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126 黄昏の道③

2019/10/15 更新3回目

「ォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!」


 変な音波でも発しているのだろうか、まるで小さな電気が辺りで弾けているようだ。

 『朽ちたヘルハウンド』は黄昏の道の隠しボスである。ゲームではさほど強くも無く、式部会入出来るほど育てていれば普通に倒すことの出来るモンスターだ。……倒せるはずなのだが。


「なーんかすごく強そうに見えるなぁ」

 その見た目の迫力だろうか、所持するスキル『咆吼』のせいだろうか。普通に考えてどちらもだろう。

「ちょっと、瀧音さん。守ってくれたのは嬉しいんですけど、いい加減離してください、セクハラですよ?」

 腰に巻き付けた手を名残惜しくも離すと、結花はすぐさま身体強化を施し、今度は補助魔法で俺たちの能力を底上げする。


 ギャビーは自分に補助魔法を使われたことに気がつき、びくりと体が反応する。

 今初めて現状を認識したような、そんな表情だった。

「すまん、無理矢理引っ張って。大丈夫か」


「え、ええ。もちろんですわ」

 駄目だ。目が泳いでいるし、しておいた方が良いであろう身体強化すらもしていない。咆吼スキルは初めてなのだろうか。まあダンジョンに行きまくるならともかく、普通に暮らしていれば出会うことの無いスキルではあるのか。


「もしかして咆吼持ちと戦うのは初めてか? 俺も初めはそんなんだったぜ、今後も結構出てくるから、今のうちに慣れておいた方が良いぜ」

「あっ……!」

 さて、なんとか彼女の気を紛らわせられればいいのだが。


 しかし、その時間はくれないらしい。

 こちらへ駆け出すヘルハウンドを見て、すかさず前へ出る。全長は3、4メートルぐらいだろうか。思ったより大きかったが恐いとは思わなかった。

 それは学園ダンジョンの影響だろうか。それとも訓練のおかげか。


 俺の顔よりも大きな前脚でこちらを引っ掻こうとするその脚に、第3の手を合わせる。ヘルハウンドの攻撃にはそれなりの重さがある。そして近づけば集中を切る悪臭がある。しかしそれだけだ。

 

 踏ん張る足に力を入れ、その腕を弾く。するとチャンスとばかりに結花がそのバランスを崩したヘルハウンドの横っ面を思い切りぶん殴った。

 

「ォォォォンッ!」

 

「うぅぅ、くっっっっさー! 体も臭いくせに口臭も最悪なんですけど!? 体洗って歯磨きしてから来てくださいよ!」

「体が腐ってるぽいから意味ないだろうなぁ」

 と、至極どうでもい言葉を交わしているとヘルハウンドは再度こちらに飛びかかってくる。

「正論なんて聞きたくないです!」

 それに悠々と反応し、軽く避ける結花。俺は後ろを考えて対峙することにした。

 刀に手を当て、第四の手でそのヘルハウンドの脚を掴むとその腹に向かって刀を振る。


「ッッッッッッッッオオオオン」


「じゃあ何て言えば良いんだよ」

 腹に一筋の線ができ、そこから墨汁を薄めたような液体が勢いよく流れ出す。

「とりあえず女の子の意見には同意しておけば良いんですよ。それにしても、雪音さんと模擬戦した後だと強いと感じませんね。むしろ敵は悪臭?」


 しかしできたその傷はゆっくりと塞がっていく。不死系の一部やスライム系モンスター等が持つ自己修復能力が発動しているのだろう。

 ヘルハウンドは傷が少しでも回復するよう時間稼ぎをするためか、口を大きく開き黒炎を飛ばしてくる。


「そうだな、その意見は全面的に同意する」

「うっわー適当に同意するだなんてサイテーです。信じられません」

 そう言いながら結花は俺の後ろに隠れた。

「いったいどうすれば良いんだよ!」

 前を向いたまま左腕で後ろにいる結花の位置を調整する。そしてストールを前方に展開し飛んでくる黒炎を防御した。


「いやーななみさんの言うとおり、瀧音さんと話してると楽しいですね!」

「そうか、良かったな。この戦闘が終わったらいくらでも話してやるよ。それよりもだ。あいつ光属性が弱点だからしっかりエンチャントしろよ」

「仕方ないですねぇ、瀧音さんかけてくださいっ!」

 そう言って俺の手にガントレットを当ててくる。

「何が仕方ないんだ何がっ」

「へっへっへっへっ♪」


 炎がやむと結花は待ってましたとばかりに飛び出す。そしてヘルハウンドに俺が光属性を施したガントレットで、正面から殴りかかった。

 

 結花に関してはほぼ心配ないだろう。俺と同じようにソロでヘルハウンドを討伐出来るかもしれない。

 問題はこちらである。


「よぉ、大丈夫か」

「だ、大丈夫ですわ!」

 ようやく普段の調子に戻り始めているが、まだ少し動揺があるみたいだ。

「大丈夫だ。さっきの俺を見てただろ。俺らがギャビーへの攻撃を全部防ぐから安心して光槍や補助魔法、そして何かあったら回復魔法を唱えてくれ。俺、遠距離魔法が得意じゃ無いから……だからギャビーに任せる。頼むぞ」

「ま、任せてくださいまし」


 魔力を活性化させたギャビーを見て俺は前へ飛び出す。そして先ほどから結花とバチバチとやり合ってるヘルハウンドに第3の手と第4の手で殴りかかった。


「大丈夫なんですかー?」

「あの様子なら多分大丈夫だろ。むしろお前が大丈夫かよ?」

「ちょっと、瀧音さんったら。どこ見てんですか、余裕ですよ、よ・ゆ・う」

「いや、この戦闘終わったらなんだけど、ガントレットから異臭放つようになったりしないかなと思ってさ」

「うぅっっっっわー! それ、笑えないんでマジでやめてください!」

 腐乱臭がする武器って……一種の呪いだよなぁ。


 と、くだらない話をしながらヘルハウンドを殴り飛ばすと、後ろから一本の槍が飛来してくる。


「ャォォン!」

 今までで一番甲高い声だった。光槍でかなりのダメージを受けたのだろう。


 嬉しいことにギャビーや結花がいれば光の中級陣刻魔石は使わなくて良さそうだ。まあ使う場面はまだまだあるから、ここで使わないのは節約になるのでそれはそれで良いのだが。

 

 結花がひるんだヘルハウンドに再度攻撃を仕掛ける。光属性の攻撃はさぞかしイヤなのだろう。何度も悲鳴を上げ、なんとか逃げだそうと苦し紛れに攻撃している。

 

 二本目の光槍が突き刺さった後だった。動きが変わったのは。


 先ほどは光槍でひるんでいた。だから今回も同じだろうと追撃を行おうとしていた結花に向かってがむしゃらと言った様子で前脚を振るったのは。

 結花はすんでのとことで避けたかのように見えた。しかしどうやら少しかすってしまったらしい。頬に赤い線がある。

 

「結花、回復もだが、一応解毒も使えっ!」

「ああもう、臭いしみこんだらどうすんですか!?」

 

 そう言って結花は下がる。しかしヘルハウンドは下がる結花に追撃を仕掛けない。代わりに、様子を見ながら横歩きをしていた。そして。

 

「ォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!」


 咆吼すると結花に向かって黒炎を吐き出す。しかしなぜかその炎は先ほどよりも勢いが無い。

 

 そして結花ではなく、ギャビーに向かって走り出した。

 咆吼で動揺しているギャビーへ。

 

ご報告!

マジカル★エクスプローラーのコミカライズが決定しました!

担当してくださるのは「恋愛ハーレムゲーム終了のお知らせがくる頃に」等を描かれている緋賀ゆかり先生です!

来年からヤングエースUPにて公開予定となっております。

が、なんとお忙しい合間を縫って、紹介用マンガを描いてくださいました!!


もう、すごいという言葉しか出ませんでしたよ!

キャラクター一人一人の特徴と魅力を引き立たせ、可愛くそして美しく描いてくださってるんです。

ヤバイですよ、瀧音ぶん殴りたくなるぐらい皆可愛いです。そこ変われ。

あれほど素晴らしいマンガを描いていただけ、感謝の念に堪えないです。詳しくは後ほど活動報告に書こうと思います。


また店舗特典も確定しました!

TSUTAYAさんの特典は、SSだけでなく……「SHUFFLE!」「おれつば」「つり乙」等で有名な西又葵先生にイラストを描いていただいております!私がエロゲに深くはまるきっかけとなった「SHUFFLE!」の西又先生に描いていただいて、もう天に上りそうです……知ってますか、あれ続編制作中なんですよ!


また有償特典でA3のタペストリーが買えたりもします!


店舗特典の詳しい情報&試し読みコミックは下記にあるイラストをクリックし、リニューアルした公式ページへ飛んでご確認ください!


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