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マジカル★エクスプローラー エロゲの友人キャラに転生したけど、ゲーム知識使って自由に生きる  作者: 入栖
■2章 マジエロ★シンフォニー -美少女遊戯(エロゲ)学園の劣等生-
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63 薄明の岫③


 火車は今までのモンスターの中で一番の強敵だったと思う。速さ、攻撃力は今までの中で圧倒的で、しかも火の魔法まで使用してくるときた。


 しかし、である。火車の火の魔法はしっかり水属性エンチャントのストールで対処出来たし、速さも、一つ一つの攻撃の重さも、普段戦っている人達に比べたら天と地の差がある。

 それに戦法も至って普通の魔物的で、こちらが驚くことをしてこなかった。


「まあ、当然の結果だった。そういうことだな」

 俺は手に取った魔石をじっと見つめる。


 火車が何度もリポップ(魔物などのオブジェクトが消滅し、一定時間後に再び現れる)すれば、稼ぎにも有効なんだが、ここはリポップしない。ダンジョンに再突入してもダメだった。

 魔石をしまうと、俺は目的の『者』がいるはずの奥へ進んでいく。


 奥に進むとあったのは人一人が余裕で通れそうな扉だった。俺はその扉の四角い部分に手を触れる。すると触れた場所から扉の四方に青い光が走り、プシュゥと音を立てながら横にスライドしていった。


 中に入った感想を上げるとすれば、これはもう。

「玄関だな」

 靴脱ぎ場に、靴おき、広がる廊下。ここから見える範囲でも扉がいくつかあって、このどこかに彼女はいるだろう。


 こぢんまりとした靴脱ぎ場で靴を脱ぐと、フローリングに足を乗せる。

「うっそだろ……」


 足を置いたところに、くっきり痕ができている。どうやら余りに利用していなかったせいで、埃が積もっているようだ。少し悩んだが、土足のまま上がることにした。

「こりゃまた、結構なお部屋で……」


 とりあえず目に付いた扉を開けるとそこに広がっていたのは、生活感が溢れていた一室だった。

 壁にはしっかり壁紙が貼ってあるし、埃まみれになっているがベッドがあるし、魔石のライトもある。俺はベッドの横に置いてあった本を手に取る。何と書いてあるかは分からない。俺はその本を収納袋(疑似アイテムボックス)へ乱暴にしまうと、辺りを見渡す。そしてベッドの横にゴミ箱があるのを見て、まさかな、とベッドの下をのぞき込んだ。


 希望的観測だった。娯楽作品でも形骸化してしまった保存場所である。故に見つかる可能性が高く、だからこそ他の場所にしまう者は多いだろう。妹が居ればなおさらだ。


 歴史的文化財を扱うかのように、おそるおそるそれを取ると、フッと息を吹きかける。黒色の髪の女性、開放感溢れる服装、扇情的な表情。間違いない。


 これはエロ本だ。


 逸る鼓動を必死で抑え、ぺらり、ぺらりとページをめくる。

「ふむ……イカンな、誠にイカン」


 目頭を押さえ、精神を保つ。心の中で般若心経らしきお経を唱えながら、心を落ち着かせると、俺はその本を丁重に収納袋へしまう。そして深呼吸するとドアを開け隣の部屋へ向った。


 そこにあったのはテレビのような物や、透明な柱だったり、フリスビーのような機械など、今まで日本でもこの世界でも見たことがないような物ばかりだった。


 俺は適当に持って行けそうな物を回収しながら、次の扉に手を伸ばす。

「うっそだろ、すげぇな……」

 扉の先は、これまた別世界だった。

「洞窟、家と来て……こんどは草原か」


 ダンジョンを調べているときに見つけた格言がある。『ダンジョンとは何かを考えることは、死とは何かを問うようなものだ』というものだ。初めて見たときは『ふーん』といった反応しかしなかったが、ここまで常識をぶっちぎった超常世界を見せられてしまえば、確かにな、と納得してしまう。


 広がる草原に、広がる空と登り始めた太陽。肌をなでる少し乾燥した風、香る草と土の香り。

 ふと後ろを見て、さらに驚いた。

「ど○でもドアかよっ!」


 そこには俺が入ってきた扉が有った。有ったのだが、その扉は広大な草原の中で、唯一の人工物かのように、ぽつんと立っている。本当に扉だけしか無い。しかも扉の先は、見覚えのあるほこりっぽい廊下。俺はドア枠の外からと内からと手を出したり入れたりしてみるも結論は意味不明現象としか言い様がない。


「ど○でもドアだな……」

 俺はドアを調べるのを止め、もう一度辺りを見渡す。

 薄く青い空にはいくつかの雲が浮かんでいた。登りかけた太陽が、その雲の隙間から、薄明光線で地面を照らしている。


「きれいだよなぁ……薄明光線が『天使のはしご』とか『光のパイプオルガン』なんて言われるのも納得だよ……ん?」

 薄明光線が照らす先を見て、思わず言葉を止める。

「あそこだけ草原じゃ、ない? しかも何かある」

 もしかして、と俺は駆け出した。


 光の先にあったのはよく分からない魔法陣が書かれた石畳と、楕円形の何かだった。それが何であるかは分からない。パッと見た時は巨大な卵かと思った。しかし、卵は空中に浮かぶだろうか。

 その卵みたいなのは大きさは俺の身長ぐらいはあって、よく見ると毛みたいなのが生えている。その卵らしき物の下に落ちている羽根を見るに、生えているのは毛ではなく羽根なのだろう。


「なんかマジエロと見た目が違うんだが……多分これだよな?」

 薄明光線に照らされているその卵らしき物に、そっと手を触れ、押してみる。ウサギを触ったかのようにふわふわなのだが、強く手を押し返す弾力性もある。


 俺はゲームの主人公がやったように、自身の魔力をその卵のようなものに込めていく。初めは不安もあってちょろちょろだったが、中盤辺りではぱっぱと魔力をどんどん込めていく。しかしなかなか変化が見られない。


「ここ最近でこんなに魔力を消費したのは初めてだぞ……?」

 日々の鍛練のおかげか、近頃の魔力の成長は著しい。毎日毎時エンチャントを維持できるようになってから、寝るとき以外維持しているし、クラリスさん達との模擬戦では結構消費もしている。しかしこれほど減ったのは久しぶりである。それでも卵のようなものは、未だ俺の魔力を吸い続けている。


 そろそろ本格的にヤバイ、魔力回復のアイテムを持ってくるべきだったかと思い始めた頃、変化は訪れた。


『×□▲○-魔力登録が完了しました-|*”#$%&’(』

「うおっ」


 いきなり頭の中に声が聞こえ思わず手を離し、卵の様子を見守る。しかし卵の様子はそれから変わること無く、いつの間にか光り輝いていた魔方陣から、透過ディスプレイが現れた。俺はそのディスプレイを見つめ、混乱する。

「読めない…………」


 と、俺が呟くとディスプレイの文字が消える。なんだなんだと思っていると、今度は日本語で文字が表示された。


--

 型を選択してください

 ・春型

 ・夏型

 ・秋型

 ・冬型

 ・天型

--


 その表示を見て思わず首をひねる。記憶が確かなら、ここの選択肢は四つだ。そしてtype-1、type-2、type-3、type-4と英語表記だったはずだ。ただゲームでの設定内容と照らし合わせれば、春、夏、秋、冬は1、2、3、4と一致するのではなかろうかと予想できる。しかし。


「天型ってなんだよ……明らかに一個多いぞ?」

 物理主体の主人公を使っていたときは、冬型に該当するであろうtype-4を選んでいた。が、

「普通に考えたら『冬型』なんだけど……俺の心は『天』にしろ、って言ってるんだよなぁ」


 新しい物を見るとついつい試してみたくなる。お菓子とかの新商品って言葉に弱いんだよな、大抵微妙なのに。

 俺は指で『天型』の欄に触れる。そして『本当によろしいですか?』の問いに『はい』と答える。

 するとどうだろう。その卵から、はらりはらりと羽根がその場に落ちていく。その羽根は地面に触れると、羽根全体が光り出し、小さな粒子となって消えてしまった。


 また羽根が抜け落ちた場所からは光があふれ出し、コンサートやライブ会場でありそうなレーザーのように、辺りを照らした。


 やがて羽根の落ちる勢いは速くなっていき、それに合わせて光が強くなっていく。そしてあまりの輝きに直視出来ず、第三の手で顔の前をふさぐ。そして光が収まるのをじっと待った。


 目も開けられない程光っていた時間は、一分もなかっただろう。第三の手の影から、落ち着いたのを見計らい卵を見つめる。しかし卵は無かった。そこに浮かんでいたのは、メイド服を着た女性だった。


「視界良好。AA端末所持確認。時間を取得します」


 銀髪に近いプラチナブロンドを払うと、彼女はポケットから取り出した機械に何かを打ち込む。すると彼女の前に透過ディスプレイが出現し、文字らしき何かが流れていく。


「A&A商会への接続……失敗。ローカルネットワークでの取得……失敗。ダンジョンネットワーク完全消失。ダンジョン外状況から時間を推測」


 彼女の前に浮かんでいた画面が消え、紫色の瞳がこちらを向く。


「こんにちは、ご契約者様。私はA&A商会製 MKS73(メイドナイトシキエディションセブンスリー)です」



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