勇者と魔王のショートコント 49 ありがとう
――魔王が自室にいると、不意に灯りが消えた。
魔王
「なんだ? 急に真っ暗になったぞ……?」
――その時、窓のそばにライトアップされた勇者の尻が!
勇者
「わっ!!!」
魔王
「……」
勇者
「……」
魔王
「……」
勇者の尻
「なんだよ、驚かないのかよ」
魔王
「尻で喋るな貴様」
勇者の尻
「せっかく『尻発声法』練習してきたのに」
魔王
「どこで教えてるんだそれは!」
勇者の尻
「それにしても魔王、お前ちょっと暗くないか?」
魔王
「尻に言われたくないわ」
勇者の尻
「おいおい魔王、そこは『どこから私の顔を見ているんだ!』ってツッコめよ」
魔王
「黙れ尻の分際で! というかいい加減尻で喋るのをやめろ!」
勇者の尻
「お前も尻で喋ればいいだろ」
魔王
「喋れんわ!」
――勇者はようやく姿を現した!
勇者
「よいしょっと。やっぱりお前暗い顔してんじゃん」
魔王
「うるさい放っておけ!」
勇者
「どうせ『今年の夏も一人で過ごすの寂しいなあ』とか思ってんだろ?」
魔王
「……そうだ」
勇者
「(あれ? いやに素直だな)俺がいるじゃないか!」
女幹部
「私もいますよ魔王様!」
――女幹部は魔王のベッドの下から飛び出してきた!
魔王
「う、うえええええん」
勇者
「え? な、なんで泣いてるの魔王? 俺また何かやっちゃっいました?」
魔王
「ふざけるな星の数よりやらかしてるだろうが!!!」
勇者
「そんで、なんで泣いてるんだ?」
魔王
「だって私は一人ぼっちみたいなものだろ! 魔王城を尋ねてくるのは貴様のような変態ばっかりだし! 部下はそこの女幹部みたいなクレイジーサイコストーカ―ばっかりだし!! もうやだ!!」
勇者
「(この人マジ泣きしてる)」
魔王
「分かったら出て行ってくれ!」
勇者
「……本当に嫌なら俺を殺してみろ。俺はこれからもここに来るぞ。だってお前のことが大好きだから」
魔王
「ぐすっ。勇者に言われると気持ち悪い……」
勇者
「俺さ、お前のために作って来たものがあるんだ」
魔王
「作って来たもの?」
勇者
「手袋だ」
魔王
「いま真夏だぞ!」
勇者
「思い切って俺の耳の形にしてみたんだ」
魔王
「そんなもの持ってたら不幸に見舞われるわ!」
勇者
「そう言うと思って金魚もすくってきたぞ」
魔王
「因果関係どうなってるんだ!」
勇者
「全部で一万匹」
魔王
「乱獲し過ぎだ貴様!」
勇者
「全部3m越えの大物だぞ?」
魔王
「それ金魚じゃないだろ!」
勇者
「今朝、畑で取れたんだ」
魔王
「なんでそれを金魚と言い張ろうと思ったんだ!!」
勇者
「おかしなことに全部ゴボウみたいな形してたんだよね」
魔王
「じゃあゴボウじゃないか! 最初から!!」
勇者
「魔王、お前に最初に会った時から、ずっと言おうと思ってたことがあるんだ」
魔王
「何だ、急にかしこまって。別に今更……」
勇者
「いいから聞いてくれ! 俺とお前の未来に関わる大切な事なんだ!」
魔王
「(勇者が今までになく真面目な顔をしている)」
勇者
「頼む!」
魔王
「……何だ!」
勇者
「トイレ貸してくれ!!!」
魔王
「今まで我慢してたの!!?」
おわり
今まで読んでくださってありがとうございました!
勇者と魔王のお話はここで一区切りつきますが、また別の作品で彼らが登場することがあるかもしれません。その時は温かく見守ってやってください。
勢いだけで書き始めたこの『勇者と魔王とショートコント!!!』ですが、皆さまの存在なしにはここまで続けてくることは出来なかったと思います。
時々やめようと思うこともありましたが、「面白かった」「笑った」といった反応に勇気をもらいながらだったからこそ、ここまで続けられました。
重ね重ね、お礼申し上げます。ありがとうございました。
と、言っておきながら200話以降も少しだけ更新を続けます。笑
更新の内容は、訳アリでお蔵入りになった作品の蔵出し、各キャラクターの裏設定?の公開などです。設定について、何か知りたいことがあればお教えください。浅く浅くしか決めていないので答えられないかもしれませんが、答えられる範囲で回答します。




