勇者と魔王のショートコント 41 犬
――魔王は子犬を撫でていた。
魔王
「ふわぁ、かぁいい……」
勇者
「魔王、何してるんだ?」
魔王
「うわっ! べ、別に犬を撫でていただけだ!」
勇者
「わあ可愛いカモノハシだね」
魔王
「犬だと言っているだろう」
勇者
「いつ産んだの?」
魔王
「産んでないわ! 私を何だと思っているんだ貴様!」
勇者
「尻を叩くのが上手い人」
魔王
「私はそんな認識のされかたをしていたのか!?」
勇者
「で、どこで拾って来たんだ?」
魔王
「実はこの犬が庭に迷い込んでいたのを部下が見つけて来たんだ」
勇者
「へー。良かったな、友達が出来て」
魔王
「殺すぞ貴様!」
勇者
「よし、じゃあ早速この犬に言葉を覚えさせようぜ『こんにちは、こんにちは』」
魔王
「いやいやオウムじゃないんだから……」
子犬
「コンニ……チハ……」
魔王
「喋った!? しかも声が野太い!」
勇者
「『魔王は淫乱、魔王は淫乱』」
魔王
「おい、なんて言葉を覚えさせようとしてるんだ!」
子犬
「ま、魔王ハ……淫乱痴女ビッチ……」
魔王
「なんで応用効かせてるんだこの犬!?」
勇者
「魔王は何か覚えさせたい言葉とかないのか?」
魔王
「いや、これ以上喋ったら気持ち悪いだろう……」
勇者
「淫乱痴女ビッチとか喋ってる時点で手遅れだけどな」
魔王
「でも芸なら覚えさせたいぞ。『お手』とか」
勇者
「ははは。いやいや子犬にお手は難しいだろー」
魔王
「さっき喋ってただろこの犬!!」
子犬
「我が右手は穢れておる……」
魔王
「だんだん流暢になって来たんだが……」
勇者
「いや犬の右手は手じゃなくて右前足だぞ」
魔王
「こんな時だけ冷静にツッコむな!」
勇者
「まあでもチンチンくらいなんら覚えさせられるかもな」
魔王
「難易度の序列がよく分からない」
勇者
「チンチン!」
――しかし子犬は反応しない!
――勇者は仕方なくチンチンを出した!
魔王
「何が『仕方なく』だ!」
勇者
「ほぅらチンチンだよ」
――子犬は後ろ足でおもむろに立ち上がった!
勇者
「ほら立った。チンチン」
魔王
「アレが立ったみたいに言うな!」
勇者
「魔王もチンチンやってみろよ」
魔王
「その言い方だと私がチンチンするみたいだろ!」
勇者
「まあ俺の言うこと聞いたんだから魔王の言うことも聞くよ」
魔王
「……ち、チンチン」
――子犬は動かない!
魔王
「チンチン!」
――子犬はあくびをしている!
勇者
「ジムバッジが足りないんじゃないのか?」
魔王
「何の話だ! くそっ、なぜ勇者の言うことは聞くのに私の言うことは聞かないんだ!」
勇者
「魔王がもっと大きい声を出さないからだろ」
魔王
「チンチン! チンチン!」
――子犬はあくびをしている!
魔王
「チンチン!! チンチーン!!」
――しかし子犬は言うことを聞かない!
魔王
「くっ!、チィンチィン! チンチィイイイイイン!!!」
――子犬はおもむろに立ち上がった!
魔王
「やったぞ勇者! 立ったぞ! 私のチンチンで立ったぞ!」
女幹部
「ま、魔王様……?」
魔王
「あっ女幹部!? 違うんだ! これは犬に芸を覚えさせようとしていただけで……」
女幹部
「お待ちください、新鮮なチンチンを持って来ます!」
魔王
「やめてぇ!!」
勇者
「新鮮なチンチンならここに」
魔王
「黙れ!!!」
おわり
お読みいただきありがとうございました!
魔王さんごめんなさい。