勇者と魔王のショートコント 44 宗派
勇者
「魔王、花見に行くぞ」
魔王
「誰が貴様などと行くものか」
勇者
「でも勇者教の信者も全員来るから賑やかだぞ」
魔王
「全員男だろそいつら!」
勇者
「大人しく尻出してるだけだから安心しろよ」
魔王
「それもう花見じゃなくて尻見になるだろ!」
勇者
「尻見たいの?」
魔王
「そんなわけないだろ目が汚れるわ!」
勇者
「まぁ花見に行かなくても春はいろんなイベントがあるよな」
魔王
「魔王の私には関係ない話だ」
勇者
「え? 魔王城で入社式とか無いの?」
魔王
「新卒採用などしておらん」
勇者
「じゃあ入学式は?」
魔王
「だから魔王城は学校でも会社でもないのだ!」
――その時、勇者教の信者たちがワラワラと集まって来た!
魔王
「うわっ! 何でこいつらフンドシ一丁なんだ……!」
勇者
「しっ! 静かにしろ魔王。こちらから手出しをしなければ悪さはしない」
魔王
「タランチュラか!」
信者
「教祖様、花見道具を持ってきましたよ」
魔王
「これから花見に行くのか?」
勇者
「いや、ここでやるんだ」
魔王
「……は?」
信者
「教祖様! 花見の準備が整いました!」
魔王
「だから花が無いじゃないか!」
勇者
「魔王、お前は花のように美しい」
魔王
「いや何も嬉しくないわ!」
――信者たちは突如として尻を叩き始めた!
魔王
「なんだこれ! なんだこれはパニック映画か!?」
勇者
「お前らもっと気合入れて叩かないと魔王が喜ばんぞ!」
――ペチペチと乾いた音が魔王城に轟く。
魔王
「轟くな!」
???
「居たぞ! 勇者教の連中だ!」
魔王
「今度は誰だ!」
勇者
「あいつらは腹教の連中だ!」
魔王
「ウグイスの鳴き声か!」
勇者
「あいつらは腹を叩いて御利益を得ようとするイカれた連中だ!」
魔王
「貴様が言うな!」
腹教教祖
「テメェ、ウチからごっそり信者を奪いやがって。今日という今日は容赦しねえ」
勇者
「ほう、じゃあどうするって言うんだ?」
腹教教祖
「どっちが良い音を奏でられるか勝負だ!」
勇者
「望むところだ!」
魔王
「なんて汚いオーケストラなんだ」
勇者
「そしてジャッジはこの魔王が担当する!」
魔王
「勝手に決めるな!」
――腹教信者たちは一斉に腹を叩き始めました。
――それに呼応するように、勇者たちも尻を叩き始めました。
魔王
「何このナレーション!?」
――ペチペチペチペチ
魔王
「うるあさい!」
???
「あっ! 勇者教の連中こんなところにいやがったぞ!」
魔王
「また誰か来た!?」
勇者
「あいつらは胸を叩くドラミング教の奴らだ!」
魔王
「ゴリラか!」
ドラミング教教祖
「勝負だお前ら!」
勇者
「良いだろう!」
魔王
「……もう嫌だあああああ!」
――魔王城は爆発しました。
おわり
お読みいただきありがとうございました!