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マジカル★エクスプローラー エロゲの友人キャラに転生したけど、ゲーム知識使って自由に生きる  作者: 入栖
■2章 マジエロ★シンフォニー -美少女遊戯(エロゲ)学園の劣等生-
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81 学園ダンジョン突入前 先輩

この話と次の話でヒロイン成分しっかり摂取してください。ダンジョン行ったらしばらくでない(予定)です。今回ソロだもんね……。

 食事を終えて伊織と別れた後、さあ、先輩の所へ行こう! とした時だった。ふわふわのピンク髪が目に入ったのは。先輩に会いに行く途中ではあるが、久しぶりに見かける顔があったので声をかける。


「こんにちは、ルイージャ先生」

 体をびくりと震わせ、ゆっくりこちらに顔を向ける先生。

「う、うぅ」


 こわばった笑顔を浮かべていた先生だが、やがて諦めたかのように、シュンと悲しそうな顔に変わる。

「その、何でしょうか。ええと、覚悟は一応出来てます……」

 なんのかな? 俺が言葉を失っていると、先生は言葉を続ける。


「その、初めてなので……」

「急に何を言い出してるんですかね?」


 急な暴露やめてくれません? そもそも登場ヒロイン全員がそうであることは知ってるし。先生の場合は確か、初めて好きになった人に彼氏・・がいたせいで及び腰になったんだよな。いろんな意味で衝撃半端なかったに違いない……察するに余りある。


「ルイージャ様、ご主人様はゆっくり関係を進めていきたいとのことで、まずは膝枕をご所望のようです」

 突然ななみが前に出てきたかと思いきや、そんなことを言い放つ。

「えっ、その。それぐらいだったら……」


 いいのでしょうか。あたりに誰もいないな、なら俺は断らないからな!


「その、ねえ、瀧音君……私この子見たことが無いんだけど」

 ななみを見ながら困惑した様子で尋ねてくる先生。

 そうだよな、学園内をメイド服で闊歩しているヤツなんて、俺だって見たことが無い。和服とかはいるんだけどな。何だこの学園……。


「ああ、最近入学したんです」

「ええぇ、最近? え、私何も聞いてないんだけど……?」

 最高権力者まりのさんが許可出してたから大丈夫でしょ、多分。まあこの話はさらりと流してしまおう。


「しばらく会ってませんでしたが、その後の経過はどうですか?」

 ぱっと明るくなる先生。

「そうなんですよ、少し生活に余裕は出来ましたし、催促の電話とかはかかってこなくなりました。そういえばお願いがあるんですが」


 先生は桃色の髪を抑えて、はにかんでもじもじとする。

「お願い?」

「その……お小遣いを増やして欲しいなって…………」


 ななみの顔がぴくっと反応したのが分かった。そりゃ驚くよな。教師が生徒にお小遣いの増額を申し入れすれば。

「構わないんですけど、何に使おうとしてるんですか?」


 現在のルイージャ先生はお小遣い制である。学園からのお給料は先生の口座、ではなく俺の口座に入金される。そこから俺が借金返済分やら光熱費やらを引いて、使っても良い分だけ先生の口座に入れている。ネットで振り込んだときは、何で俺がこんなことやってるんだろうと思った。


「ええっとね、とてもよく眠れる枕があるらしくてね、いまならたったの……」

「はい却下。ななみ、行こうか」

「ちょっと、どこ行こうとしてるの!?」


 聞くだけ無駄だなと思っただけだよ。


「お願い、少しだけでいいから、今しか買えないらしいの!?」

「あーはいはい。安眠枕ね。安いのがありますからそれでいいですね。後で送っときます」

 ネットで注文して先生宅に届ければ良いだろう。

「それじゃダメなのっ! 今この枕を買わないとぉ!」


 それめっちゃ詐欺の手口!


「全然ダメじゃ無いです、ていうか俺十分なお小遣いあげましたよね?」

 先生は手で髪をいじりながら、舌をぺろっと出す。

「とっても良い布団があるからって……つかっちゃった……」

 可愛いけど論外である。


「クーリングオフで」


 すがってくる先生を振り払いながら、先輩との待ち合わせ場所に向う。先輩はすでに来ていたようで、着席したまま唖然とした様子でこちらを見ていた。


「あっ先輩、申し訳ないです。……遅くなってしまって」

「あ、ああ。私が早すぎただけだ。時間はちょうどだが……」

 先輩が動揺している。まあ理由は分かるが、あなたいつまでひっついてるんですかね?!

「先輩、目の前の状況ってどう見えますか?」


「不倫現場を見つけた若夫に、『別れたくないっ』なんてすがりつく妻みたいだ」


 昼ドラかな。これ明日絶対噂になってるだろうな。

「なるほど、こうすればなお良い感じですね」

 と言ってななみが先生と反対側にすがりつく。男を取り合う二人組の完成だ。これはあれだ、白そうなアルバムシリーズか、学校デイズか。


 昼ドラだな。俺は二人を払うと、ななみにルイージャ先生を任せて(押しつけて)、頭を下げる。

「申し訳ないです、変なのを連れてきてしまって」


「い、いや色々驚いたが平気だ」

 ふとななみを見れば、ルイージャ先生と何かを話している。

「ゴホン、さ、さて明日は試験だと言うのに、君は挑戦するんだろう?」

「ええ、行きますよ。まあこれ毬乃さんと、ななみ以外に話すつもりは無かったんですけどね……」


 心配かけそうだから伝えるのは止めて欲しいと言ったのに、毬乃さんたら次の日にバラしてるんだもんなぁ……。

「そうか。ふふっ。本当に行くんだな」

「ええ、行きますよ。その準備のために今日学園に来たんですし」

 欲しいものは、しっかり手に入った。学園ダンジョンに向けてすべきことは、もうほとんど無い。当日用意する物ぐらいだ。


 ははは、と先輩は心底おかしそうに笑う。

「君の破天荒ぶりには、呆れを通り越して笑いと尊敬にかわるよ」


 といって先輩は制服のポケットから緑色の巾着を取り出すと、中に手を入れ何かを取り出した。そして俺の側に近づいてくる。


 あと一歩の所まで近づくと、先輩は少し照れくさそうに美しい黒髪をさっと払い、耳にかける。先輩の白く潤いのある頬と、三日月のように弧を描く耳が空気に晒された。

 そして、まるで生まれたばかりの動物を見るような、そんな優しい瞳でこちらを見て、クスリと笑う。

「手を出してくれ」


 俺が手を差し出すと、先輩は巾着から取り出した何かを、俺の手に乗せる。そして俺の手を両手で優しく包み込んだ。


「君はさらりと言っているが、やろうとしていることは異端で、非常に難易度が高い」

「そうですかねぇ?」


「ほらっ、今だって軽薄な口調で話しているだろう。あそこはそんな場所じゃ無いんだ、かなり辛いぞ?」

「いやいや、それなりに大変だとは思ってはいるんです。同時にまあ出来るだろうとも。それにこれくらい出来なければ、最強になれないんじゃないか、なんて」

「これくらい、か。難しいな。私は戦闘ならば行けるだろうが、時間的に無理だ。モニカ生徒会長なら出来るかもしれない」


 先輩は浮かべていた笑みを消し、真剣な表情でこちらを見た。


「本当の事を言うと、私もついて行きたい。一緒に連れて行って貰いたいんだぞ」

 俺だって連れて行きたい。先輩もリュディもななみも、全員連れて行きたい。でも今回ばかりはどうしてもダメなのだ。

「まったく、そんな顔をするな。理由があるんだろう? 分かっている」


 先輩は名残惜しむように、ゆっくりと手を離していく。俺の手に乗せられていたのは見覚えのある風景が縫われた、お守りだった。

 そこに描かれていたのは滝だった。小さな滝とそれを受け止める小川。あの、美しい風景。

 俺達が初めて出会ったあの滝だった。

 その滝は私有地である。こんな場所知っている人は数人しかいないだろうし、行く人はさらに少ないだろう。だからこそ、これが店に売られているわけがない。


 手作りのお守りだ。


「君から貰った指輪を考えれば、全然価値のないものだが」

 はにかんだ笑みを浮かべながら先輩はそう言った。俺はそのお守りをぎゅっと握る。

「先輩……そんな事無いです。もし俺があの指輪五個と、このお守りどちらか選べって言われたら、俺は指輪を火口かこうに捨てたっていい」


 価値ある指輪なのかも知れない。でも俺は、先輩の大事な時間を削ってまで作ってくれたこのお守りの方が、はるかに価値がある。

「ははっ、もったいないぞ、ばかものっ。でも、ありがとう」

 俺はゆっくり手を開いて、握っていたお守りを見つめる。


「先輩、テスト近いって言うのに、ホント何してるんですか……ただでさえ俺の鍛練に付き合って貰っているって言うのに、馬鹿はどっちですか。凄く、嬉しいです」


 このお守りはかなり手の込んだ物だ。1,2時間で簡単に作れる物じゃ無い。テスト前という大切な時期に、俺の鍛練に付き合ってくれただけでは無く、こんな手間暇をかけてくれたのだ。


「瀧音……成功を祈ってる」



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― 新着の感想 ―
マジエロ世界には指輪を火口に捨てる物語は無いのかな 実際に魔法があるような世界だとああいうストーリーは逆に生まれないか…?
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