勇者と魔王のショートコント 42 卵
――魔王城の軒下にツバメが巣を作っていた。
魔王
「春だなあ。もう少ししたらヒナが生まれるんだろう」
――その隣に勇者が巣を作っていた。
魔王
「春だなあ。って何をしているんだ貴様!?」
勇者
「巣作りだ」
魔王
「分かっとるわ! どうして魔王城に巣を作っているのかと聞いているんだ!」
勇者
「実は昨日、卵が口から出て来たんだよ」
魔王
「ピッコ●大魔王か」
勇者
「くっころ大魔王?」
魔王
「言ってないわ!」
勇者
「俺は人間だぞ」
魔王
「嘘つけえ!」
勇者
「そしてこの卵はお前との子どもだと思うんだよ」
魔王
「そんなわけあるか! 気持ち悪いことを抜かすな!」
勇者
「へー、どうして自分の子じゃないって言いきれるのかな」
魔王
「誰の子かどうか以前に、そもそも卵を吐き出すこと自体が人間のすることじゃないだろ!」
勇者
「そんなことないぞ。俺の友達も卵から生まれてるし」
魔王
「爬虫類か!」
勇者
「いやどっちかっていうと鳥類だろ」
魔王
「どっちでもいいわ! いいから魔王城の外でやれ!」
勇者
「そう固い事言うなよ。俺はこれから巣の材料を集めてくるから、魔王が卵を温めておいてくれよ」
魔王
「嫌に決まってるだろ!」
勇者
「レンジで」
魔王
「爆発するだろうが!」
――勇者は飛び立っていった!
魔王
「あいつ怖い」
???
「ぐへへへへ。その卵を渡してもらうか」
――そこには手足の生えた魚たちが立っていた!
魔王
「ナニコレキモイ」
魚
「おい姉ちゃん、早く卵を渡さないとひどい目にあわせるぜ?」
魔王
「ほう、私をどうすると言うのだ?」
魚
「シャリの上に寝そべらせてやるのさ!」
魔王
「寿司か」
魚
「イクラの隣に!」
魔王
「軍艦巻きか! というか卵なら勝手に持って行っても良いぞ」
魚
「ぐへへ。じゃあついでに姉ちゃんも」
魔王
「――破壊」
魚
「ぎょああああああ!」
――魚たちは消滅した!
魔王
「ふん、魚風情が」
――勇者が走って戻って来た!
魔王
「飛べよ」
勇者
「無茶を言うな」
魔王
「さっき飛んでただろう!」
勇者
「そんな事より魔王、卵を守ってくれたんだな!」
魔王
「私はただ自分の身を守っただけなんだが」
勇者
「これでお前は立派なお母さんだ!」
魔王
「やめろ!」
勇者
「ん? おい見ろ。卵にヒビが入ってるぞ!」
魔王
「まさか本当に生まれるのか?」
――卵が割れ、中から「ハズレ」と書かれた紙が出て来た!
勇者
「……」
魔王
「……」
勇者
「さてもう一個買ってくるか」
魔王
「それ食玩だったのか!?」
※電子レンジで卵を温めると爆発する危険がありますのでおやめください。
おわり
お読みいただきありがとうございました!