費アイテムをさほど使用しなくても8割がた突破は可能だろう。二人ともいれば、突破できないわけが無い。


 しかし今回ばかりは条件的に、ソロかつ急がざるを得なかった。

 三会に入会するために必ず必要なのは成績である。それは学力、ダンジョンどちらも加味されるが、試験で高得点を取れるかといったら疑問符が浮かぶ。必死こいて勉学に励めば、あるいは良い点を取れたかもしれない。


 しかし試験には実技テストがあるのだ。


 ゲームではその実技点の試験は全て省略されており、自身の能力値に応じて点数を自動でつけられ、結果だけ表示されていた。そのため詳しいテスト内容は分からない。だからといって、午後授業だけでなく、午前授業をもサボっている俺が、良い点を取れるなんて微塵も思わない。そもそも遠距離は苦手である。


 かといって時間をかければかけるほど、三会に入会できなくなる可能性も高くなるだろう。

 そもそも瀧音は、ゲームでどういったルートを選んでも、三会に入ることはない。代わりに別のキャラクターが入会してしまう。


 上限人数がある三会には、なるべく早く、強いて言うなら伊織よりも早く入会しておきたい。

 入会した後は……とりあえず図書館のイベントを進めるか? いや、今は目の前にいるモンスターに対処するか。


 そいつの体を動物に例えるなら、馬と人間だろう。馬の下半身と人間の上半身を合体させたような姿で、ファンタジー系ゲームではゴブリンなどと並んで定番のモンスター、ケンタウロスである。

 マジエロでケンタウロスを初めて見た瞬間はいろんな意味で驚愕した。その見た目が信じられなかった。


 馬の下半身は分かる。その立派な筋肉のついた下半身は力強く地面を蹴り、人間には出せないスピードで走ってくれそうだ。

 持っている武器も分かる。弓なんてイメージぴったりだ。


 だけど、なんで上半身が渋いオッサンなんですかね。


 エロゲRPGと言えば、ケンタウロスなんて喜んで女体化させるモンスターの1種である。そのたくましい馬の下半身に、存在感溢れる大きな胸を持つ上半身が描かれることが多い。

 しかし、このケンタウロスには無かった。明らかに渋いオッサンだった。これは本当にマジエロなのか? と、自分の中に疑問が浮かぶくらいだった。


 俺は偽のゲームを掴まされたのでは無いかと、本気で考えた。あまりに不安になって、友人にメッセージを送ったり、掲示板に行って確認したくらいだ。そのときは残念な事に、俺が攻略最前線だったことを知って終わったが。


 まあその数十階層先に雌ケンタウロスが別名で出現し、非常に安堵したのは記憶に新しい。雌ケンタウロスの居ないエロゲRPGなんて、イチゴの無いイチゴミルクのようなものだ。

 さて、ケンタウロスといえば、やはり。


「武器よりも速さが問題だよな……」

 ケンタウロスは持っていた弓を構えると、魔法で漆黒の矢を作りだしてつがえる。そして俺に狙いを定め……手を離す。

 

「ふっ」

 放たれると同時に第三の手を広げる。ななみよりも遅い。それは簡単に弾くことができたが、ケンタウロスは次の矢を用意していて、すぐさま放ってきた。

 それを避けながら、実験と調査もかねて走り出すことにした。幸い現れたモンスターはコイツは一体だけだ。


「……やっぱり速い」


 単純な移動速度は、俺よりあちらに分があるだろう。また、調べてないが、スタミナも俺以上ではないかと踏んでいる。

 それから攻撃を防御しながらその場から離れるも、少し厄介なことが判明してしまった。

 移動が速く、スタミナがあるのは想定内だった。想定外だったのは。


「逃げられないっ……!」

 最終的に音の陣刻魔石を使用して、かなりの距離を離れることによって、ようやく逃げ切る事ができた。

 ゲームじゃあんなに簡単に逃げられたというのに。理由は一体何だろうか?

 考えられる可能性でパッと思いつくのは。


「フロアが関係あるか?」


 今までは何らかの室内フロアで逃げることが多かったから、逃げ切れていたのではないか?

 以前までは威嚇したあとにそのフロアから離脱してしまえば、追ってこないことが多かった。まあ、追ってくることもあるが。しかしそれでもその次、その次と進んでいるうちに、気が付けば追ってこなくなっていた。


「ここの見晴らしは最高だもんなぁ」

 かくれんぼなんてしたら、隠れる場所が少なすぎてゲームにならないであろう。

 実はこいつらには縄張りのようなものが存在していて、それから離脱しなければずっと追っかけてくるとか。その可能性はありそうだ。


 まあ、それは一つの可能性として置いておこう。

 他に可能性があるとしたら、俺が弱いからだろうか?

 とはいえ、マジエロの逃走に関係するのは、キャラクターの速度である。確かにケンタウロスは速いが、そこまで逃げられない訳ではなかった。


 しかし逃げられないとなると?


 根本的にだが、ゲームと同様に考える方が間違っているのかもしれない。ゲームでは単純に『自分の速度』と『相手の速度』の数値を使って計算し、結果逃げているだけである。


 しかし、こちらはモンスターがモンスターという一つの生物であり、彼らはその本能に従って動いているだけで、追いかける追いかけないも本能によるところが大きいのではないか?

 まあ、そうだとしたら、当たり前の事が当たり前に起きているだけなんだが。


「あー色々検証したい…………っ!」


 とはいえ、そんな暇は無い。多少の実験ならまだしも、様々な角度からデータを採取、精査するのに一体どれだけの時間がかかるのだろうか。

 とりあえず分かっていることはすぐさま移動すべきという事だ。ここに居ても、無駄に時間を消費するだけである。逃げるのも大変になってきたのだから、なるべく早く次の階層、次の階層へと進めるべきだ。


 辺りを見渡す。広がるのは広大な草原。先にはちらりと、モンスターらしき者も見える。

「実は現状って、結構ヤバイよな」

 問題はモンスターからの逃亡だけでは無い。


「このまま進んで良いのか、さっぱりわかんねえ」

 通路だったら東西南北とかで分かるから、なんとなく進めた。しかしこういった広大な平面フロアになってしまうと、俺の記憶にある二次元マップとこの三次元がうまくマッチしない。

 目印みたいな物があれば良いんだが。


「次層への転移ゲートが、入ってきたときと同じだったら少しは目印になるか?」

 確かこのフロアに入ったときは、足下が石畳になっていた。そしてその上に魔法陣があったから、この次の層へ行くためには石畳の足場を探せば良いのではなかろうか?


 では、それはどこにあるんだろうか。

 三十を超えてまだ一層目だというのに、先が思いやられる。


 とりあえず、祈ろうか。すぐに見つかりますように。

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[一言] サンドイッチ…奴隷の女の子…ウッアタマガー
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