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112 得たいスキル

2019/07/20 2回目 


 

 先輩達と別れたのち、俺たちはゆっくり話せそうな学園のカフェへ足を運ぶ。

 三会の人向けに特別に用意されたフロアへ行くと、面と向かって腰を下ろす。とりあえず好きな物を頼んでといったら、彼女はパフェを頼んでいた。


 注文を終えたのにまだメニューを見ている彼女を見ながら、小さく息をつく。どうするのがいいのか。

 

 マジカル★エクスプローラーには様々なスキルがある。問題はありすぎるのだ。


 主人公伊織はもちろんのことリュディ、瀧音といった登場キャラクター達はそれらを取得して自身を強化する。

 基本的にはキャラクターごとに得手不得手があり、リュディは接近戦闘スキルの相性が悪い。

 そういったスキルは取得出来なかったり効果が低かったりするのだが、可能性の種で取得出来るスキルを増やしたり、効果を上げることもできる。


 ただ変化が起こるスキルはそこまで多くはない。


 さて、このスキルのほとんどを習得出来るチートみたいなやつらが、このマジカル★エクスプローラーの中にいる。

 

 うち一人は主人公、聖伊織だ。

 

 彼は接近攻撃、魔法攻撃、防御、回復、補助、支援、探知、開錠、エロ。何でもござれのオールマイティーなスキルを持つことができ、しかもすべての能力を存分に発揮出来るチートキャラクターだ。ずるくないわけがない。この『様々なスキル群に適性がある』ことを能力っぽく言うなら『主人公補正』だろうか。

 

 正直喉から手が出るほど欲しい。


 ただこのチート伊織でも取得出来ないスキルはいくつもある。まあ戦闘で主要なスキルは網羅しているから、取得出来ないのがなんだ、ではあるが。


 さて、そんな彼よりも多くのスキルを覚えることの出来る、汎用性のあるキャラクターが実は居る。性別や種族限定といった特殊スキル以外すべてを習得可能なのは、全追加パッチ適用後にも彼女しかいない。

 

 それはMKS73(ななみ)である。

 

 『メイドナイトシキエディションセブンスリー』は『紳士淑女エロゲプレイヤーの考えた最高にかわいくて強いメイド』を作成することを目的としていたであろうから、汎用的な能力にするのは当然だったのだろう。

 おかげで戦闘でもマップ画面でもダンジョン攻略でも現実世界でも有用だった。

 

 しかし、彼女が実力で主人公を超えるのが難しい理由がある。それは主人公に用意されたチートアイテム、チートスキルである。やはり自身の分身たる主人公には相応の能力を持たせたかったのだろう。


 もちろんななみが弱いわけではない。彼女は最強候補の一角になり得るのではないかと思われていた。

 しかし彼女はアペンドディスク追加キャラだったことと、ななみ専用チート装備がなかったことで三強や主人公に一歩及ばないという評価を下された。だからこそ戦闘で限っていえば扱いが上から2番目の『メインヒロイン級』である。


 しかし戦闘以外での有用性と愛着を加味すれば、三強をも超すであろう。


 そんな彼女をどう成長させるか。それは自分をこれからどう成長させるかと同じくらい重要だと思っている。一番一緒にいることが多いであろう彼女が強くなれば、戦闘効率は確実に良くなるから。

 

 ななみは無表情でパフェを堪能していたが、俺の視線に気がつく。そして頬に手を当て「あらやだ」と言わんばかりにくねくねと体を動かした。

 

「そ、そんな、急にそんなこと言われるとななみ、困りますぅ♪」

「いや、まだ何も言ってないから。てかキャラ変わってるだろ」


 お前どこからその声出した? そもそも何も言ってないよな? うん。言ってない。

「しっかりテレパシーが飛んできました。『ななみんマジかわいい。見ているだけで体中の血液がふっとーしそうだよぉ』」

 冷静になったりぶっ飛んだり。ななみは俳優目指せるぜ。

「まあ、見ていたのは確かだが」


「な、なんたることでしょう。どうりで体が高揚すると思いました。あまり見ないでください、妊娠してしまいます。うっ急に吐き気が……お祝いしましょう」

「ツッコミどころが多すぎて追いつかねぇ……! 超展開で急展開すぎるだろっ」


「ではご主人様と私の名前を加味しまして、ミナミにしましょう」

「話続いてるんだ……そして俺はいつも加味されてないよね?」

「仕方ありません、ナミでいきましょう」


「あああああ、そいつは置いておこう。よし計画だ計画を立てるぞ!」

「国外が人気ですが、個人的には和国の温泉が良いかと思います。ただご主人様は奥様が多くいらっしゃるので……貸し切れる露天風呂があればなお良いかと」

「新婚旅行の計画じゃねえよ! しかも奥さんが大量に居ることになってる!」

 みんなで行きたいのは否定しない!

 

 コーヒーを一口のみ、小さく息をつく。

 

「そろそろ本題に行くぞ。ボケなしで頼むぞ。ななみ、お前はどうありたい?」

 はて、とななみは首をかしげる。

「抽象的すぎて返答に困ります」


「今後ダンジョン攻略するに当たって、自分をどう成長させていきたいか、だ。今現在は弓を使用しているが、今なら別の武器に変えても間に合うからな」

 ななみは少しだけ眉をひそめると

「ええと、急にどうされたのですか?」

 スプーンを置いてそう言った。


 いやまあ、学園ダンジョン40層行ってからふと考えることがあっただけだ。もしこうなりたいと明確な意見があったら、尊重した成長をさせてあげたいなと。種を使った今だからこそ、戦闘スタイルを変えるなら今が良い。むしろ今以外変える機会はなくなると思うというのが正しいか。


「まあ正直に言うとななみが万能過ぎてだな。どう成長していくべきか悩んでるってのもあるし、なによりななみの意見を尊重したいなと思ってて……」

 ただ『探知』系統や『罠』系統といったスキルだけはどうしても欲しいから、それはお願いするだろう。しかし、ほかをどうするかが問題だ。


「そんなことですか。ご主人様、回答はいたって明瞭です。私はご主人様が第一です。ご主人様が求めるななみこそ、私のありたい人物像です」

「実はそう言われるのを想像してはいたんだがな……うーん、だからこそ余計悩むんだよなぁ」

 もし意見があればそれにあわせて成長して貰えば良いから、むしろ楽であったりする。

 今使用している弓でもいくつかの戦闘スタイルがある。縦横無尽に駆け回るタイプ、一つの場所に腰をすえて高威力をぶっ放すタイプなどだ。


「手を伸ばしすぎるのもな……」

 2周目の引き継ぎを考えるならば現時点で色々取得しておくことはアリだと思う。しかしここは現実だ。そんな時間があるか分からないし、中途半端になる可能性があるならば、あまり手を伸ばさずなるべく特化した方がいい。


「ここまで育っておりますし、このまま弓と盗賊系のスキル取得、及び向上が良いのではありませんか?」

「やっぱそうなるよなぁ。ただ、回復系のスキルはどう思う?」

「もし今後ご主人様が回復スキルを所持している奥さ……いえ、お仲間を作られるのであれば不要かと存じます。ただ初歩的なスキルなどは取得しても良いかもしれません。私もご主人様も」

「何を言おうとしたかは突っ込まないが……実は今後よく行動するんじゃないかって予想している人物が居るんだが、その子は回復魔法が使える」


 実は候補が二人居るんだけど、どちらも回復スキルが充実してるんだよなぁ。

「その子、ですね……はぁ。ならば回復スキルは基本不要でしょう。では私から言わせていただいてもよろしいですか?」


「ああ」

「抽象的になってしまいますが、まずは殲滅力を上げるのがよろしいかと思います。これは武器が弓に限りません」

 思わず頷く。

「効率考えたら、やっぱそれだよな」


 魔素(経験値)を集めるにはモンスターを倒さなければならない。モンスターを効率よく倒すには何が必要か。力である。

「もしくは一石二鳥を狙うのがよいかと存じます」

「一石二鳥ねぇ」

「ええ、まずはご主人様の有用スキルでありながら私の有用スキルを取る。ご主人様のことです。ご自身についてある程度決めてらっしゃることでしょう」


「まあそうだな」

「遠距離、ですか?」

「まあ、遠距離といえば遠距離だな……中近距離といった方が近いかな?」

 やはり接近のみだけではつらいときがある。ただ、可能性の種を以ってしても瀧音は遠距離魔法の扱いは下手だった。それはゲームでそうだったし、身をもって実感した。以前よりかはマシにはなっていたが、それだけだ。未だ効率が悪いし命中率も悪い。


 じゃあ何をするかと考えたときに、弓のような遠距離武器が候補に挙がるだろう。

 しかし今後リュディという遠距離魔法攻撃が得意な彼女と行動を共にするというのに、急いで覚える必要があるかと思う。そしてななみが弓を使うならなおさらだ。

 

 そして、視点を変えて考えた。どうしても欲しい超有能スキルを取りながら遠距離も出来ないかと。そして一石二鳥の回答を自分の中で出した。欲しいスキルを取りながら、中距離武器も扱えるようになるやつがあるじゃないかと。

 

 その超有能スキルを取得しながら、ななみの有用スキルを得ることが出来るか?

 うん、出来る。しかも殲滅力を上げることにもつながる。むしろ一部スキルは先輩にも取得して貰いたいぐらいだ。よし、直近の方向性は決まったか。

「よし、じゃあアレだな」

「アレですか? アレとは」


 チート職業とかチートスキル群とまで言われているアレ。

「忍者系スキルを取るぞ」

 

----


思い立ったが吉日。早速行動を開始しようと、ななみがパフェを食べ終わると俺たちは外に出る。そして準備をするため家に帰ろうとしたときだった。

「まって、ねえ、まってよ。幸助君」

 聞き慣れた声に足を止める。


「よかった……目撃情報から少し時間が経っていたから、もういないかもと思ってたんだ」

「てへっ、こんにちわぁー♪」

 そこに居たのは真剣な表情でこちらを見る伊織、そしていつもと変わらぬ笑顔の結花。


 聖家兄妹だった。


本日(7/20)もしくは明日(7/21)にもう1回更新します。


忍者系のスキルを得ると言っても、

取捨選択するので変な成長をとげるかも。


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