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144 おでかけ(リュディ)2

すみませんでした。心よりお詫び申し上げます。

(できるかぎり)何でもするので許して下さい。


次回更新は明日です。よろしくおねがいします。


 ダンジョン『秘密の花園』はその名前の通り、秘密の花園である。

 特定の条件下でしか来ることの出来ない隠されたダンジョンであり、魔法使いにとって有用なスキルを得ることが出来る場所でもある。

 

 また、秘密の花園と言う場所は単純にスキルを得るだけではない。

 一部キャラクターはこの秘密の花園にとある条件下で来ることで、イベントが発生する。

 

 それはデートイベントである。

 

 キャラによっては平時に放送できないような展開が発生することもあるため、持ち運びできる端末で攻略する場合には注意が必要な場所でもあった。

 

 さて、このダンジョンに来た一番の目的は、もちろんデートである。リュディに強くなって貰いたいとは思うがそれはそれで、そんなことよりもリュディが楽しんでくれるデートがしたい。

 優先順位は決まったような物だ。

 

 まあ今後起こるイベントを考えれば、それなりには急がなければならないが、一日デートをしただけで終わるわけではない。だからデートが優先されるのは必然である。


 また、エルフの例に漏れず、リュディは自然や花が好きだ。ここに来ることで彼女がとても幸せになることは知っていた。

 現に本当に楽しそうだったし、それを見て俺も楽しくなった。ああ、なんて良い日なのだろうか。それなのにリュディに有用なスキルも手に入ると来た。なんて良い場所なんだろう。

 

 ということで、次にしなければならないのは、リュディ向けのスキルを得ることである。


 そのスキルを得るためにはどうしてもダンジョンの最奥にいかなければならない。また最奥に行くためには秘密の花園に出現する唯一のボスモンスターを倒さなければならないときた。デートの後と言うことで、多少面倒だと思うが進むしかない。

 またそのボスモンスターは、他のダンジョンに登場する一般的なモンスターと違い少し特殊である。

 

「リュディ、次来るぞ!」

 直後、前方に居たサボテンのような植物に赤い花が生え、辺りに赤い魔法陣が四つ浮かぶ。

 それを見てすぐさまリュディの前に立ち、ストールに水の属性を付与する。うっすら青い光を纏ったストールが展開されると、リュディは俺の後ろに体を隠した。


 直後、サボテンが構築した魔法陣から火球が出現する。一直線に飛んでくるそれをストールで受け止めるとまるで火に水をかけたような音があたりに響いた。

 そして火球は熱気を多少残しながらもすぐに消えていく。

 

「リュディっ!」

 そう言って視線を彼女に向けると、リュディは既に動いていた。俺の前に飛び出すと水の陣刻魔石を発動させ、現れた小さな水球をサボテンに当てた。

 

 一般のモンスターであればサボテンに水だなんて、と思うかもしれない。サボテンは水から栄養を得ているから、大抵のゲームではサボテンが水を弱点としていない。

 

 しかしこのサボテンは水も弱点になり得る。すぐさま俺は走り出し、ストールに魔力を込めた。

 水を被ると同時に、サボテンの体に変化が訪れる。急に全身を大きく震わせたかと思えば、咲いていた赤い花が散っていく。

 

「幸助っ!」

 リュディの声を聞きながら、苦しみもがくような動きをしているサボテンの顔面をストールで叩く。

 

 俺はすぐさま後退すると、サボテンの足元付近から地面からいくつもの木の根のような物が突き出てきて、その場で暴れだす。それは鞭で辺りを叩くような、そんな暴れ方だ。

 そして暴れた後にその根はおとなしくなったかと思いきや、自らを守るように自身を囲った。その木の根に向かって俺はクナイを、リュディは風魔法をぶち当てる。

 

 そして木の根がバラバラになったところで、俺たちはもう一度サボテンに生える花を注視する。


 さて、この『秘密の花園』のボス『秘密のサボテン』は初見殺しのモンスターである。

 

 初見殺しと言えば、何かしらのゲームをプレイする人の大抵が一度は経験したことがあるだろう。

 アイテムを使う事で弱体化させられたり、祈るコマンドだったり、わざと彼女を遠ざける選択肢を選ばなければならなかったり、まあ種類は沢山ある。

 それは知っていないと、倒すのが困難だったり、そもそも倒せない場合もあった。

 

 『秘密のサボテン』が初見殺しと言われるゆえんは、その弱点と耐性にある。

 『秘密のサボテン』は弱点属性以外の魔法や攻撃を吸収したり無効化してしまうのだ。しかもその弱点属性がコロコロ変わると来た。

 そりゃあ、それを知らずに戦えば負けることだってあるだろうし、長期戦は免れない。ただそれを知ってしまえばこいつはたちまち倒しやすいボスに変わる。


 ではその弱点属性を何で判断するか。

 それはサボテンに咲いた花である。

 

「黄色が来たぞ、デカいの頼むぜ!」

「任せて、前は頼むわよ?」

 もちろんだと、詠唱し始めるリュディの前に立つ。

 

 黄色い花を咲かせたサボテンの前に、またもやいくつかの魔法陣が浮かび上がる。しかし今度は土属性の魔法陣だ。

 そして現れたのは尖った岩、岩、岩。浮いていたそれらが勢いよく射出されると、その飛んでくる岩に対抗するためストールに魔力を込めた。

 

 しかし、一直線に飛んでくる単調な岩では、全くと言って良いほど恐れを感じなかった。

 そもそもその岩はあまり大きくない。一つ一つは人の頭ぐらいだろうか。そして射出速度がそれほど速いわけではない。

 もしもっともっと大きくて、高速で射出されていたら恐怖を覚えたかもしれない。

 

 むしろ一個一個を受け止めたり、ピッチャー返しすら出来そうだった。まあ、次を考えるとそれはしてはいけないのだが。

 

 ゴン、ゴンと来る衝撃を軽く受け止めながら最後の一つを弾いた瞬間に、すぐさま横に飛び退く。

 それが魔法発動のタイミングだった。

 

 サボテンを中心に竜巻のような風が発生する。それはサボテンを巻き込むと、少しずつサボテンの体が削れていった。

 10回呼吸するうちに、見るも無惨な姿に変わっていた。

 

 弱点属性をあてられたからだろうか、リュディの魔法が強いのか。

 どちらでも良い。瀕死になったサボテンに向かって俺は走り出す。またもや苦しんでいるサボテンの花が散るのと同時に、ストールで体を殴り飛ばした。

 

 さて次はと思って距離を取ったが、どうやらそれはないらしい。

 地面から根が生えてくることはなく、そのまま倒れ込むとゆっくり魔素へと変わっていった。

 

 リュディはこちらに来ると、サボテンの落とした魔石を拾った。

「普通に戦ったら、苦戦しそうな相手だったわね……」

「戦い方と対策さえ知っていれば、楽な相手なんだけどな」

 

 特にこのサボテンは弱点がすぐ分かるから楽だ。

 それに、もし今回の俺たちのように属性魔法が堪能ではなくても、下級の陣刻魔石で一度弱点で攻撃してしまえば弱点属性が決まった順序で変わるから、自分の得意な属性が来るまで陣刻魔石で弱点を入れ替えればいい。

 

 伊織とか、ななみのような全属性得意なんてキャラはそもそも陣刻魔石すら不要だし、ある程度鍛えていれば、最悪物理でごり押しでもなんとかなるが。

「さあ、ボスも倒したしスキルを取ってここを出ようぜ」


 そう言ってリュディに先へ行こうぜと促す。スキルを得たらリュディの魔法は更に強化されるはずだ。


 そしたら始めようか、効率的な魔素集めを。


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― 新着の感想 ―
[良い点] サボテンの説明を見て某ゲームのボスを思い出した。 あの作品でもボスは二人で攻略してたし。懐かしい思いさせてもらいました
[良い点] ん?今何でもするって言ったよね?
[良い点] 今回も面白かったです。 [一言] なんでもするとのことなのでお願いなのですが、この作品の途中で失踪したり虚無送りにしたりせず、作者様の納得のいく形で完結して下さい。 楽しみにしてますので!…
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