勇者と水の精霊と女神のショートコント
――勇者は水の精霊と近くの湖に来ていた!
水の精霊
「ふぅ。やはり水場は落ち着くのう……」
勇者
「しかし綺麗な湖だな。帰ったらみんなにも教えてやろう」
水の精霊
「おい勇者」
勇者
「ん、どうしたんだ?」
――水の精霊の足元には裸のオッサンがピッチピチはねている!
水の精霊
「でっかい魚が釣れたぞ!」
勇者
「そうか沈めてこい」
???
「あなたが落としたのは――」
――湖の中から一人の女性が現れた!
勇者
「だ、誰だ!」
???
「私はこの湖の女神です」
水の精霊
「むっ、アイツは!」
勇者
「お前の知り合いか?」
水の精霊
「いや全く知らん」
勇者
「何この古典的なやり取り」
女神
「そこの男、私の話をちゃんと聞きなさい」
勇者
「あ、すんません。(あれ、なんで俺が怒られてるんだ?)」
女神
「あなたが落としたのはこの肺ですか? それとも心臓ですか?」
勇者
「人体模型か俺は」
女神
「では、あなたが落としたのはこの鉄くずですか? それとも腐った木のタンスですか?」
勇者
「どっちでもないわ! なにゴミ持って帰らせようとしてんだよ!」
女神
「……は? ではなぜ私を呼び出したのですか、このゴミクズ」
勇者
「口悪っ! お前が勝手に出て来たんだろうが!」
女神
「まさかこの湖に釣りに来たのですか?」
勇者
「違うけど、この湖って釣り禁止なの?」
女神
「いいえ、禁止ではありませんが、針が……」
勇者
「釣り針?」
女神
「釣り針が頬っぺたに引っかかって痛いのです」
勇者
「エサに喰いついてんじゃねーよ!」
女神
「だって美味しそうなミミズだったから!」
勇者
「魚か!」
女神
「もしあなたがミミズを持ってきてくれたら命だけは助けてあげますよ?」
勇者
「話変わってんじゃねーか!」
女神
「ふふふ、では水底に沈んでもらいましょうか……」
勇者
「うわっ、やめろ! 手を掴むな!」
水の精霊
「勇者を離せ!」
勇者
「水の精霊!」
女神
「おや、何か文句でも?」
水の精霊
「その男を沈めるのは妾の役目じゃ!」
勇者
「いやお前も何言ってんだ!!」
女神
「良いでしょう! ではどちらが早く溺死させられるか勝負です!」
水の精霊
「望むところじゃ!」
勇者
「望むなぁあ!」
女神
「フフフっ」
――勇者から手を離し、陸に上がる女神
勇者
「え?」
女神
「冗談よ、あなたが可愛いからちょっとからかっただけ。私、本当は人間なの」
勇者
「え? そ、そうだったの?」
女神
「でも今度はちゃんとミミズを持ってきてね」
勇者
「ミミズは食べるのかよ。……というかさっきからめっちゃ沖に流されてるような」
水の精霊
「さあ勇者! 早く妾と水底へ行こうぞ!」
勇者
「助けて―!」
おわり
お読みいただきありがとうございました!