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132 ツクヨミ学園新聞

遅くなってすいません。

手直ししてたら三千文字が五千文字になってました _(´ཀ`」 ∠)_


 もちろんではあるが、このままダンジョンから出るわけにはいかなかった。

 ただでさえアレな服だというのに、どうかしている状態で外を出歩けるわけがない。

 

 だからこそ黄昏の道を脱出する前に、着替えを行うのは必然である。

 色々傷を負った俺たちは、隠すためにもしっかり着替えてから外へ出た。

 

 俺たちが外へ出たとき、日は沈んでいた。時間的には夕食を食べる頃であろうか。今回もまたななみが待機しており、お帰りなさいませと出迎えられた。ちょうど食事を取っていたのか、辺りには美味しそうなお肉の匂いが漂っている。ギャビーのお腹が鳴ったことには気がつかないふりをした。恥ずかしそうなギャビーは本当に可愛い。

 

 さて、あんなことがあった割には、さほど大きな騒ぎにはならなかったらしい。

 ななみには起こるであろう事は話していたし、紫苑さんにもそれとなく伝えているから、大事にしなかったのだろう。ただベニート卿はかなり取り乱していたみたいだが。

 

 まあ目の前であんなことがあれば不安になるのも当然か。ましてや大切な妹がだ。

 一応、ベニート卿が本来して貰いたかったであろう事は、着替えの後に色々と話せた。いずれ自らの意思で道を選ぶだろう。ギャビーがどういった選択をするかは分からないが、どこへ行こうとも当然応援する。

 

 そんなこんながあった翌日。いつものランニングやら模擬戦やらを終えたのち、ゆっくりと一日休もうと思いたい気持ちもあった。しかし残念ながら今日は予定がある。

 

「ようこそ新聞部へ。いやー噂の瀧音くんだあ、会いたかったよぉ瀧音幸助君。ねえねえ、タッキーって呼ぶよ? タッキー★」

 やたらハイテンションでいきなりあだ名呼ばわりするアイヴィ編集長に思わずため息をつく。


「あっゴメンねぇ自己紹介がまだだったね。編集長兼部長でツクヨミ魔法学園のアイドル、アイヴィだよ。タッキー達は呼び捨てで構わないからね! ムフフっ」

 そう言ってふわふわのウサギ耳をピンと立て、目元でピースする兎族アイヴィ。


 彼女はツクヨミ学園では珍しい兎族のキャラクターである。獣人族では狐、狸族はある程度いるらしく、サブヒロインの女性以外にも幾人か見かけていた。しかし兎は彼女以外に見たことがない。

 

 それは兎族の特徴が影響しているだろう。個人差はあるが、兎族は狐や狸族よりも魔力が少ない者が多く、それゆえ魔法もあまり得意ではないとか。ただ足腰が強く、スピードを生かした戦闘が出来る種族である。スサノオ武術学園では結構見かけるらしい。

 

「初めましてアイヴィ様。わたくし幸助ご主人様に忠実であり至高の美少女メイド、ななみです。ななみんで構いません。ななみんっ♪」

「張り合わなくて良いぞ……?」

 

「そっか、よろしくね。タッキー、ななみんっ♪」

「あ、それ確定なんですね」

 そういえば伊織は『いおりん』だったからなんか俺だけ仲間はずれにされた感が……。

 

「じゃあ早速なんだけどね、インタビューしちゃおっか。赤裸々に語っちゃって良いよ! いっーぱい盛って修正しておくから」

「盛って修正しちゃうんですね……」

「盛った方がウケがいいんだよっ! じゃあまず自己紹介からかなぁ~」

「以前新聞部に速報出た通りなんですけど。式部少輔の瀧音幸助です。一応花邑家の人間って事になるのかな」


「うんうん、そんな感じでいいよ。ありがとー! まあここら辺は決まり文句みたいなモノだから適当で! では続いて三会についていきまっしょぉい!」


 ほんとテンション高いな。


「式部会の式部少輔に任命されましたが、どういったお気持ちですかねっ。あ、この辺りは後ほどベニート卿とも相談して内容を変えるかもしれないのでよろしくね!」

「それインタビューする意味あるんですかね?」

「基本はタッキーの言葉だよっ。でも式部会的に発言を見直した方が良いなって思った時は変えちゃうから。一応変える前に報告はするけどね!」


 確かに式部会という特殊なフィルターは必要か。読者も色眼鏡かけて見るだろうし。まあ下手に変な事を喋ってそのまま載せられるよりは、他者に精査して貰ったほうがいいし、任せてしまおう。

 一応、式部会っぽく答えるとすれば。


「分かりました、修正はお願いします。まあそれっぽく答えるとすれば『とても歴史ある式部会に名を刻めた事は非常に光栄です。まあ選ばれたのは当然ですが』なんてのはどうですかね?」

「うーん、式部会らしくてイイよぉ! いやぁタッキー最高。そう言って貰えるとすっごい助かる。後で調整する手間が省けるからねっ!」


 そう言って彼女は持っていた資料に視線を移す。

「じゃぁ次は……ダンジョン攻略のお話! デデンッ! ソロ40層という、とてつもない記録を打ち立てたけど、タッキーはそれについてどう思ってますか」

「当然皆いけますよね? なんて言ったらモニカ会長頭抱えるんですかね? でも式部会らしいセリフってそんな感じですよね」

「ああ、そっかぁ……生徒会と風紀会が頭抱えるかもぉ。うーん何言っても油注いじゃいそうだなぁ。今のは無しにしておこっか!」


「じゃあ続いての質問! デデンッ! どんな女性がタイプですか、キャーッ!」

 両手を頬に当てクネクネと動くアイヴィ。

 それ、答える必要があるんですかね、とツッコミを入れようかとしたとき、ななみが私に任せてくださいと目線を送ってくる。

 なんだかいやな予感もするけど、とりあえず任せてみるか。

 

「アイヴィ様。ご主人様は恥ずかしがっておられるので、僭越ながら私が。ご主人様がお好きなのは銀髪ですね。長さはセミロングからロングぐらいが望ましいです」

 すごく見覚えのある特徴を喋られて、思わず目線がななみに行く。しかし彼女は微動だにしない。


「ちょっと冷たい印象を与えるかもしれない目がチャーミングで好きとのこと、ちなみに好きな瞳の色は紫です。そして太ももが強調されたメイド服を着ている、ななみがタイプだそうです」

「ななみじゃねえかって突っ込もうかと思ったら、やっぱりななみだった。まあ否定はしないけどさ」


 銀髪メイドとか最高だよな。あれ、…………ななみ、なんか体がこっちに寄ってきてない?

 

「仲良くてうらやましいですねぇ……でもちょっとここ変えても良いですか? むしろ何言われても最初からこれでいこうかと思ってたんですけど」

 それ聞く意味全くないんじゃ無いかな?

「変えるというと?」

「リュディちゃんの特徴を入れてリュディちゃんをタイプにしたいなぁと」


 なんとなく理解した。むしろ今後活動する上で助かるかもしれない。

「構いませんよ。リュディには言っておきます」

「うんうん、理解が早くて助かるよ~! じゃあ次はぁーっと!」

 

 それから数個質問を受けて式部会の一員ぽく答えると、インタビューはすぐ終わった。そしてすぐ雑談に切り替わる。


「いやぁ、いーっつもいい人を三会に取られちゃうんだよねぇ、まあ去年はすっごく良い子が来ててくれてちょー助かっちゃったんだけどね!」

「三会は魅力的ですからね」

「ほんっっとだよぉ。就職でもかなり優遇してもらえるしぃ! うちも少しは有利なんだけど……やっぱり三会には及ばないんだよねぇ、うらやましいっ!」

「でも、アイヴィさんの実力なら三会に入れたのでは?」


 俺がそう言うと、アイヴィの目が怪しく光る。

「へぇぇ、そー見えるかな?」

「見えますよ」

 少なくともメインヒロインに肉薄する能力はあるはずだ。まあ忍者というスキルのおかげではあるが。


「ふふっありがとっ! そういえば三会と言えばなんだけど、瀧音君は居心地どうかな? あそこってかなり情報規制してるじゃん? 瀧音君も知らされてないこととかあるでしょ? もしくはなーんかいやになったりしてこっちに来たくなったりしない?」


「式部会を辞めることは考えてないですね」

「そっか。ふぅーん、ちょっと残念! なら式部会のままでもいいんだけど、ジャーナリストに興味無い?」

「それもないですねぇ」


 アイヴィはそうだよね、とため息をつく。

「一年生でめぼしい子、まだ見つけてないんだよねぇ。もし良い子いたら紹介してくれないかなっ!」

 一応、紹介しようと思えば出来るっちゃ出来るんだが、まだ話したことないんだよな。


 どうしようかと悩んで居るとアイヴィはぽんと手を叩く。


「あっ、そうそうタッキータッキー。さっきのめぼしい子で思い出したんだけど、タッキーは知ってる?」

「何をですか?」

「君以外の注目株の男の子っ、聖伊織君のこと!」


 そりゃあ知っているさ、と頷く。


「そっかー魔族退治の話は有名だしねぇ。でも昨日の話はさすがに聞いてないよね?」

 そう言って先輩は俺の顔をのぞき込む。

 

「彼のパーティ、ツクヨミダンジョン30層を超えたらしいよ? でね、正式にオファー出したんだって」

 

----


 アイヴィと別れ新聞部を後にし、外へ出て少し歩く。そして花壇の前にあるベンチを見て、ななみを呼び止めた。 

「どうかされましたか?」

「ちょっと話したいことがある」

 と、学園に備え付けられているベンチを指さした。

 

「ななみに謝らなければならないことがある」

 そう言いながら収納袋からタオルを取り出し、ななみが座る場所を拭いてからベンチに腰掛ける。やけに距離が近いというか接触してくるななみに苦笑しつつ、俺は話を切り出した。

「……謝るとはなんでしょうか」

「実はさ、内緒で進めていたことがあるんだ」


「ななみとの旅行計画……であれば良いのですが」

 声音を変えず淡々と話す辺り、真面目な話であることはしっかり理解しているのだろう。

「それは、まあ後で皆と行こう。で察しているとおり個人的に重要なことだ」


「旅行は楽しみにしています。それで進めていたことは、何をでしょうか?」

「そうだな。イベントって言いたいところだが……ゲームじゃないしな。うーん、攻略というべきか……いやイベントの方がしっくりくるんだよな。ただ勘違いはしないでほしいんだけど、現時点では決して危険ではないし、戦闘もしていない」

「理解しました。現時点・・・では危険ではないのですね」


 ジト目でこちらを見るななみ。伝えたい事を察してくれるのは助かる。


「ああ、現時点では。だけど、これから先いつ起こるか分からなくなったんだ。場合によっては俺が起こすか……本音を言うとさっさとイベントを終わらせたいとも思っている」


「……そうですか。詳しくお伺いしても?」

「それなんだが、詳しく話すのはもう少し後にして欲しい。起こすときは必ずななみを連れて行くから」

「なぜ……そんな中途半端な告白をされるのです?」

「いやぁ、今のところ危険がないとは言え、全く何も言わずに進めたら皆に怒られるかなと思って」

「よくご理解なさってますね。確実に怒りますね。もちろん私だけでなく、リュディ様と雪音様や花邑家の方は」


 俺もそう思う。だからまずななみに少し明かしておこうと思ったんだ。

「でも、話せないのには理由があってな。それにまだ攻略のピースがいくつかそろってないんだ。それらのめどが立ったら、皆に話そうかなとも思ってる」

「攻略のピースですか……?」

「ああ、実はすでにある程度集めてはいるんだけど、残りを早急に用意したい」

 

「そうですか……はぁ……分かりました。後ほど、必ず、か・な・ら・ず! すべて話してください。そして、危険な目に遭いそうになった場合は問答無用で相談してください」

 ジト目で、ななみに睨まれる。

「うん、分かった。必ず、話すよ。ななみの力を借りたいから」


 すまないが、もう少しだけ待ってほしい。彼女の件に関しては、どうなるか分からないから。

 また、あのことを考えると毬乃さんがどこかで一枚噛んでいるか、黙認している可能性を疑わなければならない。まあそこは彼女か毬乃さんに直接聞けば良いだろう。毬乃さんの事だから悪い理由ではないとは思うが。

 

 あのイベントに関して考えることは多いが、考えなければならないのはそれだけじゃ無いんだよなぁ。


「あとこれは別件になるんだが……ツクヨミ学園新聞関係の人々には注意してくれ。特にアイヴィさんだ」

 入会したばかりの俺にすら探りを入れてくるぐらいだ。注意しておくことに越したことはない。

 彼女たちもそろそろ本格的に動き出すことだろうし。

 

結花&ギャビーの描写は書き始めたら納得するまで1週間ぐらい掛かりそうだったから全カットだ!

ギャビーについては後ほど結花視点で語ります、もしかしたらギャビー視点かも?


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