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101 久々の出席

2019/5/17 1回目

活動報告へ書いていたとおり、サブタイトル変更しました!

なにかございましたらそちら(活動報告)へコメントを。

 事は想像以上にうまく運んだと思う。

 いや、彼女が無警戒過ぎたのか。朝食を終えてから、代り映えのない一日が始まってようやく俺は安堵のため息をつけた。

 

 その見解が一致したのは、俺とリュディだけではなかった。面白いことに、姉さんも、毬乃さんも、そしてななみもだった。先輩だけが少し渋っていたが、致し方ないだろうなと最終的には納得した。

 準備に関しては皆がノリノリだった。特に毬乃さんは半分遊んでいたに違いない。ただ毬乃さんが一番重要な役をこれ以上なく完璧にこなしてくれたから、大成功したのでもあるが。

 

「こう、あっさりと成功すると、逆に不安になるな……」

 と俺がつぶやくとリュディは小首を傾げた。

「私はこうなるかと思っておりました」


 うん。口調に違和感しか感じない。


 学園にしばらく行って無かったから、お嬢様モードのリュディを久々に見たのが原因かもしれない。

「でも、実際されたらどう思う? 苛立たないか?」

「時と場合による、のではないでしょうか。今回は最終的に感謝されると思います」

「私もリュディ様に同意です」


 斜め後ろをついてくる、ななみがそういった。

「私が仕入れた情報によりますと、急激に成長しているご主人様とリュディ様を見て焦っておられるようです」

「私にはそのようなこと一言も口にされませんでしたが……」

 リュディは少し眉を下げ、不満そうにそういった。


 いや、もし本当にそれで悩んでいるなら、リュディにそれを言うことはないだろうと思う。心の中に秘めているはずだ。にしても、どうしてななみはそれを知っているんだろうか?

 先輩の時も疑問に思ったんだが、ななみの情報源は謎だ。

「お前はどうやってその情報を仕入れたんだ……?」

 

「ええ、果実酒で当人をお誘いし、酔いつぶしてからは何もかもが一撃でした」

 なるほどな。果実酒に弱いと。『何もかも』、『一撃』が気になりすぎるが、なるべく意識から除外して忘れよう。

「愚痴を聞いてあげる程度なら良いが、あまりやりすぎないように」


 ななみは近頃すさまじく有能なんだけど、たまに変なことやらかすからな。ここはびしっと――

「ご安心ください。好みの男性とスリーサイズはしっかり聞いております」

 ――びしっとご褒美を出さなければならない。なんてすばらしいメイドなのだろう。世界のどこを探したって、ななみ以上に素晴らしいメイドはいなっ……。


「グッ……」

「瀧音さん、もうすぐ学園ですよ」

「はい……」

 リュディさん。もちろんジョークですから。その、腹に肘はダメだと思います。


----


「瀧音がいるなんて、明日大雪でも降るんじゃね?」

 オレンジは俺の顔をまじまじと見てそう言った。


「おいおい。それ、どういう意味だよ」

「だってよ、ここ最近授業でまったく見てないぜ?」

「確かに教室では見ないね……僕はたまにお昼を一緒にしてたから皆よりは会ってるんだけど……」


 まあ、確かにそのとおりである。テストが始まってからもその前からも、授業という授業を大体さぼった。学園に来るとしても昼の時間か、ダンジョンへ行くかぐらいだ。

 今日も午後から予定が無ければ、学園に来ないでダンジョンに潜っていたかもしれない。

「まあ、だからって幽霊を見るような目で見るのはどうかと思うぜ」

 と俺がわざと声を大きめにして斜め前を見ながら言う。ボブカットの彼女は振り向いてごめんごめんと両手を合わせて笑っていた。

 

 ほんと、感謝しかない。

 こんなくだらない日常を享受できているのは、間違いなくリュディや伊織のおかげだろう。この場所以外では注目の的だ。

 

 学園を歩けば道ができ、1年からは避けられ、2,3学年からは「あれがそうなんだろ」なんて言われ、LLLメンバーらしき人からは畏怖と嫉妬と羨望の混ざった視線を受ける。

 またそれ以外にも……。

 

 ちらりと、ななみを見つめる。ななみは無表情でリュディの横に立っているが、こちらの視線に気が付くとウインクする。彼女は気を利かせたのだろう。俺が男子たちと話している最中は、その場から離れてくれた。

 そして、いつの間にか仲良くなったのか、リュディだけでなくカトリナ、いいんちょ等マジエロヒロイン達と普通に会話している。

 

 そんな彼女、ななみのファンができたのはつい最近のことだと思う。


 道すがら、ななみを見てため息をつく男子生徒を見かける。

 確かにななみは美しい。その絹のような銀髪に、見る人によってはリュディをも超えるというであろう美貌。姉さんほどではないが胸も大きいのに、体は引き締まっており、さらにぷっくりとした形の良い尻という抜群のスタイル。

 そして何よりメイド服。そのメイド服によってそれらすべての魅力が底上げされている。

 

 そんな彼女に目を奪われてしまうのは仕方ない。そしてその彼女のご奉仕を享受する俺に羨望の視線を投げてしまうのもまた仕方ないだろう。

 

 いくつかある面倒な視線が教室まで続いたら、間違いなく辟易していたに違いない。ある程度は無視できるものの、この狭い空間の中で、それが続くことを考えると特にだ。リュディは慣れるわよ、なんて言っていたがその悟りを開くのはいつになるだろうか。

 

「あっ、瀧音君。そういえば、気になってたんだけど……」

 先ほどのボブカットの子が様子を窺うようにそう言う。

「どうした?」

「瀧音君って、その、花邑学園長と親戚って……本当?」

「あ、それ私も気になってました!」


 俺は少し驚きながらも、会話に交じってきた彼女を見つめる。

 伊織の義妹、聖結花ひじりゆいか

 やんわりカールした茶髪に、ぱっちりとした目。胸はそこそこで、しぐさが小動物的で非常にかわいい。

 ただ個人的に彼女で一番目を引くのは、その完成された作り笑顔であろう。

 世の中にあるなんらかの店員さんは、彼女を見本とした方がいいのではないかと思うぐらいだし、女優としてやっていけるであろうレベルだ。


「あれ、結花?」

「兄さんも気になってたんでしょ?」

 まあ、うん。と伊織は苦笑する。

「花邑家のことか。別に隠してたわけではないんだが、実は母が毬乃さんのいとこなんだ。旧姓は花邑だよ。姉さん、じゃなかった、はつみ先生ははとこになるぜ」

 

 マジで、とばかりに両目を見開き興奮した様子の結花に、なんだか微妙に引いているクラスメイト。

「姉さんって…………お前、マジでいいとこのお坊ちゃんだったんだな」

 オレンジがうらやましそうに俺を見る。

 目をきらめかせながら、すごいすごいと連呼する結花。


 彼らの話を聞くに、どうやら俺は蝶よ花よと育てられたように思われているらしい。しかしそれはリュディであって、瀧音は激動の人生を歩んでる。実感はないが。

 

 しかし、わざわざ言うべきでもないだろう。両親が死んだ話もしなければならないだろうし、毬乃さん宅でお世話になってることも話さなければならないし、場合によってはリュディと同棲している事もばれてしまうかもしれない。


「ねえ、瀧音君。何か奢ってよ?」

 ボブカットの彼女がそういうと、俺はもちろん首を横に振る。

「おいおい、どうせならダンジョンで稼げよ……おすすめ教えてやっから」

「えっほんと? それでもいい、すごくうれしい!」

 何か貰えることは期待していなかったのだろう、驚きながらそういった。

「なんなら、どう自分を成長させたいか教えてくれれば、訓練メニューも考えてもいいぜ。めっちゃきついけどな!」


「それ、私もしてほしいです!」

 追随して、結花もそう言う。

 かわいらしく、にまーっと笑いながら俺の腕を引っ張る。すごく当たってる、マジで当たってる、でももっと当てても良い。

「いいですよねぇ?」

「まあ、いいぜ」


 もちろん良いに決まってる。

 ただ同時に疑問もある。


 なんでまた彼女は俺にこんなにアプローチが激しいんだろうか?

 確かに結花は瀧音に対してほかのヒロインたちよりも扱いがマシであった。しかしこんなアプローチされるキャラだっただろうか?

 

 原因は何だろうか? ゲームの瀧音と、今の俺とで違うこと……。かなりいろいろある。

 特に大きいのは学年一位、花邑家あたりだろうか。だがこれらを加味すれば、この対応も十分納得がいく。


「僕達はもうたくさん教えてもらってるからなぁ……」

「だなぁ、前行ったダンジョン、あれ幸助が教えてくれたとこだろ?」

「おう、どうだった? 狩りやすかったと思うんだけど」

「すっごく良かったよ!」

 目をキラキラさせながら、嬉しそうに言う伊織。

「そ、そうか」

 適当にダンジョン紹介しただけなのにこうまで嬉しそうにされると、なんだか照れるな。次はもっと良いダンジョンを紹介してやらないといけないな。


「そういや今日の午後はどうするんだ? ちっとばかり相談に乗ってほしいぜ」

 そういうのはオレンジだった。何かで伸び悩んでいるのだろうか? 話を聞くのは構わないが。


「ああ、すまんが行かなきゃいけないところがあるんだ」

「マジ、どこだよ?」

 

月宮殿げっきゅうでんだ」

 

 さすがにオレンジもこの場所のことは知っていたか。

 一人を除いて皆が驚愕しているのを見るに、察しただろう。

 この状況を見て思ったが……今のうちに根回ししておいた方がいいな。


「え、月宮殿ってなんですか?」

 唯一理解していない結花は、わざとらしく首をかしげながら聞いてきた。

「結花。実はこの学園にはね、大きな力を持つ集団が三つあるんだ。生徒会、風紀会、式部会の三つなんだけど」

 そう答えたのは伊織だった。

「これら三会はね、学園生で特に実力を持った人しかなれない特別な会なんだ」

「へえ、そんなのあるんだ」

「うん、それでね……」

 伊織の、近くのクラスメイト全員の視線が俺に集まる。


「月宮殿ってのは、その三会メンバーの本拠地。一般生徒は基本入れないんだ」


オレンジ(まだ名前を考えてない)のイベントフラグ立ったな!

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