勇者と水の精霊と鑑定士のショートコント
――勇者は火龍退治の任務に成功していた!
勇者
「ふぅ、火龍を倒すのはさすがにキツかったな」
受付嬢
「あら、生きてたんですね。てっきり焼き鳥になってる頃かと」
勇者
「どう頑張っても鳥にはならねえよ」
水の精霊
「まあ全部妾のお陰じゃがな」
勇者
「あはは、全部は言い過ぎだろ」
受付嬢
「もうかなりレベルが上がったんじゃないんですか? 鑑定士さんのところでレベルを見てもらったら良いと思いますよ」
勇者
「鑑定士?」
***
鑑定士
「初めまして。僕が鑑定士です。貴方のレベルを鑑定しましょう」
勇者
「冒険に出た時はレベル5だったからなあ。あれからどれだけレベルが上がってるか楽しみだ」
鑑定士
「出ました! 勇者さんのレベルは3です!」
勇者
「……は?」
鑑定士
「あ、失礼しました。正確には3. 1415926535 8979323846 2643383279 5028841971……」
勇者
「なんで円周率なんだよ!」
鑑定士
「言い換えるとπ」
勇者
「言い換えんな! インチキだろ! レベルが下がるなんて、あるわけないじゃないか!」
鑑定士
「僕もそう思ったんですけど、勇者さん、すっごく強い精霊を連れてるじゃないですか」
勇者
「ん? 水の精霊のことか?」
鑑定士
「もしかして最近、戦闘を全て水の精霊さんに頼りっきりになっていませんでしたか?」
勇者
「うっ……。で、でも結果的にモンスターは倒したんだから経験値はもらえるだろ!」
鑑定士
「ええ、貰えます。戦っていた水の精霊さんだけが」
勇者
「え? つまり?」
鑑定士
「水の精霊さんだけめっちゃレベルが上がっています。余裕で100を越えてますよ」
勇者
「そ、そんなバカな! 騙されないぞ! 俺は一人で討伐に行ってくる!」
鑑定士
「止めといた方が……」
――1時間後
勇者
「ウサギ強すぎ……」
鑑定士
「ウサギに負けたの?!」
水の精霊
「今の勇者はアレじゃな。キング・オブ・ヒモじゃな」
勇者
「なんだと!」
――勇者は鑑定士を引っ叩いた!
鑑定士
「痛ぁ! 何で僕?! 何で僕が叩かれたの!?」
勇者
「まあ、最近水の精霊が強くなっていたような気はしてたよ」
鑑定士
「やはり気付いていましたか」
勇者
「オセロで全然勝てなくなったし」
鑑定士
「いや、オセロの話じゃなくて」
勇者
「賞味期限切れのケーキを食べた時も水の精霊だけ腹痛起こさなかったし!」
鑑定士
「屈強な善玉菌を持ってるとかいう話じゃなくて! 今の水の精霊さんを見て何か気付きませんか?」
――水の精霊の体格は完全にオークと化していた!
勇者
「気付かないわけないだろ」
鑑定士
「ですよね!」
勇者
「水の精霊、髪伸びたな」
水の精霊
「そうかも」
鑑定士
「何なの、この人たち!!!」
お読みいただきありがとうございました!