151 桜瑠依(さくらるえ)③
ごめんさい短いですorz
長い沈黙の後、彼女は呟く。
「ハッピーエンド、ね。封印が解けるまであと少し。あなたに……いえ、あなたたちに何が出来るかしら」
彼女が言い終えると、だんだんと体が薄くなり……そしてゆっくり消えていった。
「消えたのう……」
ポツリと呟く紫苑さん。
すぐに我に返り行動を開始したのはベニート卿だった。
「フランツィスカさん、会長を呼び出してくれないかな? 水守さんはステファーニア様を、紫苑ちゃんは図書館入り口を封鎖」
すぐさまツクヨミトラベラーを取り出し動き出す彼女達。またベニート卿自身もどこかへ連絡を取っているのか、何やら文字を打ち込み始めた。そして伊織もどこかへ連絡を取っている。
俺はそれを横目に禁書庫へ向かって歩いていった。
「瀧音君、先に行かないでね」
ベニート卿はツクヨミトラベラーに視線が向いているが、しっかりとコッチの様子も確認していたらしい。
「大丈夫ですよ、様子を見るだけです」
ベニート卿の言葉に返事をして歩いていくと、ななみが隣に来る。
「ご主人様、私の疑問に答えて貰ってませんが?」
「……やっぱ突っ込まれたか」
あんなことがあったし流してくれるかな、なんて希望的観測してたけど、そりゃそうである。
「ご主人様は天使がここに居ることを知っていましたよね? なぜ今回も知っていたのですか?」
ここ最近はななみと行動を共にして居ることが多かった。だからななみは疑問に思ったのだろう。それは今回の事だけではないはずだ。大抵、俺は未来を見据えて行動しているから、それも加味して言っている。
「詳しく言うと難しい話になるんだが、簡潔に言うと元々知っていたからだな。この件に関わる話じゃなくなるから、終わってからにしよう」
と俺が言うと驚いた様子でこちらを見た。
「えっ、話してくださるんですか?」
「今回の件が終わったらな」
そう言ってチラリと後ろを見る。ななみならこれだけで伝わるだろう。
後ろからはリュディと結花がこちらに向かって走っていた。
リュディは俺に追いつくと肩に手を乗せる。
「幸助、雪音さんが行くなら私も行くから少し待っていろ、ですって」
「なんで俺は先輩に突撃すると思われてるんだ……?」
「今までのことを顧みた結果じゃないですかー? 瀧音さんならやりそうと思いますし」
そんなに信用ないだろうか。いやないか。
「もちろん行くなら皆に来て貰うつもりだったさ……って先輩? もう良いんですか?」
「ステファーニア様からすぐに返信が来るとは思えないからな」
それよりも心配なことがあるからな、だそうだ。
結花は俺を追い越すとドアの前に立つ。そこには関係者立ち入り禁止の文字と円に斜線を引いたマークがあった。
「それにしても、ここって普通に開くんですか?」
明らかな立ち入り禁止だが、そんなのお構いなしとばかりに、彼女は開閉ボタンに手を触れる。まあこんな状況でそんなの気にする人もいないだろうが。
どうやらロックは解除されているようで、まもなく扉は開いた。
「開いたわね……見た感じは普通の書庫だわ」
リュディはそう言って中をじっと見つめる。
彼女の言うとおり、パッと見は普通の書庫だ。しかし普通の書庫にはないであろう物も、そこには存在して居た。
「意外と広い、な。そして……アレがダンジョンの入り口か」
奥にあるのは転移魔法陣。あそこが図書館ダンジョンの入り口であろう。
先輩と結花が室内に入り、その転移魔法陣に向かって歩き出すとそれは起こった。
「皆様気をつけてください……何か気配を感じます」
ななみが魔法陣を見つめながら武器を構えると、先輩もすぐさま薙刀を構える。一泊遅れて結花も武器を構えた。
最初に気がついたのは俺だと思う。いや、どこかで来ると思っていたから当然なのだが。
「石像だ、奥の石像が動いているっ」
俺が叫ぶと皆の視線は一カ所に集まる。
魔法陣の更に後ろ。そこにあった悪魔を模した石像二つが、重い岩を引きずるかのようにゴゴゴゴと音を立てながら、ゆっくりと動き出した。
その見た目を簡潔に言えば、ゴブリンを少しだけイケメンにしたような顔に、大きな二本の角を持つ銅像だ。また背中にはたたまれた翼がある。
「ガーゴイル……物理攻撃が得意なモンスターですね」
ななみはそれを見て瞬時にモンスターが何かを判断する、
ガーゴイルはそして背中についていた石の翼を広げると、まるで大声で叫ぶかのように口を開く。どうやら牙が生えているようだが、かみついてくるのだろうか。
「声はでないんですねぇ~」
そういって身体強化をする結花。特に緊張した様子はない。
「先手必勝だな、ななみ」
ガーゴイルの動きを見て真っ先に思ったのは、飛ばれると面倒そうである。
ツクヨミ学園ダンジョンでは、いつもいつも飛ぶモンスターに苦戦した。
今回はまあ皆がいるからそう深く考えなくても良かったかもしれないが、飛ばれる前に倒してしまうことに越したことはないだろう。
俺が走り出すとすぐにななみは察してくれたようで、翼を広げ飛び上がる寸前のガーゴイルに矢を放ってくれた。
一直線に飛んでいったそれは着弾と同時に爆発する。
いいタイミングの攻撃だ……と走りながらそれを見ていたが、リュディは焦った様子で叫ぶ。
「ちょっと、ここは書庫よ! しかもどんな本があるか分らないのに!」
「あ」
思わず声が漏れる。言われるまで気がつかなかったが、ここは禁書庫である。
「……いや大丈夫のようだ」
先輩は爆発後の様子を見て、もう一匹に水球を放っていた。確かに本棚や本が散らばった様子はない。
少し焦ったが気持ちを切り替える。
落ちてきたガーゴイルに向かって第三の手を構え、一回転しながらそいつを思いきりぶん殴った。
ななみの攻撃でひるんだガーゴイルは、ただの的である。
ガーゴイルは勢いよく本棚に激突するも、本棚は崩れる様子はない。
コレならば思い切り暴れても良いだろう。追い打ちをかけようと走り出そうとしたが、ななみの叫び声が聞こえ足を止めた。
「転移魔法陣の様子がおかしいです。皆様ご注意を!」
ベニート卿や伊織君達は次話で参戦しますぜ。
次回間に合えば明日、駄目だったら明後日更新しますです。