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女騎士がいなくなった 2

――女騎士はモンスターの巣の前にいた。



女騎士

やっとここまで来たか。長かったような気もするし、短かったような気もするな。



女騎士

あいつらは元気でいるだろうか。

勇者はしっかりパーティーをまとめられているだろうか。

魔法使いは執拗(しつよう)に勇者に迫ったりしていないだろうか。

闇魔道士はまた調合師に変な薬を飲まされたりしていないだろうか。

調合師は盗み食いして怒られていないだろうか。

ああ、またアイツ()と会って馬鹿なことで(さわ)ぎたいものだ。だが……。



女騎士

私にはやらねばならぬことがある。たとえ命を落とすことになったとしても、私はやり遂げねばならない。そのために、みんなを巻き込みたくはなかったのだ。



勇者

よお女騎士。



女騎士

ゆ、勇者!? どうしてここに?



闇魔道士

ふん、気高き闇魔法さえあれば貴様の位置などすぐ分かるのだ。



魔法使い

その気高き闇魔法とやらで女騎士の入浴シーンを見ていたのはどこの誰ですかね。



闇魔道士

あれは別に見ようとして見ていたわけじゃないぞ!



調合師

はあ、ここまで歩くの疲れたわ……。



女騎士

お、お前らどうして……! 危険な戦いになるから来るなと手紙に書いておいただろう!



勇者

そうだっけ? 忘れちまったよ。



女騎士

なっ!



勇者

お前は何か勘違いしてないか? 俺たちはワザワザお前と心中しに来たわけじゃねえ。お前を助けて連れ帰るために来たんだ。



女騎士

勇者……!




魔法使い

あ、ちなみに私が来たのは勇者さんの浮気を監視(かんし)するためですからね。女騎士を助けるのは「ついで」ですから。



女騎士

魔法使い……! だがお前達がどんなに強くたって……!




闇魔道士

貴様の戦おうとしている敵がどんなに強かろうが、どんなに大勢だろうが我には関係ない。闇魔法で全て無に帰してくれる。



女騎士

闇魔道士……!



調合師

私は面倒臭いと思ったのだけれど、でも女騎士がいなくなったらほんのちょっとだけ悲しいから手伝う事にしたわ。



女騎士

調合師……!



――その時、門が開き無数のモンスターが勇者達を取り囲んだ!

異形のモノどもは人よりはるかに背が高く、その体躯(たいく)は岩のように脈を打ち、決して剣を突き立てられぬほど分厚かった。そして肉食獣のように(するど)い眼はじっと勇者たちを(にら)んでいる。それらは紛れもなく「オーク」と呼ばれる大型のモンスターどもだった。



女騎士

囲まれた……。



勇者

さて、たまには勇者らしいところでもみせるか。



魔法使い

弱いのに強がっちゃって。まあ私がいれば5秒で終わるわけですけどね。



調合師

サポートだけは頑張る事にする……。



闇魔道士

モンスターども、命が惜しければ逃げるがいい。逃げねば貴様らの頭数がそのまま墓標の数となるだろう。



女騎士

お前ら、ありがとう、ありがとう……。これで私も勇気が()いて来た!



――正面からひときわ大きいオークが歩いて来た!



勇者

来るぞお前ら!



女騎士

お前か、我が領地を荒らし回ったオークというのは……! 絶対に許さない!



オーク

ほざけ下等な人間め! 貴様などワシの「振り飛車」で振り回してくれるわ!



勇者

ん?



女騎士

いつまでも同じ手が通用すると思うなよ……! 私が独自に改良を加えた「穴熊(あなぐま)」で絶対に守り抜く!



勇者

お前らさっきから何の話をしてるんだ?



女騎士

将棋(しょうぎ)だ!



勇者

将棋!?



女騎士

そこのオークは私の領地で開かれている数々の将棋大会で優勝をかっさらっていった最強の棋士(きし)だ。私は領地を守る者として、そして()棋士(・・)として絶対にリベンジすると決めたのだ!



勇者

……。



女騎士

ということで暖かく見守っておいてくれ!



勇者

はい撤収(てっしゅう)!!!



おわり


お読みいただきありがとうございました!



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