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マジカル★エクスプローラー エロゲの友人キャラに転生したけど、ゲーム知識使って自由に生きる  作者: 入栖
■2章 マジエロ★シンフォニー -美少女遊戯(エロゲ)学園の劣等生-
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83 学園ダンジョン

 学園ダンジョンが解禁されたのは、試験開始の今日。それから学科試験で四日、実技試験一日、計五日で全てが終わるはずだ。そしてその点数集計に二日。ここまでで七日の計算だ。そして結果が張り出されるのが、八日目。


 もし俺が学年一位を取るならば、この七日で四十層を終わらせなければならない。七日、正確には八日の早朝までに全てを終わらせたならば、ランキング一位は確定だと、毬乃さんから言質も取った。


 さて、ゲームのマジエロでは、伊織ソロで突入し、出てくるモンスターをある程度倒していっても、ゲーム内日付四日で攻略できたはずである。ただしそれは周回プレイの伊織や、RTAの伊織である。間違っても瀧音幸助ではない。

 それを踏まえて今回の目標は、六日。ギリギリラインの七日ではなく余裕を持って六日だ。

 成しとげれば確実にランキング一位になることが出来るだろう。


 しかし仮に攻略日数が七日を超えたとしても、いったん戻ることはせず、四十層を目指すべきだ。


 そうすると成績上位では無くなる。だがそれよりも四十層を優先した方が良い。無論ではあるが成績上位の方にも良い点はある。

 一つ、ツクヨミポイントや特別なアイテムを貰えたりする。

 ゲームと同じならば、試験で好成績をおさめると、学園側からそれなりに良いアイテムが貰えたはずだ。また同時に大量のツクヨミポイントを貰える。

 ただし、俺個人から言わせれば、そんなアイテムやポイントなんざ、もう一つに比べたら絞りカスみたいな物である。


 二つ、それは三会(生徒会、風紀会、式部会)への入会である。三会に入るための一番手っ取り早い方法は、この最初の試験で一位を取ることである。するとあちらの方から声をかけてくれるのだ。……かけてくれるよな、大丈夫だよな?


 三会入会は非常に重要だ。いろんなイベントが進められる上に、あのダンジョンも攻略に行けるようになるし、何より三会所属のヒロイン達とお話し出来る機会が来る。イベントの方は後々来るだろう伊織にほとんど任せる予定だが。まあ、もし大変そうだったら、助けに行くのもやぶさかでは無いし……頼られたら、その……た、たしゅけてあげたい。


 ただし、その三会入会ですら、初回ソロ攻略特典に比べたらかすんでしまう。

 まあレアリティの高い物なのも仕方ない。だってゲーム一周目で狙うわけでは無く、二周目のヤツが取りに行く物なんだから。


 俺は近くにいたギョブリンを殴り飛ばすと、倒したかも確認せず、前へ前へと進んでいく。

 すでに二層もゴールは目前。一周につき一度しか来ない階層だから、マップがうろ覚えだったけれど、案外なんとかなるもんだ。

「もう次の階層か、良いペースだ」


 毬乃さんへの根回しで、学園ダンジョンに挑む際、誰にも引き留められなかったし、今のところ記憶通りのマップであるし。順風満帆である。

「後の心配は……次の階層で、だな」


 四十層攻略が失敗する要因の一つにマップがあった。マップが記憶通りならば、最短距離で次の階層へ向かえるため、とてつもない時間短縮になるだろう。逆にマップがゲーム通りでは無い、もしくは俺が忘却してしまっていたら、時間がかかること覚悟で、ダンジョンを走り回らなければならなかっただろう。


 今のところは記憶通りだ。しかし今入った次階層への魔法陣の先で、俺のもう一つの懸念が、解消されるかが決まる。


 階層移動の魔法陣から降りると、そこは前層と同じようなレンガを組み合わせた部屋だった。俺はすぐさま走り出し、そして人が7、8人ほど並んで歩けるぐらいに広い通路を進んでいく。

 そしてお目当ての者を見つけた。


「うぉぉぉっしゃぁぁぁぁ! ゴブリンだ、ああもう、さいっこう! 愛してるぜ」


「ゴ、ゴブ?」

 突然の愛の告白に驚いたのか、それとも俺が急に飛び出してきたから驚いたのか、とても困惑しているゴブリン。俺はそいつに第三の手で思いっきり腹パンして飛ばすと、その体を踏みしめ先へ進む。


 うれしさのあまり思わず告白してしまったぜ。どうやら登場モンスターも記憶と一致するみたいだ。

 一番の懸念だった、登場モンスターも同じだとすれば。


「一層から十層までは、ただのランニングコースだな」


 敵、弱い。経験値、まずい。ドロップアイテム、ゴミ。宝箱、有るかどうか分からない&あっても不要。いったいこのあたりの階層で何をすれば良いんだ?

 十層ボスまでの敵は全無視でいいだろう。


「このペースなら一日で十層行けるな……眠る時間もしっかり取れる。むしろ押し気味で攻略すべきか?」

 考えながら走っていると、こちらを見ているゴブリンを見つけた。

 彼はヤる気満々ではあったが、離れていたのでシカトして先へ進むことにした。


----

 

「疲れた……でも、十層来られた……!」


 十層のボスは以前戦闘したことのある茶葉っぱウッドゴーレムだった。しかし数週間前ならまだしも、今の俺からしたらただのでくの坊である。弱点である火の陣刻魔石すら使わず、ただただずっと俺のターンだった。


 むしろボスよりも長距離走の方がきつかっただろう。毎日のランニングの成果が、まさかここで発揮されるとは思っていなかった。単純にスタミナ増強のために走っていただけなのに。


 さて、一日にはまだ余裕はある。しかしモンスターの出ないセーフティーゾーンはしばらくない。

 今進むべきだろうか。いや、進むのは止めておこう。


 そもそも俺は一日の余裕を持ったスケジュールを組んだのだ。急いで進んで何らかのミスを犯したとして、それで撤退となったら初回四十層攻略が潰えてしまう。


 それだけはなんとしてでも避けたい。


「ゲームリセット可能なRTAだったら突っ込むんだけどなぁ」

 と一人呟きながら、寝床の準備を始める。とはいっても、簡易寝袋だけだが。


 聞いた話によると、学園ツクヨミダンジョンに一日野営することはあっても、一週間泊まり込むヤツは居ないらしい。まあ、当然っちゃぁ当然なんだけど。なんで十層おきに行き帰りできる転移魔法陣があるというのに、わざわざダンジョンに泊まるんだよ。そりゃベッドでマリアンヌと共にお休みした方がいいに決まってる。……最近は朝起きるとマリアンヌじゃなくて姉さんと、ななみがいるんだよな、マジでびびる。


 ダンジョンに六、七日泊まったらぬしとか言われるのだろうか? いやさすがに六、七日では言われないか。

 さて、簡易的な寝床が出来た。後はご飯である。昼ご飯をカットしてランニングしていたから、そりゃもうぺこぺこである。しっかり食べてしっかり寝て、テンションを維持していこう。


 俺はななみと姉さんから貰った弁当を取り出す。

 ななみからは「ご主人様のために作りました、勘違いではないです」と渡されたのだが反応に困った。姉さんは「ん」の一言だった。二人は朝早起きして作ってくれたらしい。


 貰った二つのタッパーには、どちらにもサンドイッチが入っていた。

 本当は昼に食べる予定だったのと、どんな場所でも食べやすいことを考慮して、サンドイッチにしてくれたのだろう。しかし、お腹が空いていなかったこともあり、後回しにしていたから、夕飯になってしまった。


 俺はシンプルでとても美味しそうな卵サンドが入ったケースを手に取る。これは、ななみから貰った方だ。


 茹でてから上げるタイミングをしっかり計算したのだろう、少し赤みがある半熟の卵を四分の一にカットした物を中心にはさんでおり、その周りに卵サラダをこれでもかと敷き詰め、そこにみずみずしく新鮮そうなレタスをも挟んでいる。なんてゴージャスな卵サンドなんだ。めちゃくちゃ美味しそうじゃないか!


 俺はうきうきな気分のまま、姉さんから貰った方を開く。


 そして大きく仰け反った。


 見た目はまあ、美味しそうではある。

 とげとげしい紅蓮色のソースに新鮮そうなレタスが挟まっており、単純にチリペッパーソースを使った辛みのあるサンドイッチである。見た目だけだったら、だ。


 まだ食べてはいないから予測になるが、これはそんな生やさしいソースじゃ無い。俺はおそるおそるそのサンドイッチに顔を寄せる。


 ……いや、嘘だろ? なんでだ?


 なんでサンドイッチから凄まじいエナジードリンク臭がするのか、コレガワカラナイ。ピリ辛系の臭いじゃ無いのだ。エナジードリンクなのだ。


 とりあえず、俺はななみの卵サンドを手に取る。

「うん、おいしい」


 ふわふわの卵サラダに、絶妙な塩味の半熟卵、そして新鮮な野菜が口の中で混じり、感動さえ覚える素晴らしいハーモニーを生み出している。また一つと手に取り、また一つと手に取り、すぐにその卵サンドは無くなってしまった。


 ふう、と深呼吸する。そして先ほどから凄まじいエナジードリンク臭を放つ摩訶不思議サンドイッチに目を向ける。

 もし俺の前に選択肢があるなら、食べる、Eat、Yesの三択だろう。食べない、と言う選択肢は無い。

 あの朝に弱い姉さんが、俺のために早起きする奇跡を起こしてまで作ってくれたサンドイッチだ。もちろん食べる、食べるのだが……。


 俺は震える手でそのサンドイッチを手に取る。ななみの卵サンドに比べれば、パンが異様に柔らかい。

 見た目が悪いわけではない。本来なら美味しそうなペッパーソースだ。だが臭いはエナジードリンクだ。その見た目とのギャップに俺は恐れを感じている。


 ギャップ……ギャップ。俺はなぜギャップを恐れているのだ?


 ヤンキーっぽい姉ちゃんが、実は家庭的で凄くツンデレだったら、そのギャップにやられてしまうだろう? いつもは凛としていて凄く頼りがいのあるお姉さんなのに、恋愛のことになるとマシュマロみたいにふにゃふにゃになってしまう、そのギャップにやられてしまうだろう?


 このサンドイッチだって同じだ。

 どこが同じなのかさっっっぱり分からないけれど、そう思わないとやっていられない。


 意を決して姉さんのサンドイッチにかぶりつく。


----


 なんて素晴らしい朝なのだろう。空も無い、窓も無い、おまけに空気も悪いダンジョンだって言うのに、このすがすがしさは一体なんだ?


 ふと自分を見てみれば、まるでナニカに襲われたかのように、服装が乱れていた。服ははだけ、俺の胸元はフルオープンで、そこらかしこがめくれていたりしていた。それはまるでイケメン俳優が、雑誌の表紙で乱れセクシーな姿を映しているような、そんな服装になっていた。


 俺は服を整えながら横を見てみれば、中身の入っていないタッパーが置いてあった。


 はて、このタッパーには一体何が入っていたのだったか。ただ片方のタッパーからそこはかとないエナジードリンク臭がするのだが。

 昨日何かあっただろうか?


 ただ一つ言えることは、とてつもなく疲れが取れていると言うことだ。そしてなぜか分からないけれど、俺の体はやる気にみちあふれていた。

 何があったか思い出せないけど、まあいいや。


 さあ、行こうじゃないか。今日の目標は二十層! このやる気を維持して一気に進んでしまおう! ガンガン進めるのは今しかない。


 ……二十層以降からは、どんどん辛くなってくるのだから。


先輩とリュディのおかげで凄く良い雰囲気だったのに、姉さんに全部持ってかれた。

さすがですお姉さま!


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