129 黄昏の道(スケスケベダンジョン)
2019/10/23 2話予定。 日付変わったらすいません。
マジエクの制作陣は讃えなければならない素晴らしい人物たちである。
本来エロゲやギャルゲというモノは、ストーリーやキャラもそうだがエチエチなシーンにも力を入れて制作される。
当然、そのシーンを求めているユーザーがいるので、力を入れない訳がないとも言えるのだが。
マジエクの制作陣だってもちろん力を入れていたし、そのシーンを作り出すにあたって妥協はなかった。そう、設定も。
初めてゲームをプレイしたとき、俺は期待と同時に不安になった。上から服着れば良いんじゃない? なんてヒロインの誰かが言うのではないかと。
しかし制作陣はそれを見越していたのか、思いつくばかりの設定をぶち込んでいた。
「肌と魔法少女服が重なることにより魔力が服に供給され、ダンジョンの所々にあるダンジョン障壁を自動的に解除している」
だとか、
「また魔法少女服を隠すため上から衣類を着ると、魔力がうまく放出されず障壁に阻まれ進めなくなる」
そんな設定を徹底的にブチ込んでおり、ヒロイン達が試行錯誤してなんとかズル出来ないかを試すがそれはことごとく失敗に終わる。上から服着たら進めなくなって、真っ赤になりながら服を脱ぎ捨てるあのシーンは最高だった。
そう。どーしても、しかたなーく着ざるを得なく、恥ずかしさのあまり縮こまるヒロイン、屈辱のあまり震えるヒロイン、ステッキ持って決めポーズしてくれるヒロインなんかを堪能できた。
だからこそ制作陣を讃えなければならないと思った。
今すぐ祟ってやるよ!
いったいお前らは俺をどれだけ追い詰めれば気が済むんだよ。普通に考えてさ、エロ装備を着ないと先に進めないだとか、水をかけるとスケスケになるだとか実際に経験してみろよ! ゲームではボーナスにしか見えないかもしれないが、現実でやられたら罰ゲームなんだよアホか! 俺はそれを要請しなきゃいけないんだぞ!?
「やっぱ駄目だったか……」
「見えない壁に阻まれましたねぇ」
そう言いながら服を収納袋にしまう結花。彼女は件の魔法少女服を着ているが、なぜか堂々としている。
脇オープン、胸強調、ミニスカふともも。御三家そろえた衣装を生み出した制作陣に極限の感謝をせざるを得ない。
「結花はすごく余裕有るなぁ」
「なーに言ってるんですか。ヤケですよヤケ。良いですか瀧音さん。こういう時はですねぇ、開き直っちゃった方が良いんですよ! 恥ずかしがるから余計に恥ずかしくなるんです!」
そう言って彼女はチラリとギャビーを見つめる。つられて俺もギャビーを見つめる。
「わたくしが…………こんな格好を……………………! っっっ!」
スカートをつまみ、プルプルとしているギャビー。
俺が見ているのに気がついたのか、彼女は恥ずかしそうに両手で体を隠そうとする。
ギャビーと結花を比較すると、まさに結花の言うとおりだ。しかしそれを実践できるのがすごいと思う。しかし俺は気がついている。結花の顔は赤いし手が少し震えている。
俺の視線に気がついたのか、結花は更に顔を赤くしジト目でこちらを見る。そして何かを思いついたのか、俺から少し距離をとるとにこりと笑った。
「ほーらどうですか? 似合ってますか?」
そう言ってスカートの裾をつまみ、その場でくるりと回転する結花。
回り終わったら足を少し前に出し、スカートの裾をつまんでチラチラと少しだけめくる。みえ、みえ…………見えない。
あのさあ。
そういうの、やめていただけないだろうか。俺はこう見えて常識を持った紳士で、そんな破廉恥な行動をされたら、平静を装いながら般若心経を頭の中で唱えるだけで精一杯なんだ。
わかるか? ただでさえこっちは全身全霊で自分の意識を封じているっていうのに、コメントを求めるだって? 無茶言ってんじゃねえよ!
似合ってるか、だったか?
もちろん似合ってるよ。おかしいぐらい似合ってるよ! 俺がおかしくなりそうなくらい似合ってるよ!
あとさ、お前なにスカートつまんでほんの少しめくったりしてるんだよ! ただでさえ際どいスカートなんだぞ、バカじゃねえの? 絶対領域侵入の疑いで逮捕されるぞ!
しかもだ。なんだよ、あの健康的で文化的な限界突破の太ももは。エチエチ過ぎるだろう!
「ほらほら瀧音さーん、どうなんですか?」
精神が壊れちゃいそうだよ。
いや駄目だ。心を落ち着かせろ。アレは大根、大根、大根だ。
ちょっと厚みがあって、まっしろで、すべすべで、すごく柔らかそうで、良い匂いがしそうで、挟まれたくて、タイツも合いそうだけどやっぱりニーソが一番映え……って大根じゃないぃ!?
くっそ、心よ静まれ……ただでさえエロ助だとか言われてるんだぞ、落ち着け落ち着け落ち着け。これ以上変な印象を与えたくない! ここは無理に言葉を考えなくて良い。シンプルでクールに紳士らしく返せればそれでいい! 紳士にクールにシンプルだ。
「ふーん、えっちじゃん」
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛。
なぁぁぁにを言ってるんだ俺は。クールでシンプルに欲望丸出しじゃないか!
「なんですかーそのやる気の無いうっすい反応? 嬉しくないんですかー?」
まさかの結果オーライィィ!? 適当に言ったと思われてる!? 取り繕うんだ。
「冗談だ、すっげーにあってる。ギャビーも、すげーにあってるぞ。めちゃくちゃ可愛い」
「ですよねぇ!」
「 」
消え入りそうな声のギャビー。間違いなく恥ずかしいのだろう。
ギャビーは恥ずかしいと思いながらも、ちょっと強がってるところが最高に良い。
また彼女は着痩せするタイプな所もすばらしい。出るところはしっかり出ていて、姉さんのような、悩ましくて包まれたくなる体つきをしている。
まあそれは良いのだが、問題はその服の特殊性にあるんだよな。
水を被るとスケスケになることは言っていない。喋ったらどうなるだろうか。最悪、ここから一歩も動かなくなるか? まあ水を浴びなければバレることはない。
単純な話、俺が体をはって二人を守れば大丈夫なのだ。俺は濡れたって構わないんだし。彼女たちの濡れた姿を見たいのはやまやまなのだが、当然そんな事出来るわけもないし。
「よし。じゃあ、行こうか」
そう言うと元気に大股で歩く結花、そしてまだ少し恥ずかしいのか小股で歩くギャビー。
そして俺が二人の後を追って転移魔法陣の近くへ行こうとしたときだった。
何か見えない物にぶつかったのは。
「えっ?」
痛みはなかった、衝撃もなかった。ただ単純にその先に進めなかった。
「どうしたんですか、瀧音さん?」
不思議そうにこちらをのぞき込む二人。二人はこの見えない壁の先にいるような……?
「いや、なんか見えない壁みたいなのが?」
俺は第三の手で思い切り目の前を叩く。
しかし第三の手はとある場所から前に進まない。音もしない。
「ん? 見えない壁……? ついさっき私が…………あっ!」
不意に結花が大きな声を上げ、俺を見つめる。そして自分の体を見つめ、今度はギャビーを見つめ、また俺を見る。
ギャビーもつられて全員を順に見つめる。そして結花と同じように「まっ」と声を上げ、このフロアにある宝箱を見つめた。
「あっ……」
思わず言葉が漏れる。
結花とギャビーのとてつもなく似合ってる魔法少女服を見て、宝箱の上に乗せられた2枚の魔法少女服を見て、俺の服を見て。
理解してしまった。
「はぁぁあああああっ!?」
「瀧音さーん、どうしたんですか? 他人に見せてはいけない顔になってますよー」
「だってそうじゃねえか。結花、よく考えてもみてくれ。なんで俺がこんなの着なくちゃいけないんだっ?」
「ぷっふぅー! 開放感あふれてて良さそうじゃないですか!」
「お前なぁああああああ! さっき俺が言ったことを、ここぞとばかりに言いやがって! 先ほどは大変申し訳ありませんでしたぁあぁあ」
「なんだか立場が逆になってますわね……」
「いやぁぁもうド変態、ですねぇ♪」
「なんでお前はこんなに嬉しそうなんだっ!?」
おいこの設定考えたやつマジで出てこい! そして今すぐ土下座しろ! いったい誰が魔法少女のコスプレしてスケスケべダンジョンを攻略せねばならないんだ!?
「大丈夫です瀧音さん! 優秀な成績を収めれば、記念のメダルがもらえる上に、賞状ももらえるんですよ!」
「すまなかった! 心から謝るからこれ以上はやめてくれ!」
「謝るとか、別にいいですよ。じゃ脱ぎましょうか!」
おいおいおいおい、ちょっと待て。
「おい、何で手をワキワキさせてこちらに近づいてくるんだ? ちょ、ちょ、頼む。精神を落ち着ける時間をください、ってなんでギャビーも手をかけてるんだ。一人で着替えられるから、やめ、やっ、ヤメロォ!」
アホエロ内容に突入した途端、感想が普段の5倍くらい来て吹いた。