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マジカル★エクスプローラー エロゲの友人キャラに転生したけど、ゲーム知識使って自由に生きる  作者: 入栖
■2章 マジエロ★シンフォニー -美少女遊戯(エロゲ)学園の劣等生-
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79 瀧音幸助についての会議

リュディ視点

 夕食を終えて里菜カトリナさんに教える為にノートをまとめているときだった。毬乃さんからメッセージが届いたのは。曰く話したい事がある、とのことらしい。


 毬乃さんが呼び出すのは珍しい。私はすぐにノート類を片付けると、リビングに向った。

 そこにはすでに幾人かが集まっており、うち一人は花邑家にいない人だった。

「雪音さん?」


 私がそういうと、雪音さんはにこりと笑う。

「こんばんは、リュディ」

「雪音さんも呼ばれたんですか?」


 雪音さんの隣に座ると彼女は体をこちらに向けて頷く。

「ああ、そうだ。急に学園長からメッセージが来て、な」

 と雪音さんは首だけを動かし毬乃さんを見つめると、彼女はななみとの会話をやめて、こちらを見た。


「これで皆集まったわね♪」


 私は部屋全体を見つめる。室内にいるのは毬乃さん、はつみさん、雪音さん、ななみ、私、クラリスの6人である。そしてここに彼がいないことを考えれば、議題は自ずと導き出される。


 幸助のことだ。


「さて、もう察している人もいるかと思うけど、こうちゃんの事です」

 やはりそうであった。ここに居るメンバーは何かしらの感情を幸助に持っている。私も含めて。


「実はこうちゃんが突拍子も無く、非常に危険で、常軌を逸したことをする予定で有ることが判明しました♪」

 毬乃さんがそう言ったのを聞いて私は思わず眉をひそめる。


「本当ですか……?」


「そうなの。それでななみちゃん……ん、なに? この呼び方ダメ? え、さんにして? そんな他人行儀なこと……恐い目で見ないでよぉ」

 なんでななみは、私には呼び捨てか愛称で呼ばないと怒るのに、毬乃さんにはさん付けで呼ばせるんだろう?


「こほん、ななみさんと相談した結果、私達はこうちゃんを応援することに決めました」

 ぽけーっと毬乃さん達を見つめていたが、やがて正気に戻る。アイツは何かをやらかす予定らしい。それも危険なこと。


「学園長、それはいったい何なのでしょう?」

 雪音さんが聞くと、毬乃さんは笑顔で頷いた。

「ええ、試験をサボって学年一位を、それも異次元な成績を残すそうです」

 毬乃さんの言葉に私は首をひねる。


「試験をサボって学年一位って……そんなの出来るんですか?」

 すると

「……察した」

「なるほど、サボって…………その手がありましたか」


 はつみさんと雪音さんがそう言う。はつみさんの表情はよく分からなかったけど、雪音さんは納得したように頷いていた。

「じつは出来ちゃうのよねぇ」


 クラリスも気になったようで、テーブルに手をつき、体をすこしだけ前のめりにして

「それは、一体どうやって、でしょうか……?」

 そう言った。


「試験を受けていないのだから、順位表を見ることもない。それで想像するのは不可能だろう。一度でも受ければ違うのだが」

「そうねぇ、一度受ければ分かると思うんだけど。リュディちゃん。うちの学園の卒業条件は分かるわよね」


「はい。必須科目で単位を取るか、学園ツクヨミダンジョン60層を突破することですね……もしかして」

 ふと思う。学園ツクヨミダンジョン60層を突破で卒業という事は?

「ええ、多分想像したとおりだわ。ツクヨミ魔法学園の成績は、試験の点数と学園ダンジョンの攻略階層で決まるの」


 なるほど、ならばサボっても一位は取れる。学園ダンジョンに挑めばいいのだから。

「学園長、私は疑問があります」


 そういうのは雪音さんだ。


「学園ダンジョンの配点はかなり高いため、10数層も攻略すれば学年一位は余裕で取れるでしょう。しかしなぜ非常に危険で、常軌を逸したと仰るのでしょうか」

「わたしも同じ疑問。10数層なんて今のこうすけなら余裕」


 毬乃さんはそれを聞いてウンウン頷く。


「そうよねぇ、私も一年の最終目標である20層までなら今でも余裕で行けると思ったわ。でもね、こうちゃんが目指しているのはさらに深いの……」

 そう言って毬乃さんは小さく息をつく。言葉を引き継いだのはななみだった。


「ご主人様は至極軽いノリで仰いました。四十層をソロでと」


 がたんと音を立て、雪音さんが立ち上がる。

「まさかっ!? 四十層だとっ!?」

「……しんじられない」

 そしていつも無表情だった、はつみさんの顔が、驚愕に染まっている。


「その、四十層はどれくらい凄いことなのでしょうか」

 私の疑問はクラリスが代弁してくれた。雪音さんは一度深呼吸をすると、ゆっくり口を開く。

「四十層は私達二年生の目標階層だ。確かに私を含む結構な人数が攻略を終えているだろう。しかし最初の攻略で行くかというと、そうではないっ。なにより、ソロでだなんて……」

「無茶で無謀。こうすけは無知?」

「私もね無理無理って笑ったんだけどね。そしたらこうちゃんも一緒になって笑ったのよぉ……」


 すっと毬乃さんから笑みが消える。

「でもアレは本気の目だった」

「確実にご主人様は挑むでしょう」


 ななみの言葉に毬乃さんは頷く。

「ええ、そうね。もうね、一回大きく失敗してしまえば良いじゃない、なんて私も思ったわ。だけどね、どうやらこうちゃんは、ただただ叩きつぶされるつもりは無いみたい」


「ご主人様は、現在とあるダンジョンに行っています。そして異常な早さで、強くなっております。おかげで私もおこぼれに与りました」


「ななみさんの言うとおり、こうちゃんはどんどん強くなっているわ。そしてね、私は思うのよ……」

 毬乃さんはその続きを喋らなかった。でも、私は毬乃さんが何を言いたかったか理解した。


「でも、こうちゃんがしようとしていることは、もう一つ問題があるのよね」

「……わかった。期間」

 そうはつみさんが言うと、雪音さんがああ、と声を出した。


「そうか、テスト結果発表があるから、1週間ぐらいしかないのか……! 今年の学園ダンジョンの解禁は、試験初日。そこから五日でテストを終えて、集計した結果が張り出されるのが三日後。絶対に無理だ。瀧音は知っているのか? 前一緒に攻略したダンジョンよりも1フロアが大きいんだぞっ!?」

 私もなんとなく察した。一位で四十層という事は、テストが集計されて、順位に反映されるまでに、四十層を攻略しなければならないと言うことだ。


「ええ、そうね。学園生最速の記録は、モニカ生徒会長や現聖女がバックに付いた状態の、水守雪音、姫宮紫苑、そしてあの子で打ち出した、初挑戦から六ヶ月。もう破られることは無いだろうと言われている記録」

「そ、そんなに長くかかるダンジョンを一週間ですか!?」


 毬乃さんの言葉で、クラリスが驚いたように声を上げる。

「私達の時は授業などがあったから、たまにダンジョンへ挑んで帰って、数日経った後にダンジョンにといったように、少しずつ進めてったから六ヶ月だ。それでも以前の記録を三ヶ月縮める大記録だったんだ。単純にダンジョン内にいた時間だけを集計するなら数週間ではあるだろう。しかしそれを一週間? ソロで?」


「信じ、られない…………」

 雪音さん、はつみさんがこんなにも驚愕すると言うことは、相当なことなのだろう。

「私は提案したの、誰かつれてったらって。本当はリュディちゃんや雪音ちゃんやななみちゃ……イタイ、蹴らないで! ……ななみさんと一緒に行きたいんですって。でもどうしても今回ばかりはソロじゃなきゃダメなんだそうよ。理由は教えてくれなかったわ」


「ご主人様の思考は私や毬乃様では、及びの付かないような高次元……いえ、もはや異次元にあると言っても過言ではございません。だからこそ私は思うのです」

 そう言ってななみは真剣な表情で皆を見つめる。

「ご主人様なら成し遂げてくれると」

「私とななみさんは、応援することに決めました。私は一応教師だから出来る範囲で力になるぐらいだけど……」


 そう言って毬乃さんは私と雪音さんを見る。

「それでね、みんなに協力して欲しいの。試験が近いのは理解しているわ。こうちゃんの力になって欲しいの。このとおり」


 そう言って毬乃さんは頭を下げる。しかし頭を下げる必要なんてない。

「頭を上げてください。私は言われなくても幸助の力になります」

 それを聞いた雪音さんはフフ、と笑う。

「それは私も、だ」


 それを聞いた毬乃さんは頭を上げてすっと立ち上がる。そして溢れんばかりの笑顔をうかべた。

「リュディちゃんは初めての試験前なのに、ゴメンね。雪音ちゃんも」


 毬乃さんはこちらに来ると雪音さんの肩に手を置く。

「ありがとう、これからも力になってあげて。そうだわ、もしここまで来るのが大変なら、住んで良いのよ? いずれ来るんでしょうから」


 はて、いずれ来る? 何の話しだろう? と先輩と顔を見合わせて一緒に首をひねる。

「あ、そうそう、雪音ちゃん。それとなんだけどね」

「? なんでしょう」

「多分こうちゃんはあなたたちの役割を察している。だから彼は自分にヘイトを集めている感があるわ」


 それを聞いた雪音さんはきょとんとしていたが、少しして内容を理解したのか苦笑した。

「そうか、それを考えるならば、すこしだけ残念です」

「やっぱりね……でも」

「ええ、私と瀧音の関係は変わりません。むしろこれからもっと関わることになるでしょう」


 何を言っているかさっぱり分からない。取り残された私は理由を聞こうと思ったが、

「ゴメンねリュディちゃん。今は話せないの。でも貴方もすぐ知ることになると思うわ」

 先に断られてしまった。

「そうだな。それは私も保証しよう。テスト後には確実に伝えられるだろう。いやリュディなら直接関わるか」

 気になってしまうが、そう言われたらしかたがない。


「分かりました、では……そのときに伺います」

 

「さて、話は終わり。雪音ちゃんは今日泊まっていきなさい。クラリスさん、お願いして良いかしら」

「ええ、分かりました」

 そして私達は部屋から出た。雪音さんはクラリスに任せていったん部屋に行こう、考えたいことがある。



『えっ、姉さん嘘でしょ? おい、ななみ、とめ!? ちょ、ね、姉さん姉さーん! な、ななみも? っ~!?』



 あれ、さっき幸助の叫び声が聞こえたような。まあ気のせいね。


 瀧音君がやろうとしていることは、こんなにもやべーよって話です。彼はさらっと言ってますし、ゲーム2週目だと「四十層とか……ふふっ」って感じなんですけど、現実じゃこうなります。

 そして彼になにがあったかは、ご想像にお任せします。

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