146 ラジエルの書
お久しぶりです、音信不通で申し訳ございません。
ツイッターでさらっと呟いていた通りです、今は落ち着いてるので更新頻度は増えるかと思います。
リュディ視点
「ラジエルの書ですか?」
私と結花ちゃんは顔を見合わせる。
「伝説的な話なら知ってるけど……。あっ、もしかしてお兄ちゃんゲットでもしたの? 見せて見せて~」
結花ちゃんは笑いながら冗談交じりにそう言った。
しかし笑顔の結花ちゃんとは対照的に、伊織君の表情は晴れない。
「持ってないよ、でもそれが実在しているかもしれないと言ったらどうする?」
それを聞いて結花ちゃんが真剣な表情になる。
もしラジエルの書が実在するのだとしたら。
「最悪の場合戦争になるわね」
伊織君は頷く。
「だから僕は情報を共有したいんだ。もしかしたら戦争とは別でやっかいなことになるかも知れない」
戦争とは別にやっかいな状態? それは一体何だろう。
「……お兄ちゃん達ほど知識がないと思うけど、ラジエルって有名な天使よね」
「私も結花ちゃんと同じくらいの知識しかないと思う。天使の中でも神に近い存在で、世界の秘密を知り尽くしていると言われる大天使」
「二人の言うとおり、ラジエルは知識の大天使だ。その大天使が持つラジエルの書にはありとあらゆる事が書かれている。世界の理さえも」
私は頷いた。たしかその、
「ラジエルにそのラジエルの書を与えられた人が居たのだけれど、ラジエル以外の天使達がその貰った人に嫉妬しその本を奪って捨ててしまうのよね」
私がそう言うと結花ちゃんは頷く。
「結構昔に読んだから……うろ覚えなんですけどー、そのラジエルの書を読んだ人は得た知識で世界征服を企むんですよね。あれ、捨てられた本を入手した人が暴れるんでしたか?」
「調べてみたんだけど、結花の言うどちらの説も存在するよ。大抵捨てられた本を入手した人が、世界に対して何かしらアクションを起こしている説が多いね」
へえ、と私は頷く。私が知ることは、ラジエルの書を入手した人が莫大な力を得る、世界征服を企む人が居た、そんなところである。
誰が企んだとか、色んな説があるとかは覚えてすらいなかった。
多分法国の人でもない限り私と同じぐらいの知識の人が大多数だろう。
「お兄ちゃんは実在するかもって言ったよね? そのラジエルの書が?」
「うん。もしかしたら実在するかも、って思ってる」
それを結花ちゃんは抑揚のない声で「へー」と返事した。
「ねーお兄ちゃん。ちょーっと聞きたいんだけど、実在するだけならわざわざ私たちを呼んだりしないよね」
結花ちゃんはもっと重要な話があるんでしょ、と言いたいのだろう。
また、早く本題を話せとも言っている。それを理解しているのか、伊織君は苦笑した。
「その本は実在していて、それが置かれている場所はツクヨミ魔法学園の敷地内だって言ったらどう思う?」
一瞬話が理解できない。
「この学園に!?」
「えっ嘘でしょ?」
伊織君は神妙な面持ちで頷く。
「幸助君から直近で紹介された数個のダンジョンには、僕たちが成長するために必要なアイテムや、戦うのに手頃なモンスター達がいた。だけど」
「だけど?」
私は問うと伊織君は息を吐く。
「そのダンジョンらの奥には、ほぼ必ずと言って良いほど天使ラジエルとラジエルの書に関する何かしらの情報やアイテムがあったんだ。どこにあるかの情報も、ね」
伊織君は話を続ける。
「文献だったり、その当時使われたアイテムだったり。形態は様々だったんだけど。それをさ、幸助君に見せながら言ったら……『マジかよ』って言いながらにやって笑って。そしてすぐに話を流してまともに取り合ってくれないんだ」
結花ちゃんがジト目になっている。私も、同じ思いだ。
「幸助君って、くだらないことでもしっかり返してくれるんだよ。でもなぜかラジエルの事に関しては何も言わない」
「……確信犯ね」
「確信犯ですねー」
「ふふっ、僕もそう思う」
そう言って伊織君は苦笑する。
「それで文献には何が書かれていたの?」
「色々書かれていたよ。昔に起こった出来事、ラジエルについてとか。それで、いくつかの文献を信じるなら、そのラジエルの書には封印がされているらしいんだ」
「封印?」
「うん、封印。あまりに危険な物だから封印が施されたんだって」
仮にここがトレーフル家だとして戦争の火種になり得る物を、ぽんと置いておくことはあるだろうか。まずない。処分なり封印されていてもおかしくはない。
「しかしその封印がもう解けてもおかしくない時期なんだ。封印が解除される前に再封印をしなければならない。そんなことが書かれていたんだ」
ただ、と伊織君が話を切る。
「僕はちょっと疑問なんだ。なぜ処分ではなく封印だったのか?」
「そうね、そんな危険な物なら処分してしまえば良いのに」
私はそう言う。結花ちゃんを見ると難しい顔で何かを考えていた。
「処分出来ない理由があったんですかねー?」
それは一体何だろう。
少し考えて見るも、情報が少なすぎる。ただ言えることは。
「処分なり再封印なりできるなら、した方が良いと思う。としか言えないわね……」
「うん。僕もそう思って先生達に話をしようかなって思っていたんだ。けれどね、ちょっと待って欲しい」
「ねえ……お兄ちゃんは、ラジエルの書がどこにあるか詳しい場所は分かってるの?」
「そう、それなんだ。位置的には学園辺りなんだけど、詳しい場所が分からない。あればその場所に行って現物を見るんだけど……」
しかもだよ、と伊織君は話を続ける。
「根本的にその情報が本当に正しいかも分らない。ただ、ダンジョンで入手した情報は、図書館とかにあるおとぎ話とは違い、全て話が一貫している。だから本当にありそうだと思うんだ」
「うん……ダンジョンで手に入れた資料だし、お兄ちゃんの言っていることも分る」
「あとね、僕が本当にその資料を正しいのかと疑問をいだく理由の一つに、その文献には天使ラジエルが堕天したという情報があったんだ」
「ラジエルが堕天した?」
「そう、堕天。ラジエルの書を持ったまま堕天して暴れ回ったっていう文献があったんだ。でもラジエルは大天使って世界のおとぎ話とかには残ってるじゃないか。だから本当に堕天したのか疑問なんだ」
ただ……と伊織君はため息を吐く。
「幸助君から紹介して貰ったダンジョンで得た文献は一貫して、ラジエルがラジエルの書を携えて暴れ回ったように読み取れるんだ」
それを聞いた結花ちゃんは眉間に皺を寄せた。
「……ねえ、お兄ちゃん。もしかしてラジエルの書ってラジエルと一緒に封印された、って事はないよね?」
「うん。僕が最初に言ったのはそのことなんだ。戦争ではなく、やっかいなこと」
もし堕天していて一緒に封印されていたのだとしたら。
「封印が解けて暴れ回る、襲いかかる」
「それも場所が正しければこの学園でって事ですよね? えぇー?」
「うん、その可能性があると僕は思っている。ただ本当にそうなのかまだ分らない。情報が足りないんだよね……今オレンジ君や加藤さん達と手分けして集めてるんだ」
そう言って伊織君はため息を吐いた。
「これが僕の妄想であればいいんだけど」
果たしてそれは妄想で終わるだろうか。
「残念だけど伊織君の予想は当たっていると思う」
結花ちゃんと伊織君の視線が私に向く。
「ラジエルに関して何かしらがあるわ。また学園が関係しているとも思う。封印が解けそうで時間がないとも」
そして。
「幸助は何かを知っていて既に行動しているわ」
「……既に行動している、ですかー?」
「ええ、それなら以前の幸助の行動に納得がいくから」
以前、私たちが彼女と会った時に彼は欲した。私はなんでそんな物を必要としているのだろうと思ったのだ。それと今回の話を合わせれば、何か確信を持って行動していると思う。
「幸助やななみがはぐらかすなら、この際置いておきましょう。二人に聞かずに大きな情報を得る方法ならある」
後で幸助には尋問して吐かせるけど。
「私たちはあの人に聞けば良いのよ。私や結花ちゃんならすぐ聞ける」
そう、聞けば良い。大きな知識があり、学園の事についても詳しいであろう彼女。
「毬乃さん、花邑毬乃学園長に」
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