勇者と魔王のショートコント 21
勇者
あー、最近暑いなぁ。
魔王
夏だからな。
勇者
溶けそうだわ。
魔王
いっそ溶けて居なくなってくれないだろうか。
勇者
でも俺がいなくなったら寂しいだろ?
魔王
いいや。
勇者
もう俺と会えなくなるんだぞ?
魔王
構わない。
勇者
でも俺がいなくなったらイワシが値上がりするぞ。
魔王
プランクトンか。
勇者
それに俺がいなくなったら海水面が上昇して大変なことになるぞ。
魔王
オゾン層か。
勇者
この星の地面は干上がり、人間どもはジワジワと飢え死ぬであろう……。
魔王
魔王か貴様は。 私だったわ。
勇者
あー、暑すぎてボケちまいそうだ……。あれ、食べ物を食べる所って耳だっけ? 肛門だっけ?
魔王
どっちも違うわ。
勇者
じゃあ鼻?
魔王
それも違う。
勇者
でもお前鼻からスパゲティ食べてたじゃん。
魔王
いや何の言いがかりだ。
勇者
あー、暑すぎる。おい魔王、海行こうぜ。
魔王
断る。
勇者
なんでだよ!
魔王
貴様と海に行くくらいなら大人しく魔王城にこもっていた方がマシだからだ。
勇者
でも海は楽しいぞ? そうだ、俺釣りが得意だから魔王にも教えてやるよ。
魔王
行かん。
勇者
そんなこと言わずに脱げよ魔王。
魔王
下心を出すのが早すぎるわ!
勇者
そんな魔王のために水着を用意したんだ。
魔王
どうせヒモみたいなのだろう。
勇者
いやこの馬鹿には見えない水着をだな。
魔王
貴様、私を裸にする気か!
勇者
俺も今同じ生地のやつを服の下に着ててさ。
魔王
要するにノーパンなんだろう!
勇者
なんでそんなに海に行きたくないんだ?
魔王
いや海に行きたくないんじゃなくて貴様と一緒に行きたくないだけだ。
勇者
でもお前友達いないじゃん。
魔王
殺すぞ!
勇者
えっいるの?
魔王
い、いるとも!
勇者
本当に?
魔王
本当だ! ちょっと待っていろ!
――しばらくして魔王は大きなクマのぬいぐるみを抱えて戻ってきた!
勇者
あれ、友達は?
魔王
このクマが私の友達だ!
勇者
ん? え?
魔王
ムー君という名前だ。彼はよく私の話し相手になってくれる。
勇者
……。………………。
魔王
おい、なんだその目は。
勇者
……、あ、うん、ごめん俺が悪かった。
魔王
ちょ、ちょっと待て何に対して謝っているんだ!
勇者
おい魔王。
魔王
何だ!
勇者
俺、お前にセクハラしたりしないからさ、一緒に海行こ。
魔王
なんだその包み込むような眼差しは!
勇者
あ、俺いい場所知ってるんだ。人が滅多に来ない砂浜でさ。しかも水の透明度が高くて潜ったらすごく綺麗なんだぜ。
魔王
ちょっと待て何故ムー君をスルーするのだ!
勇者
じゃあ楽しみにしてるからな!
魔王
おいボケろ勇者!
――勇者と魔王は海へ行くことになった!
おわり
お読みいただきありがとうございました!




