ダンジョン編 1 スカウト
勇者
「ダンジョンに潜るぞ」
闇魔道士
「ほう」
勇者
「魔法使い抜きでな」
闇魔道士
「いや無理だろ」
勇者
「諦めるの早っ!」
女騎士
「それはそうだろう勇者。このパーティーは魔法使いが居なければゴブリンが出ただけで全滅しかねないくらい弱いんだぞ」
勇者
「それはそうだけど……」
闇魔道士
「しかし何故急にダンジョンに潜りたいなどと抜かしたのだ?」
勇者
「……俺が目をつけたダンジョン『ワッサ』の最下層にはすべての願いをかなえてくれる竜が住んでいるらしいんだ」
調合師
「全ての願いを叶えてくれる……! という事は勇者をもう一人出現させることも……」
闇魔道士
「何をする気なんだ貴様」
勇者
「だが最下層に到達するためには屈強なモンスターを何体も倒さないといけない」
闇魔道士
「ではなおさら魔法使いの力が必要ではないか」
勇者
「それじゃダメなんだ!」
女騎士
「(はっ! これはくっころフラグ!)」
闇魔道士
「なぜ魔法使いが一緒ではダメなのだ?」
勇者
「だって俺たち弱いじゃん!」
調合師
「弱いわね……」
女騎士
「まあ、くっころ弱いな」
闇魔道士
「何を抜かすか。我は最強の闇魔道士ぞ」
勇者
「笑いのツボに入っただけで死にかけてた奴がよく言うぜ」
闇魔道士
「ング―! アッハッハッハッハッハグヘェ!!」
勇者
「今更ツボってんじゃねえよ」
闇魔道士
「問題ない、少し心臓が止まりかけただけだ」
勇者
「やっぱり死にかけてんじゃねえか!」
女騎士
「要するに勇者は『いつまでも魔法使いにおんぶにだっこはクッコロ嫌だ。だからダンジョンに魔法使い抜きで潜ってみんなで強くなろう』と言いたいのだな?」
勇者
「そうだ! 流石くっころ!」
調合師
「本当に願いが叶うんなら付いて行っても良い」
勇者
「本当か!」
調合師
「だけど、本当に魔法使い抜きで潜ったら全員モグラのエサになりかねないんじゃないかしら……」
勇者
「ああ。そこで強すぎず弱すぎず、丁度良さそうな助っ人を頼もうと思うんだ」
調合師
「助っ人……?」
***
――とある酒場にて!
狂戦士
「あぁん? 俺様に助っ人をしろだとぉ?!」
勇者
「(酒くさっ)ああ。最下層まで行けば願いが叶う。これはお前にとってもメリットのある話だと思うんだが」
狂戦士
「ヒヒヒ! 言っとくが俺様は高いぜ?」
勇者
「(やっぱ狂ってる奴は一筋縄じゃいかねえか)……幾ら必要なんだ?」
狂戦士
「条件その一。毎日俺にみそ汁を作ること」
勇者
「いやプロポーズか!」
狂戦士
「条件その二。毎日目が合ったら必ず『愛してる』という事」
勇者
「愛してねぇよ!」
狂戦士
「例え身体だけの関係だとしても言い続けることが大事だろ!」
勇者
「無えよ!!!」
狂戦士
「条件その三。女を寄こせ!」
勇者
「くっ、ここで初めて狂戦士らしい要求に出やがった……」
狂戦士
「これから狭い暗いダンジョンに潜るってのに、女の一人も抱けないとあっちゃぁ気が狂っちまうからなぁ!」
勇者
「既に狂ってんだろ」
狂戦士
「るせぇ! 用意できんのか!? 出来ねえのか!?」
――勇者はメスのカブトムシを差し出した!
勇者
「すまん、それしか持ってないんだ……」
狂戦士
「……」
勇者
「(やっぱりダメか……)」
狂戦士
「これ本当に貰って良いのか?」
勇者
「お前こそ本当にそれで良いのか!?」
――狂戦士が一時的に仲間になった!
続く
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