75 暗影の遺跡(ショーツダンジョン)⑦
ある程度拭き終わったため、その場を移動する。そして目的でもある宝箱の前にやってきた。リュディは先ほど罠に引っかかりかけたからか、おそるおそる宝箱をあけようとする。しかし宝箱は開かなかった。かわりに宝箱の前に、文字が浮かび上がった。
『パスワードを入力してください』
パスワード? と皆が頭をひねるも、安心して欲しい。俺はパスワードを知っている。
「大丈夫。資料に書いてあったから」
なんて適当なことを言いながら、場所を換わってもらう。そしてパスワードを入れていく。
あの女のハ○ス、と。
入力を終えるとOKボタンを押す。間髪入れずにガチャリと鍵が開く音がして、その箱は自動で開いた。
皆がこちらに顔を寄せ、宝箱の中を覗きこむ。
中に入っていたのは、五つの指輪だった。赤い宝石が埋め込まれた指輪、青い宝石が埋め込まれた指輪、緑の宝石が埋め込まれた指輪、黄色の宝石が埋め込まれた指輪。そしてみすぼらしい指輪が一つである。
ゲーム通りだ。宝石の埋め込まれた4つの指輪は火、水、風、土属性能力を強化する指輪である。その能力はそれなりに……
「……凄い力」
「私は何度もダンジョンに挑戦しているが、こんなに良い物なんて見たことが無い」
それなりに使え……あれ? 姉さんも先輩も冗談を言ってるんだよな?
「本当に凄い力を感じるわね」
……学園ダンジョンを八十七層までしか攻略されていない事を考えれば、妥当な評価かも知れない。この四つの指輪はゲーム中盤までは強いから。終盤は力不足になるが。
「私の低い鑑定レベルでは、あまりよくわからない」
と姉さんは前置きし、簡単な鑑定結果を話してくれる。もちろん俺には分かりきっているが。
姉さんの説明は赤い宝石に火の力、青い宝石に水の力、緑の宝石に風の力、黄色の宝石に土の力を感じられるらしい。そしてみすぼらしいのは、よく分からないけど、この四つに比べたら格下の魔力しか無いと。
俺は話が終わったのを確認し、その四属性指輪を手に取る。そして彼女達の得意属性に合わせて配っていく。
赤みの強いルビーのような宝石がついた指輪をななみに。まあ何でも平均的に使える子だが、今は火を使うことが多いから良いだろう。
サファイアに見られる深みのある青い宝石の指輪を先輩に。水属性の得意な先輩に最適である。
深い森を彷彿とさせる、エメラルドの指輪をリュディに。風といったらリュディ。これから先もお世話になることであろう。
そしてシトリンのような黄色い宝石がついた指輪を姉さんに。姉さんが土を使えるか分からないが……一応、ね。
「俺はこれを貰おう」
そして俺が手に取ったのは残ったみすぼらしい指輪。
「えっ、幸助は本当にそれでいいの?」
「……私達がこちらを貰って良いのだろうか?」
先輩やリュディが驚いたように声を上げる。
「他の指輪に比べれば、力はほとんど無い」
姉さんの言うとおり、俺の選んだ指輪は四属性指輪に比べれば、レアリティも能力も微妙だろう。しかしこれには俺ができない、罠探知能力がある指輪だ。まあ、効果は弱いせいで中盤以降は役立たずになるし、シーフ職やななみが指輪の上位互換スキルを持つのだが。
だけど俺はこれが欲しかったのだ。
そもそもだ。アイテムは有用に使える人材が使ってこそ最高の威力を発揮するのである。ほとんど属性魔法を使わない俺が持っていたところで、宝の持ち腐れだ。
と、俺が皆から許可を貰い指輪をしまうと、姉さんがスッと手を差し出してきた。
「私はダンジョンに潜らないから」
姉さんは俺に指輪を持たせると、その手で頭をなでてくる。
……なんでなでられてるんですかね?
「……出よう」
俺達は姉さんの言葉に頷き、帰還用の転移魔法陣へ歩いて行った。
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転移魔法陣を使って戦乙女像の前に戻り、外へ向おうとして俺はふと気が付いた。
「おっと、靴の紐がほどけてる。皆、先に出ていてくれ」
こんなに暗くて狭くて空気の悪そうな場所にとどめておく理由は無い。先輩達は返事をするとそのまま外へ出て行く。
靴紐を結び終え、俺も早く追いかけないとな、そう思ったときだった。
目の前に俺の体の影が出来たのは。
後ろに何かしらの光源がある。俺はストールに魔力を込めながら戦乙女像の方を向いた。
三体の戦乙女像の中心に、光輝く光の玉が浮かんでいた。それは眩い光を放っていたけれど、やがて光は弱まり、そして三つの三角形に分割する。
それらはそれぞれの女神像の前にあった台座まで浮遊すると、その台座の上にゆっくりとおり、光が消える。
そのうちの一つは純白だった。
大事なところを隠す三角形は、ポリエステルのような合成繊維を使用したのか、光をうっすら反射する光沢があり、その周りを彩るように白いレースが付いている。また後ろはほとんど紐と言っても過言ではなくて、隠せるのかどうか甚だ疑問である。
さて、これは記憶に刻まれていた、リュディのきわどいショーツである。
そのうちの一つは薄い青だった。
それのベースとなっている布は綿素材で、全体的にしっかりとした作りになっていた。きわどさもなく、大切な部分を隠せるだろう。またそのベースの布の上は、雪の結晶を模したレースで飾られ、腰周りには白いフリルが付いている。
さて、これは記憶に刻まれていた、先輩のハイセンスなショーツである。
そのうちの一つはピンクと黒だった。
もはや手にとって触ったものだ。
さて、これはぬくもりすら思い出せる、姉さんのエッチなショーツである。
「ふぅーっ」
おちつけ、現状を整理しよう。
三つ台座には三つのパンツがある。
唾を飲み込む。
これ以上無いくらい高鳴る心臓は、限界までアクセルを踏んだエンジンのようだった。俺は自分に落ち着けと言い聞かせながら、おそるおそる出口へ顔を向ける。
そこには誰もいなかった。
次こそ瀧音強化パートに入るので、エロギャグはおあずけ(多分)です。





