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マジカル★エクスプローラー エロゲの友人キャラに転生したけど、ゲーム知識使って自由に生きる  作者: 入栖
■2章 マジエロ★シンフォニー -美少女遊戯(エロゲ)学園の劣等生-
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72 暗影の遺跡④

 ダンジョン、と言う言葉を聞いて、すくなからずの人が浮かべる印象の一つに『罠』がある。


 ローグライクゲームなんかをプレイした人々は、俺含めかなりの人が死ぬほどお世話になったのではないだろうか。

 言葉通りの意味で。

 足下で地雷が爆発したり、何らかを封印する罠があったり、はたまた落とし穴があって、落ちた先にモンスターの巣があったり。

 個人的な印象だが、理不尽な死に方をするのは大抵罠である。それまで余裕を持って進めていたのに、一気にピンチになってそのまま死もあり得る罠は、それはもう大嫌いであった。本当に大っ嫌いだった。


 高校生までは。


 しかしエロゲ界やギャルゲ、最近では漫画アニメでもそうだが、こちらの罠はある意味で至高である。エロゲ、ギャルゲ界での罠は何が良いかって、なんだかよく分からない液体やら触手のようなものに絡め取られたり、非常に扇情的なポージングをとらざるを得なかったり、果てには服のみを消化する魔物が、落とし穴の先に敷き詰められているなどで、もはや通常の思考ではいられない。


 マジエロもそれは例外ではない。エロゲらしく何らかの罠にかかれば、しっかりそのときの一枚絵(CG)が表示され、ダンジョン攻略を中断して食い入るようにその光景を見つめ、しっかり脳に焼き付けることになるであろう。


 ただし残念な事に現実である。そんなことは出来るはずもない。


 ゲームでは『失敗したぁ、やっちまったなぁ』なんて感情は微塵も持ち合わせていなかった。むしろ血眼になって罠を探し、そしてお気に入りのヒロインと共にわざと掛かりに行ったものだ。

 まあ、今は出来るわけないし、そもそも彼女達を酷い目に遭わせたくない。ただ心の奥底に『ちょっとだけ……』という感情もあり、俺はそれをなんとしてでも押さえ込まなければならないのだが。


 さて、今回なんとか足を踏み入れることが出来たダンジョン『暗影の遺跡』は、選択するルートによっては、初めて罠が登場するダンジョンになる。ただしこのダンジョンも店舗特典のパッチを適用しないと攻略出来ないし、最強キャラを作成するために必須とは言わないので、スルーする紳士も多かっただろう。

 しかし必須ではないとはいえ、初期状態(引き継ぎをせずに最初から始める)ならば、今後のダンジョン攻略が、ぐっと楽になるアイテムがいくつか眠っている。その中の一つがどうしても欲しく、ヘンタイ扱いされる覚悟でダンジョンに来たのだ。だからこそ。

 

「必ず入手しないとな……」

 『マミー』を第三の手でぶん殴りながら小さく息を吐く。マミーは地面に叩きつけられると、だんだんと体が薄くなり、魔素と魔石へと変わっていった。

 さて、マミーはどんな魔物かと聞かれれば、人間をスルメのように乾燥させたのち、顔除く全身に白い包帯が巻かれた魔物であろう。エジプトのピラミッドで埋葬されていそうで、他のファンタジーゲームでもネタに使われているミイラである。

 

 それを見て真っ先に思った事は、単純にキモイである。生気を感じられず、やや黒ずんだ顔のミイラは、それだけで精神的にクるものがある。

 また同時に、今後のダンジョンで出現する、ゾンビ系モンスターと戦うのが億劫おっくうになっている。


 マミーはまだ乾燥しているため、臭いがつらいわけではない。しかしゾンビは体中が腐っているだろうし、『臭いがキツイ』とゲームキャラ達が話題にしているぐらいだ。正直言えば戦いたくない。ただ、行かざるを得ないダンジョンに出現するので、ほぼ確実に戦闘はするだろう。


 それと現在戦ったのは人間型のマミーではあったが、このダンジョンの先や後に攻略予定のダンジョンには動物型のマミーも出現する。ゴート・マミー、ガゼル・マミー、ライオン・マミー等々だ。このダンジョンでは強い魔物は出現しないため、さほど警戒しなくても良いが。


 と俺が魔石を拾うと、近くにななみがやってくる。

「素晴らしい戦闘でした、ご主人様」

「なに、ななみの援護のおかげさ。罠探知も助かってるよ」


 実際ななみの弓での援護は助かっているし、俺が接近する前に倒してしまうことさえある。

「微力ですがお力になれたようで何よりです。ただ罠探知には自信がございませんので、過信するのは禁物かと……」


 と、ななみは申し訳なさそうに言う。しかしゲームでのななみを考えれば、罠探知率は神がかってるとしか言えない。


 そもそもマジエロでは、罠を探知するためのスキルにはレベルがあり、高ければ高いほど罠を探知しやすかった。

 ななみは罠探知のレベルが上がりやすいとはいえ、初期値は0である。シーフ系技能を所持している本職カトリナは、もちろんある程度の探知レベルがあったし、宝箱の鍵を開ける解錠スキル、宝箱の罠を解除出来る罠解除もそれなりのレベルがあった。


 初期状態のななみで八、九割程度の探知率だろうと予想していた。しかし現三層で十割の発見率を誇っているのを見るに、メイドナイトシキエディション天型に何らかの能力が備わっている可能性が浮上した。見つけられなかったが、運良く掛かっていない、という可能性もあるが。


 さて罠にかからないのは良い事でもあるが、非常に残念でもある。


 罠にかからないのだ。

 探知ミスなら仕方ないなぁ、なんて感じでエロエロになったリュディや先輩達を見る事が出来ない。

 もし罠にかかってくれるならば、今回挑んでいる暗影の遺跡のような、身に危険な罠のないダンジョンでこそかかって欲しいのだが。


 しかし、それももう叶わなくなるだろう。現時点でいくつもの罠を発見しているため、ななみのスキルレベルも上がってきたはずだ。このダンジョンは罠初心者向けといえるほど、低級ばかりしか無い。


 さて、どうやら反対側でも戦闘が終わったようで、先輩とリュディがこちらに近づいてくる。


「過剰戦力に見えるな」

 そう苦笑しながら先輩は言う。


 その通りだと思う。このダンジョンは学園ツクヨミダンジョンに当てはめれば二十層行かない程度の魔物しか出ない。店舗特典系パッチにありがちな、初期から攻略出来る低レベル向けダンジョンである。すでにツクヨミダンジョン五十層は攻略しているであろう先輩や、学園卒業の六十層をしっかり攻略している姉さんにはあくびが出るほどだろう。


 現に姉さんと先輩は俺達の経験のために、ほぼ手を出していない。俺とリュディとななみしか戦っていないのにもかかわらず、今のところピンチになっていないのだ。


「また分かれ道ね……」


 こちらに来ると、うんざりした様子でリュディはそう言った。

 目の前には二つの道。すでに何度も行き止まりに行き当たってきたから、リュディも少し疲れ気味である。次の階層に進んだら少し休憩するのも良いかも知れない。


「どちらになさいますか?」


 ななみにそう問われても俺にはなんとも答えようがない。このダンジョンは、挑む度にフロアが毎回変わるダンジョンだから分からないのだ。

「どっちでもいいかな……じゃあ右で」


 誰も『こちらに行きたい』という意思がなさそうだったので、とりあえず適当に決めて進んでみる。少し歩いて分かったが、どうやら当りだったらしい。そこには下層にすすむ階段と三匹の魔物がいた。


 現れた魔物は全て同じ種類であった。見た目はと言うとトカゲをそのままデカくした『コモドオオトカゲ』を、さらに少し大きくしたような姿と言えば良いだろうか。

 このダンジョンで出るハ虫類は『バロンオオトカゲ』のみなので、コイツがバロンオオトカゲなのだろう。


 どうやらこちらに気が付いていないらしい。すぐに動いたのは、リュディとななみだった。リュディはすぐに魔法の詠唱を始め、ななみは矢にエンチャントをすると、引き絞りリュディの魔法が完成するのを待つ。俺はリュディの前に立つと、リュディの魔法が発動するのと同時にそこから駆け出した。


「ストームハンマー!」


 リュディお得意の中級最上位魔法が後ろから放たれると、三匹のうち、中心にいたバロンオオトカゲが衝撃音と共にその場でバウンドする。そしてその後着弾点から突風が吹き荒れるも、体重が重いからか、残り二匹はびくともしなかった。マミーだったら簡単に吹き飛ばされ、そのまま魔素に変わってしまうこともあったのだが、バロンオオトカゲには効かないらしい。


 しかし追撃はすぐに行われた。それをしたのは、ななみだった。彼女のエンチャントした矢は走る俺の横を通り過ぎ、右側のトカゲに突き刺さる。


 怒っているのだろうか。矢の刺さったトカゲは人の頭ぐらいなら噛みつけそうなほど大きく口を開き、ギャァガヤァなんて叫んでいる。口からはよだれと血が混じった液体がしたたり、地面に小さな水たまりを作っている。


 そんなトカゲに無情なほど多くの矢が横から飛んでいくと、その開いた口に突き刺さる。ななみがさらに追撃しているのだろう。


 その様子を見て俺は左側のトカゲに向っていく。左側のトカゲはこちらをじっと見て動かない。そしてほんの少し身をかがめていたので、なんとなく嫌な予感がして俺は第三の手で壁を作る。


 それと同時だった。

 バロンオオトカゲが口を開けて、頭からミサイルのように飛んできたのは。その短足にどうしてこんなに力があるのだろう。


 用意していたから良かったものの、心臓に悪い攻撃だ。

 弾丸のようにこちらに飛び出してくるし、その開かれた口からは糸を引く唾液と、反り返った鋭い牙が見えるのだ。あの勢いで噛まれたら腕が持って行かれそうである。

 またゲームでバロンオオトカゲは毒持ちだったから、噛まれたらすぐさま姉さんにお願いして、解毒して貰わなければならないだろう。


 第三の手で弾かれたトカゲは、尻尾でバランスをとりながら地面にしっかり着地した。俺はまた飛びつかれないように、すぐさま第四の手で体を地面に押さえつける。そして押さえつけた手の上から、第三の手を何度も叩きつけた。


 道路で体の一部を車に轢かれたトカゲと言えば良いだろうか。体が半分つぶれたトカゲは、やがて魔素と魔石に変わっていく。


 リュディのストームハンマーを受けたトカゲも、ななみの矢を受けたトカゲも同じように魔石に変わっていた。


 俺達は魔石を回収すると、下の階に降りていく。



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