123 黄昏の道 突入前②
数十分前に1話更新してるので気をつけてください_(´ཀ`」 ∠)_
「そういえばなんですけど……」
「なんじゃ?」
「結花を式部会に入れようかと考えていたんですよね、なんで俺に声をかけたんですか? てっきり紫苑さん達がやると決めたらそのまま選んでしまうと思ってましたよ」
「なに、妾も卿もお主の意見をないがしろに出来んと言う意見が一致してな」
「それは喜んで良いのですかね?」
「妾だけでなく卿もお主に一目置いておるという事じゃな、わははっ!」
「なるほど」
結花が三会から興味を持たれることはなんとなく分かっていた。ゲームでもそうだったから。
しかし一つだけ疑問もあった。
「それにしても……いったいどうして結花なんですか? 式部会の条件に満たない気がするんですが」
式部会の理念は、生徒達の敵であり目標になることである。敵になるからにはいろいろな危険を考慮しなければならない。
紫苑さん、ベニート卿は貴族だ。ベニート卿の妹であるガブリエッラも貴族。そして俺は花邑家の家。これらは権力という後ろ盾が有る。
しかし結花は違う。
実はゲームでも少し疑問だったのだ。
マジエク主人公、聖伊織はまだなんとか納得できる。ゲームでは式部会に入会するには条件があった。それは一定値以上の能力保持、もしくはツクヨミダンジョンの早期攻略。今回俺がやったような40層の攻略のようなもので圧倒的な実力差を示し、他者を黙らせられるから。
しかし結花はどうだ?
生徒会、風紀会ならば成績と実力のみで評価されるからまだ分かる。しかし式部会はそうではない。圧倒的な実力を持つ聖伊織の妹として入会するなら、伊織という後ろ盾ができるからまだ分かる。しかしそうじゃない場合もあった。まあ開発会社のフラグ管理ミスなのかもしれないが。
「お主、最近ななみと結花の三人で行動しとるじゃろ? ……結花が悪目立ちしておるのはしっておるかえ?」
「ゑ、本当ですか?」
「……知らんかったか。まあ今知ったなら大丈夫じゃろ。それでな、もうひとつ噂があってな、聖結花は花邑家の庇護下にある、と」
「まあ、それは俺が流しても良いと言ったんで」
結花のイベント早期解決もとい安全保障のためにだが。
「それでお主と仲が良いと噂が流れるじゃろ? さて、お主が一般人の立場ならどう思う?」
そりゃぁ、花邑家にごますりしているだとか、瀧音幸助のお気に入りだとか……なるほど。言いたいことは分かったが、苦笑するしか無い。
「そう言うことじゃ」
「理解しました、実力はあるし花邑家関連ということで、後ろ盾があると思わせられるんですね。いえ、俺は色々あって後ろ盾になろうと思っていたので、本当の事ではありますか」
「他の二会なら、幸に無理矢理声をかけられていた、だなんて噂を流すのもアリであろう。お主に矛先を向けられるからな。結局、結花はどの会にも適性がある」
なるほどな。
しかしだ。そうなれば、なぜ結花がそんな行動を取っているのだ? という疑問も浮かぶ。
結花はマジエクの学生の中で、ある意味一番人付き合いがうまいキャラである。たまにウザ絡みするが人を選んでするし、フォローもしっかりするし、おだてて木に登らせるのも得意だ。
そしてなにより周りの空気にも敏感だった。ヤバいなと思ったときにはさぁーっと逃げ出す、ずる賢さも持っている。
今回のようにキレる事もあるが。
噂になっていることは……多分結花なら知っていると思う。俺と違ってクラスメイト達や伊織達と密に連絡を取り合ってそうだし。まあ伊織は俺も密に連絡してるか。
さて、それでもなお結花が俺たちのそばに居るのは? 一緒に居れば本当に強くなれると思ってくれているのだろうか。
まあ結花になら直接聞けば良いか。
「それで幸はどう思う?」
「えっとなんの話でした?」
「結花の話じゃよ」
「えと、可愛いし強い?」
「……そんな話なぞしとらんぞ、式部会に声をかけるか、否かじゃ」
すみません。正直に申し上げるならば、話の内容を忘れておりました。
「その回答をする前に、まず確認させてください」
「なんじゃ?」
「ガブリエッラさんはどの会に入会するのですか?」
「……決まっておらん。宙ぶらりんじゃ」
「では式部会としては……いえ、ベニート卿はガブリエッラさんに入会してほしくないのですか?」
「ふむ、難しい質問じゃな。入会してほしいとも思ってると言うべきか。ちなみにガブリエッラは式部会に自己推薦したぞ。まあ幸を良く見てよく考えろとベニート卿は言って断ったらしい」
「なるほど。ガブリエッラさんが俺のところに来たのはやはりそれか」
なんか色々察してきたぞ。まあ妹思いである彼がギャビーの事について知らないわけが無い。もちろんギャビーが悩んでいることも。
もしかしたらベニート卿は俺をべた褒めしたのかもしれないな。プライドの高いギャビーはその言葉で俺に対抗心を燃やした。もしくは俺がズルをして評価されてると思い込ませるよう、言葉巧みに誘導したとか。まあそんなところだろう。
ああ、だからベニート卿は任せるなんて言ったのか。
俺の表情を見て紫苑さんは急に焦り始める。
「あ、しまったのう……失言じゃったか……」
「紫苑さんありがとうございます。この絵を描いていたのはベニート卿だったというわけですね。しっかり理解しました」
「こ、幸。そのじゃな、急に物事を失念したくなったりはしないかの?」
「無いですね。でも大丈夫です、怒ってないですよ」
はっきり言ってくれればしっかり対応するのに、言わないのがベニート卿だよな。ただ、悪いと思っていたのだろう。だから電話とかであんなに謝ったりしてたんだ。
「そ、そうじゃ。学園近くに妾お気に入りの甘味所があっての、そこを紹介しよう。もちろん好きな物を頼んでよいぞ」
「ははは、そんなことしなくても紫苑さんが口を滑らしたことは黙ってますよ。まあそう言ってくださるなら遠慮無く頂きますかね。本当はベニート卿におごって貰いたいとこですけど」
そういや紫苑さんって、たわいない会話ではあんまり考えないで話すのか、さらっと重要なことをこぼしたりするんだよなぁ。式部会で演技しているときはそんなことないんだけど。
「うぬぬ。し、失態じゃ」
うん。頭を抱え、悲しそうな表情をする紫苑さんも可愛いなぁ。普段の笑顔も素敵なんだがな。
「じゃあ失態ついでに全部暴露して貰いましょうかね」
「幸よ、お主はいつからそんなサディストになったのかえ?」
「ここまでしゃべったらもう同じですよ。さ、自白してください」
「かわゆい後輩が入ったかと思ったのじゃが、なんと中身は鬼であったか……」
「さて、そろそろ本題に戻りましょう。何で結花に式部会から声をかけようと?」
紫苑さんはああ、と頷く。
「お主にお勧めされたところですぐに声をかけるわけでは無いぞ。一応ガブリエッラの件が落ち着いたらじゃ。しかしじゃな」
「しかし?」
「結花へ声をかけようか、などとガブリエッラに話して動揺を誘いたいと卿は言っておった。どう転ぶかは分からないけれど、幸がいるならなんとかなるんじゃ無いかとも言っておったの」
ベニート卿は意外に厳しいところがあるな。それにしても。
「ここまで丸投げだったか……」
次の暴露をさせようかと思っていたときだった。ベニート卿の姿をみつけたのは。すごくヘラヘラ笑ってるけど、俺はもう全部知ってしまったぞ。もしそのことを話したらどんな表情をするだろうか。まあしないけれど。
残念だがタイムアップだ。
ベニート卿のいないところでもう少し聞きたいことがあったんだが……そういえば。
「そうだ紫苑さん。ななみには伝えてるんですけどね、ちょっとお願いというか先に言っておこうと思ってたことがあるんです」
「ほう、言うがよい」
「もし結花やガブリエッラさんや俺に何かあっても大丈夫です。過剰な心配はしないでください。多分起こるんで」
「……まて幸、それは一体どういうことじゃ」
「さ、ベニート卿が来ましたよ」
何が起こるかって? そりゃアホエロイベントですよ。
ついったーの方には少しだけ書きましたが、神奈月先生と編集さんに許可いただいたので、キャラデザを活動報告にUPしていきたいと思います。
日曜には全キャラ終わるかな?