勇者と魔法使いと闇魔道士と女騎士のショートコント
調合師が仲間になる前のお話です。
魔法使い
あれ?勇者さんが背負っているその女は誰ですか?
勇者
さっき川辺で倒れてたから負ぶって来たんだよ。服装からして騎士だと思うんだが。
魔法使い
チッ
勇者
(舌打ちされた!?)
闇魔道士
我の特性スープを飲ませるのだ。すぐ元気になるだろう。
勇者
ありがとう! さあ飲め。
女騎士
うーん。
勇者
お、意識を取り戻しそうだぞ!
魔法使い
急いでとどめを刺さないと!
勇者
やめろ!
女騎士
く……!
勇者
く?
女騎士
くっころ!!
魔法使い
殺してほしいみたいですけど。
勇者
待て待て! おいお前。自分の名前は言えるか?
女騎士
くっころ!
勇者
いや絶対違うだろ。じゃあ出身地は?
女騎士
くっころ!!
勇者
えー。
闇魔道士
もしかするとコイツ、何らかの心的外傷により「くっころ」しか言えなくなったのではないか?
魔法使い
女騎士が遭遇する心的外傷っていったら、アレですかね。
闇魔道士
アレだろうな。
勇者
アレか。
女騎士
くっころ!!
勇者
お、首を横に振ってるぞ。
魔法使い
違うって言いたいみたいですね。
闇魔道士
こちらの言葉は分かるのだな。
女騎士
くっころ!
勇者
お、ジェスチャーし始めた。
魔法使い
ボディランゲージ検定5級の友達がいない私が通訳しましょう。
勇者
何なんだよお前は。
魔法使い
ふむふむ。『昨日の晩』
女騎士
くっころ。
魔法使い
『私はいつものように阿波踊りの練習をしていた』
勇者
意外な日課だな。
女騎士
くっころ。
魔法使い
『すると森の中からガサガサと音がする』
勇者
やだなあ。怖いなあ。
女騎士
くっころ!
魔法使い
『なんと森の中から巨大な「くっころ」が!』
勇者
待て待て! そこを訳してくれよ。
魔法使い
でも女騎士は本当にそう言ってるんですよ。
女騎士
くっころ。
闇魔道士
頷いているな。
勇者
「くっころ」って何なんだ!
女騎士
くっころ! くっころ!
魔法使い
話を続けますね。『その巨大な「くっころ」は私の前に立ちふさがった!』
女騎士
くっころ!
魔法使い
『私は激しく剣で抵抗したがまるで歯が立たなかった』
女騎士
くっころ!
魔法使い
『私はくっ! 殺せ! と叫んだ! しかし「くっころ」は容赦なく「くっころ」を吐いてきた』
勇者
吐いてきた!?
女騎士
くっころ!
魔法使い
『「くっころ」はその右手に持った「くっころ」で私の髪についた小さな「くっころ」をくっころした!』
勇者
何が起こってるのか一切分からねえ!
女騎士
くっころくっころくっころ!
魔法使い
『私は激しく「くっころ」した! しかし「くっころ」は横から出てきた「くっころ」でそれさえも「くっころ」!!! 私は諦めてくっころすことにしたころ!』
女騎士
しかし「くっころ」は追ってきた!
勇者
喋れるんじゃねえか!
女騎士
逃げるくっころ! 追うくっころ!
勇者
わけがわからん……。
女騎士
を横目で見ながら阿波踊りする私!
勇者
じゃあ追われてんの誰だよ!?
女騎士
くっころだと言っているだろう!
そしてくっころはくっころに追いついた!
勇者
頭がおかしくなりそうだ。
女騎士
そして気がついたら私はここに居たというわけだ。
勇者
「くっころ」はどうなったんだ!?
女騎士
そういうわけで仲間にしてくれ。
勇者
どういうわけだよ!!
闇魔道士
今日の晩飯はコロッケにするか……。
おわり
お読みいただきありがとうございました!
このとき女騎士は仲間になりませんでしたが、いずれ再登場します。