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145 効率的魔素集め

遅くなって申し訳ないとしか言えない。


リュディ視点

(スキル名、魔法名は後ほど変更するかもしれません)

 幸助がおかしなことをするのは、いつもの事である。


 それは付き合いが深い人全員が同様に思っていることだろう。いや式部会に入会した今、学園生全員がそう思っている可能性もある。それほど式部会という組織が異端であるから。

 

 しかし付き合いが深ければ深いほど、彼の突拍子のなさと、行動の大胆さと、スケールの大きさに驚愕するのだ。

 

「魔素集めをしよう」


 幸助が言ったことは学園生の誰もがする、至極一般的な事だった。いや学園生だけでなく冒険者や騎士もする、本当に一般的な事柄だと言って良い。だから私はなんの疑問を持たず、良いよと答えた。


 言い訳をすれば、そのときの私は疲れていた。


 幸助と一緒にダンジョンへ行って、将来の宝物になるであろう時間を過ごした次の日。

 はつみさんにお願いして、昨日得たスキルを有効に使えるよう戦闘訓練をした。もちろん、魔力切れ寸前まで。

 そしていつものように幸助に魔力を補充して貰いつつそんなことを言われたら、深く考えないのは当然だと思う。そう、あのおかしい魔力贈与をして貰いながらだから。


「もう、瀧音に関しては何を言って良いのか分からないな……こんな方法で魔素集めをするなんて……」

「考えるだけ無駄ですよぉー。だって瀧音さんって、瀧音さんですし」

 驚愕しているのは私だけではない。一緒に来た雪音さんや、結花ちゃんもだ。ただななみに関してはよく分からない。彼女の様子から見るに、驚いているように見えない。むしろ、ご主人様なら当然ですねとばかりだ。


「最近『普通』と『異常』で分けるのではなくてぇ『普通』、『異常』、『瀧音』さんで分けるべきだと思ってますし。あ、瀧音さんの所はななみさんでも良いかもです」


 私と雪音さんが同時に苦笑する。散々な言いようだが、否定出来ない。


 と私達が話をしていると、不意に雪音さんが真剣な表情をした。それを見て私と結花ちゃんは状況を察する。

 すぐさま私と雪音さんは魔法の詠唱を初め、結花ちゃんが荷物からアイテムを取り出す。

「おーい、連れてきたぞ」

 現れたのは幸助だ。彼の後ろでは弓を放ちながらこちらに近づいてくるななみ。


 幸助とななみが連れてきたのは、魔物の大群だった。それも、どこから引き連れてきたか分からないくらい大量の。

 

「いくわよっ」

 私はそれに向かって魔法を発動する。

 その魔法は中級魔法の一つである。確かに元々威力は高い魔法ではあった。しかし先日取ったスキルによって、その効果は信じられないモノに変化する。


『敵魔力吸収・魔法強化』

 

 なんでも一度の攻撃で、巻き込める敵のモンスターが多いければ多いほど威力が上がるスキルらしい。ただし効果を最大限発揮するためには、いくつかの条件が重ならなければならない。しかしそれは幸助が消費アイテムと適した場所を用意してくれたおかげで解決している。


 そのスキルの絶大な力は、魔法を使った私が驚愕するほどだった。

 

「ウインドストーム」

 ここで放つのは竜巻を起こす広範囲に効果がある魔法。

 

 本来ならそれは風圧で吹き飛ばし、敵を壁や地面にたたきつけるような、そんな魔法だった。

 しかしコレはどうだろうか。多数のモンスターを巻き込み威力が上がったそれはもはや別魔法だ。たとえて言うなら、竜巻の中で名刀が縦横無尽に舞っているのではないか。そう思うような威力。

 だってモンスターがバラバラになるなんてあり得ない。


 魔力を纏った羽に守られた鳥のモンスターも、堅い甲殻を持つ虫のモンスターも、分厚い皮のある豚系モンスターでさえも一撃で屠られる。

 しかしいくつか取りこぼしも発生する。だがそれは雪音さんが処理してくれた。


 辺りは魔素で充満し、床にはいくつもの魔石が落ちる。魔素はすぐさま私たちの体に吸収されるが、魔石はそうではない。床に散らばったそれらを彼は拾うことなく、結花ちゃんに合図をする。結花ちゃんはすぐさま脱出用アイテムを使うと、この場から私たちは消え、ダンジョンの前に戻された。


「リュディは……大丈夫そうだな。じゃあ次行くか」


 そして私にまだ大丈夫かと聞くとすぐに再入場し、また同じ事を繰り返す。

 そう、再度ダンジョンに突入し、予定していた場所でモンスター召喚の罠を発動させると、私はすぐに魔法を発動させる。そして全てを倒し終わると、幸助とななみはモンスターを集めにこの場を離れる。モンスターを連れてきたら一掃しダンジョンを脱出。

 これが一連の流れだった。


 とても楽で、疲れはさほどなかった。されど凄まじい勢いで私たちは成長していた。


「ななみ、行くぞ」

 今回もまた幸助はななみを連れてダンジョンの奥へ潜っていく。


 私と雪音さんと結花ちゃんはまた幸助達待ちだ。


 彼に聞くところによると、使うと無くなる道具(消費アイテム)を駆使して、幸助達は魔物を集めてきているらしい。そしてすぐには敵が再出現リポップしないからと、ダンジョン脱出用のアイテムを使いダンジョンを出る。


 なぜ脱出用のアイテムを使うかが疑問だったが、どうやらモンスターの再出現リポップに関係するらしい。なんでも、脱出するのが一番効率が良いから、だとか。

 意味が分からない。より効率よく敵を倒すために、ダンジョン脱出用アイテムを使うだなんて。それも魔石を一切拾わずにそれをするのだ。


 さて、それに関して私たちは言いたいことがある。


 ダンジョン脱出の為のアイテムは、簡単に得られる物ではない。しかも使う者が多いと来たら値段が上がるのは必然である。一応ツクヨミポイントで交換出来るため、ある一定の値段以上にはなかなかならないが、それでも値は張る。

 そして他にも消費アイテムを使用しているのだ。その出費は計り知れない。


 それを幸助は一人で用意している。


 それでいて私たちに何の請求もしていない。幸助はいったいこれのためにいくらのお金を準備したのだろうか。それこそお金を湯水のように使っているであろう。


「リュディ、結花。分かっているな。請求がなかったら全員で怒鳴るぞ」

 雪音さんはそう言ってすぐに『ん、んんっ』と喉を鳴らす。


「腕が鳴りますよ!」

 結花ちゃんは笑顔で肩を回していた。


 思わず笑ってしまった。私も同じようなものだから。

 皆が確信していた。彼はお金を請求しないと。



 狩りを終えて雪音さんがそれを問うも、想像通り幸助はお金を請求しなかった。


----


「それで幸助ったらダンジョンで使ったお金を全て自分持ちにしようとしてるの」

 効率的な魔素集めについてぼかしながら私がそう言うと、結花ちゃんがうんうんと頷く。


「リュディさんの言うとおりなんだよ、お兄ちゃん。私たちがそのことを言っても『えっ、別に貰うつもりなかったんだけど』なんて真顔で言っちゃうし。っはーっぁぁぁもぉぉぉ!」


 結花ちゃんはプリプリしながらそう言うと、私たちを呼び出した伊織君は苦笑する。

「ああぁ~それは幸助君らしいねぇ……」

 

「瀧音さんはネジがはずれてるどころか頭の中が宇宙だよ。何考えてるのかわかんない。ね、お兄ちゃんもそう思わない?」

 

 伊織君は、確かにそうだねと、結花ちゃんの言葉に同調する。

「そうなんだよね。僕も幸助君が何を考えてるのか分からないときがある。だからこそ今日二人を呼んだんだ」

 

 だからこそ、私たちを呼んだ?

 

「二人は知っていると思うけど、幸助君は僕にいくつかダンジョンを紹介してくれているんだ」

 私と結花ちゃんは頷く。確かに幸助は伊織君に限らず皆にダンジョンを紹介している。

「それでなんだけどね、最近その紹介してくれているダンジョンに意味があるような、そんな気がしてならない事が起きてるんだ」

 

 どういうことだ、と思い結花ちゃんを見る。しかし彼女は首をかしげていた。

「やっぱり二人も分からないか……水守副隊長にも聞こうと思ってるんだけど、おんなじだろうなぁ」

 はあ、と伊織君はため息をつく。


「直接幸助に聞いてみたらどうかしら?」


「それはそれで、はぐらかされるんだ。ななみさんには聞いてないけども、同じだと思う」

 確かにそれはありそうだ。


「うーん。何も知らないのであれば、別の切り込み方で聞こうかな……」

 そう言って伊織君は真剣な表情をする。

「ねえ、二人は『ラジエルの書』って知ってる?」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 作者が生きてたこと [一言] 3巻と来月からの更新が待ち遠しい!!
[一言] 続報ないですえぇ エタっちゃったか
[一言] 続きはよ! と思うのですよ。 何回読み直したことかと! もう2桁読み直しました! 大切な事なのでもう一度言います 続きはよ!!
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