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119 忍者スキル③

2019/08/30 更新2回目 今日はここまで!


 マジエクの『からくりの城』と言われ、俺らプレイヤーが真っ先に思い浮かべるのは隠し通路であろう。全ダンジョンの中で一番隠し通路が有るのはこのダンジョンで、そこにはいろんなアイテムやスキル、そしてボスがいたりする。

 

 ただ一番隠し通路がある割に、どの隠し通路へも行かずにダンジョンを攻略することも可能なダンジョンでもある。

 とはいえあまりにも隠し通路が多いから、初めてプレイする人でも最低一つは見つけられるだろうが。


 なかなか見ない面白い設定だと思うし、好きなダンジョンの一つなのだが、一つだけ不満もある。それは全くヒントなく隠し通路があったりすることだ。しかもそういった場所に限って貴重なアイテム、スキルを教えてくれる女神像があったりする。

 この隠し通路を探すのにどれだけ苦労したことか。

 

 だがその苦労のおかげで今楽が出来る。どこに隠し通路があるか完全に把握しているから。

 では、である。この隠し通路を攻略したら次はどこにすべきであろうか。とりあえず一旦入り口に戻ってそれから入り直すのは確実だから、入口から比較的近かった筈の俺の欲しい遠距離スキルを2番目に獲りに行くか。

 と計画を立てているとななみに声をかけられる。

 

「お暇そうですね」

「まあ、忙しくはないな……」

 まあゆっくり考え事が出来るぐらいだから忙しくはない。

 もっとも今はモンスターが出ないセーフティゾーンで休憩中だから、全員暇であろうが。


「では新婚生活ごっこでも致しましょう」

「……急にどうした?」

 確かに暇だが、どうして急に新婚生活ごっこが出てきたのかがこれっぽっちも分からない。

 

「お帰りなさいませご主人様。これからどうなさいますか? 天使にしますか? メイドにしますか? それとも……な・な・み?」

 どうしていちいち回転したりポーズを取ったり、メイド服をつまみ上げたりするんですかね。いや、究極的に可愛いんだけども。


「問答無用でやるんだな……てか選択肢が同じなんだけど。じゃあ、ご飯にしようかな」

「きゃぁぁぁ♪ ななみを食べちゃうんですね!?」

「……じゃあお風呂にしようかな?」

「きゃぁぁぁ♪ ななみとお風呂ですね! お背中流します!」

「どうやってもお前じゃねぇか!?」

 と俺がツッコミを入れると、ななみはにっこり笑う。うーん、どれかと言われればお風呂がいいです。


「えーと、いつもこんな事してるんですかぁ……?」

 と俺らがアホなことをしていたせいか、結花は少し困惑気味だ。

「もっとひどい時もあるわよ?」

 リュディはさらりとそう言う。否定したいところだけどその通りだから何も言えない。

「……花邑家ってすごいんですね」

「花邑家って言い方は……いやあの家は変な人が多いのは否定出来ないわね」

「独特な人が多いのは確かだ、しかしいい人ばかりだぞ」

 先輩が苦笑しながらそんなことを言うが、あまりフォローできてないと思う。

 

「はい、ご主人様。サンドイッチです。ななみへの愛を一生のものとするため、しっかりアレを入れておきました」

「まだ続いてたんだ。それで毒とか入ってないよね?」

 一生って何、一生って? 不安になるような単語入ってるんだけど、死んだりしないよね。

 

 渡されたサンドイッチを見てみる。なんだか先ほど食べたのよりすこし野菜の入れ方が違うような。まあいただいたモノだし食べようか。

 

 と俺が一口食べるのを見計らって、ななみは口を開く。

「あ、そういえばそちらのサンドイッチはリュディ様が作られたモノです」


 それを聞いて、ようやく理解した。

 ななみは狙ってサンドイッチを渡したのだろう。リュディ様も作ってくれたからしっかり感謝してください、と言っているんだろう。

 ただ意味不明な三択はやらなくてもよかった気がする。


「あ、その。ななみのに比べたら形が変だし、あのねっ、時間があったから。ちょっと試してみただけで」

「いや、すごく美味しいよ。ありがとう」

 見た目も普通だし味もとても良いし、自信を持って良いと思う。

「そ、そう」

 顔を背けられたけれど、すごく嬉しそうな顔をしていた。

 そういえば最近細々としたことを、リュディに限らず皆にして貰っている気がする。後で何か返してあげたい。

 

 それにしてもサンドイッチ美味しいな。美味しい? サンドイッチ? つい最近食べたような……いつだったか、えーとエナジードリンク臭? あれ、姉さん? うっ頭が……。

 

「瀧音さん、どうかしたんですか?」

「い、いや。何でも無い。もう少し休憩したらこの先にあるスキルを習得しようか」

 

 と俺が言うと結花はまたもやジト目でこちらを見る。

「へーこの先でスキルを得ることが出来るんですねぇ……」

 

 苦笑しながらふと思う。結花だからはっきりこう言うのであって、先輩やリュディは察しているけどあえて言ってないんだろうなと。

 ななみだけではなくリュディ達にも、いつか伝えなければならないな、とも。

 

---- 


 休憩を終えた俺たちはすぐに移動を再開する。

 

「それで、なんのスキルを得るんですかぁ?」

 結花の問いに詳しく話しても良いか迷ったが、話しても良いだろう。

遁走とんそうスキルだ」

「遁走ってなによ?」

 一応忍者系のスキルは秘匿されている設定だったため、リュディ達は知らないのだろう。ゲームでもあの二人のどちらかと友好関係が無ければ、入手方法を教えてもらえなかったはずだ。

 

 まあ仲間に居ればペラペラと話し始めるのだが。それでいいのか忍者……。

「簡単に言えば敵から逃げるためのスキルだな」

 

 RTAをする上で必ず欲しい超有能スキルである。RTAにおいて逃げることは非常に重要だ。

 

 RPGのRTAにおいて非常によくある行動の一つとして、低レベルでもギリギリ行くのが可能な町まで遠征することがある。簡単に言えば、敵から逃げながら低レベルで物語後半行くような町へ行く事だ。

 

 なぜそんなことをするか? それにはいくつか理由がある。物語序盤で強い武器を手に入れたり、その町で仲間に出来る仲間をパーティメンバーに加えたり、そしてしばらく得ることの出来ない魔法やスキル、有用アイテムを得たり、民家から自分の強化アイテムを得たり。

 

 そう、LVが低いまま、主人公や仲間を一気に強化するためだ。

 そしてその町でレベルに不釣り合いな装備を購入して戦闘力を大幅に強化した後、一撃で倒せる敵でレベル上げする。効率を考えたらこうするのが最善だろう。


 もちろんマジカル★エクスプローラーもそういった事が出来る。初心者ダンジョンなどは戦闘をすべて逃げて、ボスを火の陣刻魔石で倒し解放されたダンジョンを同じように逃げて突破。そして武器防具をそろえたら、効率の良い稼ぎ場で経験値稼ぎ。

 

 実際、俺も最初はそのつもりだったし、一部採用して既に試している。

 しかし、この世界はゲームではない。


 俺が魔素を集め基礎能力をある程度上げたとしても、クラリスさんや先輩のように戦闘のセンスがある者と戦うならば、負ける事もあるだろう。

 戦闘のセンスを鍛えるためには、模擬戦やらいろんなモンスターや強いモンスターと戦う事が必要だ。

 

 だからといって強い武器を持って殲滅する稼ぎが、全く無駄なわけではない。

 効率よく稼ぎながら、他者との戦闘もしつつ自らの能力を高めていく、それが一番よいであろう。

 

 では効率よく稼ぐ事を考えよう。基本的に良い魔素集めをするには、ダンジョンだ。そこでは雑魚に時間を取らず、さっさと逃げることも必要だ。

 

 とRTA的な一番の利点はこれだが、もう一つ効果がある。それは素早さが上がることだ。

 素早さをあげることは、ゲームでは行動順を早くすることにつながる。

 しかし現実の今はどうか?

 

 一つ一つの行動が早くなるならば、それは凄まじい自分強化ではないかと思う。

 それらを考えると超有能スキルであることは間違いない。

 

 

 俺たちはそのまま、現れるモンスターを倒しながら先へ進む。すると大広間のような場所に出た。そこにはいくつかの木の台と巻物が置いてあったが、正直見なくてもいい。

 

 遁走スキルを入手するためにしなければならないことは2つある。一つはヒント無しで隠し扉を見つけること。そしてもう一つが謎解きである。


 最後手前のフロアにはその謎解き用のヒントである巻物があって、それで謎を解くのだが……ゲームの知識がある俺にとっては答えを覚えているような物である。

 

 

----

 

 スキルを得て一度ダンジョンから出る。それから娑婆の空気を堪能する間もなく、タイミングを見計らったかのようにメッセージが届いた。一瞬監視されているのかなんて思ったが、すぐにその考えを否定する。

 単純にダンジョンに入っていたからメッセージが届かなかったのであろう。差出人はベニート卿だった。


「結花、来たかもしれん」

「えっ、何がですかぁ?」


 すぐさまメッセージを開くと、内容を確認する。うん、あの件だ。しかも案の定だ。それにしても、俺はやっぱり呪われているんじゃなかろうか。これだけは回避した方が良いなと思っていたのにこれが来てしまうなんて。

 

 俺が渋い顔をしていたからだろうか。リュディと結花が俺の隣からツクヨミトラベラーをのぞき込む。

「へえ、決闘ではなく競争? しかも場所はダンジョン、ですか」

 多分正式な決闘だと結花が悪目立ちするから避けたのだろう。でもその結果ここが選ばれるなんて……マジで困ったぞ。

 

 どうする? でも説明できるわけないしなぁ。ここはエロCGが回収できるダンジョンだよなんて。

 

 いや、まだ完全に決まったわけではないはずだ。

 それにあのダンジョンのエロCGイベントは、ギャビーがやらかさない限り発生しないから、そこだけ注意しておけば良いだろう。


 それに今なら場所を再考してもらえるかもしれないし、模擬戦みたいなのに変更してもらえるかもしれない。とりあえず通話してみよう。



 ご報告。

 皆様の応援のおかげで……マジカル★エクスプローラーの書籍化が決定しました!

 スニーカー文庫様より11/1発売です!(大人の都合で略称は『マジエク』になります)

 誠にありがとうございます!!

 

 イラストレーターは、ゴブリンスレイヤー等のイラストを手がけた、神奈月昇先生です!!

 また初回版のみ『リバーシブルカバー』仕様、それも『エロゲパッケージ』風イラストを神奈月先生が書き下ろしてくださることになりました!!やああったぁぁぁぁぁああ!!!


 駄目ですね、この文章を書きながらにやけてしまう。だって想像してみてくださいよ、文庫のカバーをひっくり返すと、ほらエロゲですよ! 神奈月先生の描くエロゲパッケージですよ!? ああ、なんたることでしょう!


 スミマセン、興奮してしまいました。少し落ち着きます。さて、内容(文章)の方ですが、あまり期待を持たせたくないので控えめに申し上げます。


 傑作です。


 Web版を読んでいても楽しめるよう、3万文字以上加筆しました。ページ数で言うと100ページぐらいが新たに出会う文章となるでしょう(終盤が多いですが、全体的に加筆してます)。

 さて、その加筆文章には……お守りを見た後のイカロス戦以上の戦闘(私が5年前から執筆している全作品の中で最高の戦闘だと自負しています)、

そしてショーツダンジョン並のクソアホエロ設定イベントをぶち込みました。


もう傑作としか言い様がありません。


 再度申し上げますが『エロゲパッケージ風リバーシブルカバー』は初回限定です!初回のみです!

 忘れずに予約して購入してください、Amazonでは予約が始まっているそうです!

 二刷からは普通のカバーになります。↓の方にある表紙イラストをクリックするとスニーカー文庫特設サイトへ飛べます。

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